その日、私は見てしまったのです――そう、婚約者である彼の裏切りの光景を。
その日、私は見てしまった。
「ねぇねぇ~、今日はどこ行くぅ?」
「あっちの宿なんていいんじゃないか」
「あぁ、あそこ、ねぇ……」
「何だよ、不満なのか? 何か嫌な理由があったのか?」
婚約者である二つ年上の彼ロックが知らない女と歩いているところを。
「ううん! ロックと一緒ならどこへでも! だってぇ、愛してるんだものぉ」
女の甘い声に皮膚が奥底まで凍りつく。
目にしている光景に思考が追い付いてこない。
……何だ、これは。
私は一体……何を見せられている……?
「よしっ、じゃ、行こ!」
「はぁ~いっ」
婚約者が……浮気していた……?
だが、刹那、欠片ほども想像していなかったことが起こる。
――二人めがけて雷が落ちたのだ。
「きゃああああ!」
「なんだぁ!?」
「うわあ! 人が! 人が……」
まさかの展開だった。
付近にいた人たちは叫んでいた。
そうして、裏切り者ロックとその浮気相手である女はこの世を去ったのだった。
◆
あれから数年、私は穏やかな日々を過ごしている。
結婚はした。
良き夫との日々は幸福に満ちたものだ。
私はこれからも幸せに生きていく。
……え? ロックとの婚約? それはもちろん破棄となった。彼が浮気相手と雷に打たれ死んだ日、私と彼の婚約はほぼ自動的に破棄されたのだ。当たり前だろう。だってもう、彼はこの世界から消えたのだから。それでもなお関係を維持する理由があるか? それも裏切り者婚約者だというのに。死した彼と心だけでも共にあり続ける意味なんて……あるわけがない、そうだろう?
◆終わり◆




