婚約者でもある理不尽な男にこき使われて辛い日々だったのですが……?
婚約者アダムスは理不尽な男だ。
「タローシア! お前! どうしてそんなとろいんだ!」
「すみませんっ」
婚約を機に彼の家へ移り住むことを求められた。私はそれを受け入れた、のだが、それが地獄の始まりで。同じ家に住むようになってからというもの、私は奴隷のようにこき使われてしまうようになってしまった。
「早くお茶を淹れろと言っているだろう!」
「命じられていたトイレ掃除をしていました」
「遅い! とろい! いい加減にしろよタローシア!」
雑用を押し付けられる。
次々に指示される。
そして、少しでも遅れると、心ない言葉を投げつけられる。
……もう嫌だ、こんな生活。
「ごめんなさいっ」
「コラ!」
怒りに支配されたアダムスは空になったマグカップを投げつけてきた。
「おせぇんだよ! いちいち! 早くやれよタローシア!」
……この地獄から抜け出す方法はないのだろうか。
「あー、なんてこった、こんなのろのろ女が婚約者だとか……はーぁ、疲れるわ」
その日の晩、外でシーツを洗うことを強要されていた。
ふと空を見上げて。
視界に夜空を駆ける星が見えた。
(この地獄から逃れたい)
私は流れ星に祈る。
◆
翌朝、アダムスは、自室にて死んでいた。
大量の酒を飲んでいたようだ。で、酷く酔っ払い、嘔吐してしまったよう。その際に吐き出した物が喉に詰まり、そのまま落命したそうである。
こうして私は解放されることとなった。
あの祈りは神様に届いたみたいだ。
私はもう自由。
これからは自由な心で歩んでゆこう、私自身の幸福のために。
◆終わり◆




