朝、目が覚めたら、婚約者が枕元に立っていました。しかも婚約破棄を告げてきまして……?
朝、目が覚めたら、婚約者ローベンが枕元に立っていた。
「えっ……?」
「おはよう」
「ローベンさん!?」
ただただ驚いていたのだが。
「ああ、用があって来たんだ」
ローベンは平然と言葉を投げてくる。
「実はさ、伝えたいことがあったんだ」
「伝えたいこと……ですか?」
「ああ。それで、君のお母さんにお願いして通してもらったんだ」
……そういうこと、か。
「君との婚約だが、破棄とさせてもらう」
少し納得した次の瞬間、ローベンはそんなことを告げてきた。
「婚約、破棄……?」
「ああそうだ」
「ええっ……それはあまりに急過ぎません……?」
「急過ぎるとか関係ない!!」
「……あ、あぁ、そうですか」
こうして私とローベンの婚約は破棄となったのだった。
理由なんて分からないまま。
何がどうなってこうなったのか理解できない。
でも婚約が破棄となったことだけは確かだった。
◆
あれから数週間。
実家で親と暮らしていたローベンが亡くなったという話が耳に入ってきた。
外出先で出会い惚れた女性に騙されて資産を搾り取られたうえややこしい揉め事に巻き込まれてしまい怖い人のもとに連れていかれてしまいそのまま殺められてしまったのだそうだ。
……実に恐ろしいことである。
だがもはや私には何の関係もない。
だから彼を可哀想だと思ってあげることはしない。
◆
婚約破棄から数年。
私は今、良き人を夫とし、幸せに暮らせている。
この生活には文句なんて一つもない。
◆終わり◆




