婚約者を実妹に奪われましたが……結果的にはラッキーでした。なぜって……後に色々ややこしいこととなったようだからです。
「悪いわねぇ、お姉さま。彼、ローベッド様は、わたくしを選ぶんですって」
「すまないな。悪いがもう君とは生きない。僕は彼女、ネネさんを選ぶ。よって、君との婚約は破棄とする」
ある日のこと、実妹ネネと我が婚約者ローベッドが二人揃って私の前に現れた。
「え……」
いきなりのことにそんなことしかこぼせなくて。
「驚いてるみたいねぇ、お姉さま。うっふっふふっ」
「悪いな。ははは」
そんな私を見て、二人は馬鹿にしたように笑っていた。
……私は馬鹿にされている、のか。
悲しいし、切ないし、虚しい。でもそれでも私は生きてゆくしかないのだ。だから息をするし、だからこそ生の道を進む。それしか道はない。
◆
あの後ローベッドとネネは結婚した。
しかし結婚後間もなくローベッドは山賊に襲われるという悲劇に見舞われ、命こそ取り留めはしたものの幼児退行してしまった。
かつてのローベッドはもういない。
ローベッドは今、幼い子のようにおもちゃで遊ぶことくらいしかできないのだ。
そんなローベッドの介護を強いられることとなったネネは不満を抱え、やがて心を病み、しまいに窓から飛び降りてこの世を去った。
二人に幸せな未来はなかった。
◆
あれから十年。
私は良き夫と共に温かな家庭を築くことができている。
彼との、そして子どもとの、忙しくも幸せな日々。それはとても愛しいもの。私にとっては何よりもの宝物だ。
◆終わり◆




