婚約者を妹に盗られていたうえ婚約破棄宣言もされたので、これからは両親や友人と共に楽しい日々を謳歌します!
「お前はだっさいのに妹さんはめちゃ可愛いんだな! この前知ってびっくりした。てことで、お前との婚約は破棄な! で、妹さんと婚約するんだ」
婚約者ルーテルは実は裏で私の妹と繋がっていた。
しかし二人ともそのことは隠していて。
婚約破棄、ついにそれを告げる時が来て、その真実を突如明かされたのであった。
「ごめんね! お姉さまの婚約者とこんなことになっちゃって!」
妹はちっとも反省していない様子だ。
謝罪は言葉だけである。
「彼女は悪くない! いや、誰も悪くはないんだ! 俺は彼女だけを愛している、それが事実であるというだけで。それ以下でもそれ以上でもない!」
勝手に婚約破棄?
しかもそこから妹と婚約?
……どこまでも呆れてしまうような話だ。
「じゃあね、お姉さまっ」
「俺たちは幸せになるから、お前も幸せになれよな」
なんという屈辱的な出来事だろう……、なんて思いながら、私は仕方なくその場から離れたのだった。
◆
「あんなやつもう娘じゃあないわい!」
話を聞いた父は妹に激怒していた。
「そうよ! 育てておいて何だけれど……最低女だわ! そんな女を娘なんて思いたくないわね」
そして母もまた妹へ怒りを向けていた。
それから少しして妹は勘当を言い渡される。
彼女は帰る場所を失った。
◆
婚約破棄宣言から半年、ルーテルも妹もこの世を去った。
私がいなくなってから二人は予定通り婚約したようであった。しかしいざ二人になると喧嘩がやたらと勃発するようになってしまって。二人の関係はみるみる悪化。私がいなければ、秘めた刺激的な関係でなければ、二人は特に互いに惹かれる部分はなかったようである。
そんなある夜、妹がルーテルの家の近くにある石の階段を歩いていた時、彼女は何者かに突き落とされた。
大怪我をして病院に搬送されるも、彼女はそのまま死に至る。
転落直後は辛うじて意識はあり言葉は発せていたようなのだが、そこから容態は急速に悪化、そうして彼女はこの世を去ることとなってしまったようである。
で、突き落とした犯人が、実はルーテル本人であって。
関係者にそのことを暴かれたルーテルは、パニックになり、家の近くにある崖から飛び降りて自らあの世へ行ってしまったそうだ。
一方私はというと、今は両親と共に穏やかに暮らしている。
家の近くの花壇や庭で花を育てたり、様々な種類の茶葉を買って紅茶を淹れたり、お菓子も色々買ってきてみたり友人に手伝ってもらいながら作ってみたり、時には歌うことに挑戦したり、柔軟体操を日課にするよう努めたり……幅広いことに挑みながら、充実した日々を堪能している。
◆終わり◆




