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さくっと読める? 異世界恋愛系短編集 4 (2024.1~12)  作者: 四季


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過労で倒れてしまったところ婚約破棄されました。~冷血王子とはもうやっていけませんのでさよならします~

 婚約者ウェルベルトはこの国の王子でもあった。

 そんな彼と生きてゆくということは、つまり、国の将来を背負ってゆくということだ。

 私ルルーサはその意味を深く捉えていた。

 だからこそ国の代表として恥ずかしくない私でいようと思っていたのだが――そんな矢先、過労で倒れてしまって。


「お前との婚約、破棄するわ」


 目覚めた時、枕もとに立っていたウェルベルトは、第一声冷ややかにそんなことを言ってきた。


「え……」

「過労くらいで倒れる女を妻にするなんて恥ずかしい」

「そ、そんな」

「もっと強い身体の持ち主でないとな。子もたくさん産んでもらわなくてはならないわけだしな。ま、お前は俺の妻となるに相応しい女じゃないってこった」


 ウェルベルトは心配なんて少しもしてくれなかった。それどころか倒れた私を馬鹿にしているようであった。さらに、幻滅した、とでも言いたげな目でこちらを見てきて。倒れた私の姿は彼の眼にはただただ情けない存在として映っていたのかもしれない。


「じゃあな、ルルーサ。……ばいばい」


 こうして私はウェルベルトから別れを告げられてしまったのであった。



 ◆



 あの後すぐウェルベルトはジエリーという女性と婚約した。


 ジエリーという女性は元々は侍女だった人だそうなのだが、数年前に仕事を辞めてからはウェルベルトの傍をうろちょろしていたらしい。


 どうやら彼女はウェルベルトの隣を狙っていたようで。

 他の侍女らからの話によれば、倒れた私のことを悪く言い王子の妻には相応しくないなどと言って彼を洗脳していたのも彼女だとか。


 ……結局私は彼女の企みに巻き込まれただけだったのか。


 そうして結婚したウェルベルトとジエリーだが、結婚後間もなく問題が発生する――そう、ジエリーが、王家のお金を勝手にどんどん使うようになったのだ。


 で、やがて、王族らは行動を起こした。


 ジエリーを王家より追い出す。

 そのために動き出したのである。


 だが追い込まれたジエリーはウェルベルトを人質にウェルベルトの部屋に立てこもり「わたくしを追い出すというのであれば、彼もろともここで死んでやりますわ!」と言って脅した。


 それによってジエリーは一旦追放を免れる。


 が、その後少しして、ウェルベルトと共に庭を散歩していた最中に突如何者かに襲われ殺害された。


 ジエリーを殺したのは王族が雇った暗殺者であった。


 その後ウェルベルトは国王の命により暫し謹慎させられることとなった。

 妻を、ジエリーを、肝心な時に制止できず好き放題させてしまった。そのことを反省するように、とのことでの謹慎。ウェルベルトは反省のための時間を与えられたのであった。


 だがその謹慎中にウェルベルトは殺められた。


 ジエリーの兄による単身突入、そして王子殺害であった。


 犯人である彼は妹を死なせる原因を作ったウェルベルトを恨んでいたのだ――もっとも、その彼も、捕らえられて処刑されたのだが――最期は爽やかな笑みを浮かべて満足そうに瞳を煌めかせていたらしい。


 これらの一連の事件により、王家の民からの印象は良くないものとなってしまった。



 ◆



 あれから数年、私は今、良き人と結婚して穏やかに幸せに暮らすことができている。


 夫は王家の者ではない。そういう意味では相手の格が下がったとも言えるかもしれない。実際周囲にもそういうことを言ってくる者もいたことは確かだ。嫌みを言われたことも一度もないわけではない。


 でも、私は、今の夫を他の誰よりも愛している。


 彼が一番良い相手だと思う。


 身分が高ければそれでいいのか? ――いいえ。


 何度問われたとしても、私はきっとそう答えるだろう。


 たとえ王子でも、過労で倒れた時にあんな心ない態度を取るような人とは生涯を共になどできない。だってそれは助け合えないということだからだ。生きていれば色々なことがあるのに、支え合うことができないなら、それはもはや夫婦とは言えないだろう。


 そんなものは奴隷扱いでしかない。

 しんどくても、よれよれでも、常に健康そうに振る舞って働き続けなくてはならないなんて。



◆終わり◆

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