私から妹へ乗り換えることを宣言した婚約者の彼でしたが……?
「俺はお前でなく妹さんを愛している! よって、お前との婚約は破棄とする!」
とあるパーティーにて。
婚約者ルドミックが私の妹を抱き締めながらそんなことを告げてきた。
えっ……、と思っていたら。
「きゃあああああ!! 熊!! 熊がああぁぁぁぁぁぁ!!」
会場の入り口が乱暴に開かれ、黒々とした熊が乱入してくる。
「叫んじゃだめっ」
「ひぃいいぃぃぃぃー!!」
「落ち着いて!」
「怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖っ……コワブワハタブラコワブワハタブラハタブラハタブラハタブラパーティーハタブラハタブラコワブワハタブラ」
その熊はルドミックと彼に抱き締められている妹に迫る。
「ぐっ……ぎゃああああぁぁぁぁぁぁぁ!!」
ルドミックは熊の餌となった。
あーあ、残念なことになっちゃった。
そんなことを思いながら会場を去る。
ちなみに妹もまた熊の餌となったのだった。
……ま、何とも思わないけれど。
◆
あれから数年、私は大富豪の妻となった。
あの時婚約者だからとルドミックに執着していなくて良かった、と、今は迷いなくただひたすらに真っ直ぐに思うことができる。
今はとても幸せ。
だから私はこの道を行く。
もう振り返らない。
◆終わり◆




