にやけながら言葉を紡いでくるような人は大嫌いです。……あの世へ逝った? そうですか、ざまぁです。
「エリーミナ、君とはここまでとする」
ある夏の日。
婚約者である彼ウィクはそんなことを言ってきた。
「君はとにかくパッとしない。それが婚約破棄の一番の理由だ。わかるな?」
「……分かりません、いきなり過ぎて」
「はぁ〜? 馬鹿だなエリーミナは。ま、つまり、俺はもう君のことを嫌いになったってことだよ」
ウィクはヘラヘラしながらそんなことを言ってくる。
常に真剣に生きろ、なんて言うつもりはないけれど、こんな時にまでにやけながら言葉を紡がれると非常に不快な気分になってくる。
そんなふざけた人に真剣に向き合おうとはどうしても思えない。
「ま、そういうことだからさ。さっさと俺の前から消えてくれよな。な? 分かるか? 言語理解できてるか?」
こんなにも不愉快にしてくる人とは共に生きてなどゆけない。
だから全部おしまいにしてしまおう。
このまま彼といてもこれ以上幸せになんてなれはしない、それは明らかなことだから。
「分かりました。……では、これにて失礼いたします。さようなら」
◆
婚約破棄された一週間後、私はなぜかたまたま旅行に来ていた他国の王子から想いを告げられ、そこから色々あったけれどやがて彼と結ばれた。
これからは王子の妻として生きてゆく。
苦労はあるだろう。
でもきっと幸福もあるはず。
少なくとも……ウィクと一緒にいるよりはましだろう、希望は確かにある。
一方ウィクはというと、婚約破棄宣言してきたあの日の翌日にいつもと同じように散歩していたところ急に意識を喪失して倒れそのままあの世へ逝ってしまった。
◆終わり◆




