私には十五の時に未来を誓った相手がいたのですが……
私には十五の時に未来を誓った相手がいた。
二人並んで、同じ未来を見ている。
そう迷いなく信じていた。
私も、彼も、共に行く未来を明るいものとして希望あるものとして捉えているのだと。
――でも、それは勘違いだった。
「ミッシェラ、お前との婚約は破棄とする」
「え……」
「俺はもっと魅力的な女性と結婚する」
「ええっ! ……また、急に、どうして。そんなのあまりにも急過ぎるわ」
婚約者である彼ローバトは私と生きることを選びはしなかった。
「もうどうでもよくなったんだ。簡単に言うと、ミッシェラにはもう飽きた。楽しくないんだよ一緒に過ごしていても」
ローバトは容赦なく切り落とす。
「じゃな。ばいばい」
私を。
彼の人生から。
◆
数年後、私はある国の第一王子のもとへと嫁いだ。
「ミッシェラ、今日も可愛いね」
「マルグレットさま……ありがとうございます。お褒めの言葉をいただけ嬉しいです」
第一王子マルグレットはローバトのように私を傷つけはしない。何なら真逆。朝も昼も夜も、私を愛し、可愛がってくれる。思いやりのあるとても優しい人だ。
「ローバトくんだっけ? 彼には感謝しないとね」
「えっ」
「こんな魅力的な女性を手放してくれたんだから、ね。彼が手放してくれなかったら、きっと、ぼくがミッシェラと生きられる道はなかった」
「それは……そうかもしれません」
「だから、さ。ある意味彼は恩人だよ。彼がミッシェラを捨てるような見る目のない人だったことには感謝しかない。ふふ」
マルグレットと共に在る時、私は自分に価値がないわけではないのだと確認できる――だから彼と過ごす時間はとても好きだ。
「ま、何にせよ、運命に感謝かな」
ちなみにローバトはというと、私との婚約を破棄して数ヶ月後に超絶美人な女性に惚れてアプローチを開始し何とか射止めるも実はそれは罠でありまんまと罠にはまってしまって多額の借金を背負わされることとなってしまったそうだ。
そして今は、悪質な金貸し屋の指示により、劣悪な環境にて強制労働させられているらしい。
「そうだ! ミッシェラ、今日は何のハーブティーがいい? 希望聞くよ」
「え……希望って、私の、ですか?」
「そうそう」
「そんな。私の希望なんて。マルグレットさまが決めてください」
辛いことや悲しいこともあったけれど、今は彼に出会えた運命に感謝している。
「今日はミッシェラが決める日だよ」
「あ……そうでした」
「考えてもいいよ。まだまだ時間はあるし。ゆっくり考えて構わないから」
「あ、はい、ありがとうございます」
◆終わり◆




