いつも「可愛いなぁ」と言ってくれる婚約者がいたのですが、彼はある日突然……
「ネイナは可愛いなぁ」
「ありがと」
婚約者ウェドオースはいつも私のことを褒めてくれていた。
「自慢の婚約者だよ、ネイナは」
「そう言ってもらえたら……嬉しいわ、ちょっと照れるけれど」
そんな彼と共にあれる喜びを感じながら生きていた私は、彼となら間違いなく幸せであれると信じていた。
……なのに。
「ウェドオースさまはあたしのものよ!」
いきなり謎の女が現れて。
「だから! 今日、ウェドオースさまを殺してきたわ!」
「え」
「彼、こんな素敵なあたしが声かけてあげてるのに無視するのよ。サイテーよね。だから永遠にあたしのものにするために殺めたの」
その女にウェドオースの命を奪われてしまった。
「殺すなんて、そんな……酷いわ!」
「知らないわよ」
「人殺しッ!!」
「何よ、慌てちゃって。あたしは悪くないわ。悪いのはあんたみたいな雑魚女に夢中になってるウェドオースさまのほうよ。ウェドオースさまがあたしを愛してくれたならあたしだってこんなことせずに済んだのに」
身勝手過ぎる主張に我慢できなくなった私は、傍に落ちていたやや大きめの石を拾い、女の額に向けて投げつけた。
「ぎゃ!!」
石は女の眉間に直撃、そこを勢いよくかち割った。
◆
あれから五十年が経ったけれど、私は今も亡き婚約者であるウェドオースを愛している。
だから他の男性とは関わらずに生きてきた。
珍しい形の人生ではあるけれど、すべて私の選択だから、後悔は一切ない。
私は今でもウェドオースだけを愛している。
◆終わり◆




