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さくっと読める? 異世界恋愛系短編集 4 (2024.1~12)  作者: 四季


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婚約破棄でも構いませんが……その女性、あまり性格が良くなさそうですよ? そちらを選んで幸せになれると思っているのですか?

 婚約者であったオールスレンから婚約破棄を宣言された。


 ……彼は私ではない女性を愛していた。


 モニカ、それが彼が愛している女性の名。


 オールスレンは今朝、こじんまりとしていながらの気の強そうな目つきをしているモニカを連れて私の前に現れた。


 そして関係の終わりを告げたのだ。


 ――婚約は破棄とする、と。


 モニカは勝ち誇ったような笑みを唇に浮かべていた。それは明らかに私に向けられたもの。オールスレンはその笑みには気づいていないようだったが。恐らくそれこそがモニカの本性なのだろう。黒い笑み、勝利を楽しんでいる笑み、それがモニカの本当のところの性質を物語っているように感じられた。もっとも、オールスレンはそんなことにはまだまだ未来に至るまで気づかないのだろうが。


「はぁー。これからどうしよ……」


 だがその日の夜、私は幼馴染みと再会した。


「ナナちゃんだよね!?」

「ええ。って、どうして私の名を……も、もしかしてエッジ!?」


 エッジ、それはとても懐かしい名前だ。


 彼とは昔とても仲が良かった。

 家が近かったということもあっていつも夕方まで遊んでいたものだ。


「会いたかったよ!」

「え……」

「ナナちゃんに会いたいーって、毎晩星に願ってたから」

「え、そうだったの」


 思っていたより強い想いを抱えていたようだ、彼は。


「そうだそうだ! 聞いて? 僕、王族になったんだよ!」


 さらに告げられる、衝撃の事実。


「えーッ!!」


 思わず大きな声をこぼしてしまった。


「ナナちゃんを迎えに行った時、これなら恥ずかしくないかなーって」

「で、でも、どうして」

「養子にしてもらったんだ!」

「……養子?」

「優秀だったからさ! 引き取ってもらえたんだ! えへへ、やるでしょ」


 これがエッジとの再会であった。


 でも……。

 もう昔とは違うのかな、なんて思ってしまって、どこか寂しさも感じる。


 彼が王族になったのなら、平民である私とはもう一緒には遊べないの?


 驚きの真実を告げられたからか脳がまだかなり混乱している。

 負の方向にばかり思考を巡らせてしまって。

 無駄なことと分かってはいても、それでも、どうしてもあれこれ考えてはもやもやしてしまう。


 あの頃みたいにまた一緒に遊べたら良いのだけれど……。



 ◆



 色々心配していたけれど、あれからもエッジは定期的に私に会いに来てくれた。いろんなことを喋ったり、少しお出掛けしたり、と二人の時間を楽しむことは問題なくできた。


 王族になったのなら、という私が抱えていた不安は、すべて単なる杞憂でしかなかった。


 そんな風にして絆を深め、最終的にはプロポーズされて結婚した。


 私は王族となっているエッジの妻となった。

 こんな展開は想像していなかったけれど流れに乗っていたらここへたどり着いたのである。


 だから私はそれを運命なのだと受け入れることにした。


 エッジは昔と変わらず良い人だ。だから大丈夫。たとえ困難にぶち当たったとしても、きっと、いや間違いなく真っ直ぐに進んでゆけるはず。付き合いの長い私たちだから。一緒にいれば、絶対、どんな辛い時だって支え合って生きてゆける。


 私はそれを望んでいるし、エッジだって同じ思いでいると思う。


 ちなみにオールスレンとモニカはというと、あの後すぐに破局したようだ。


 何でも私という邪魔者がいなくなった途端モニカが強烈な本性を露わにしたようで。それによってオールスレンの心はモニカから離れていったらしい。そんな状態で長続きするはずもなく。段々喧嘩ばかりになっていった二人は短期間で関係が終わることとなってしまったのだそうだ。


 結局のところ、二人ともお互いのことを真の意味では理解できていなかったのだろう。


 だからこそすれ違った。

 だからこそ手を取り合えなかった。


 二人は相手を良いところも悪いところも含めて真っ直ぐに見つめられなかった。だから関係は壊れ、離れることとなってしまったのであろう。


 また、それから少しして、オールスレンは兄から移された風邪に似た謎の病によって呼吸困難になってしまい亡くなった。

 そしてモニカもまた延々と腹痛が止まらない奇病を患ってしまい、ある日の朝突如大量出血して死亡した。



◆終わり◆

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