金髪女性に惚れた婚約者が婚約破棄を告げてきました。~後々幸せを掴むのはどちらでしょうね~
さらり、金の髪が揺れて――その時、関係の終焉の時はやって来る。
「俺、彼女を愛してるから」
「えっ……」
婚約者ルメールは隣の金髪女性の身体にそっと片腕を回した。
愛している。
そんな言葉が振る舞いから滲み出ている。
でも、まだ、脳は追いついてくれない。
私の脳はまだ衝撃で壊れている。動きが停止しているも同然。どうすればいいのか、どんな言葉を返すべきなのか、相応しいものなんて何も思いつかない。
――私は今、馬鹿だ。
「彼女、リシリメリアってんだけどさ、髪綺麗だし美人だろ?」
「ま……まぁ、そうね、確かにそう……だ、けれど」
「だから俺、彼女と生きることにしたんだ」
「と、いうことは……?」
するとルメールは。
「お前との婚約は破棄イッ!!」
そんな風に急に叫んだ。
「お前みたいなぱっとしない良いところもほぼないような女はもう要らねぇんだよ! てことで! 婚約は破棄な! バイビィ~ッイッ!!」
さらにそんなこちらを馬鹿にしたような挑発するような言葉を並べて。
「さ、行くぞ。リシリメリア。ついてこいよ」
「……はいっ」
それから二人は並んで去っていったのだった。
えええー!?
いやいや何この展開~っ!?
だが、一つ確かなことは、私とルメールの関係が終わったということ。
つまり、私たちにはもう共に生きる明日はないのだ。
……でも、ま、それでもいっか。
◆
ルメールに捨てられてすぐ、私は、歴史ある領主の家の子息である青年ルマンティクスから想いを告げられた。
実は彼とは出身学校が同じなのだ。
といってもクラスは違っていたし在学中関わることもほぼなかったのだけれど。
ただ、ルマンティクスは学生時代に私を気になって見ていたそうで、その時から私のことを想ってくれていたそうなのだ。
もっとも、私にはルメールがいたから近寄ることは遠慮していたようだが。
「ごめん……迷惑じゃない、かな?」
「もちろんですよ」
「本当に……!」
「はい」
こうして私にはまた新たな縁が舞い込んできたのだった。
◆
あれから数年、私は、ルマンティクスと結婚して穏やかに暮らしている。
彼はいつも優しい。
どんな時も私の心に寄り添っていてくれる。
だからこそ、私も、常に彼と共にありたいと思えるのだ。
ちなみにルメールとリシリメリアはもう死んだ。
噂によればリシリメリアの父親が借金王だったらしく、ある時借金取りとの揉め事が発生し、それに巻き込まれて二人は共に殺されてしまったのだそうだ。
◆終わり◆




