嫌がらせばかりしてくる最低姉は最終的に自滅したようです。~私は幸せになりますが、貴女が幸せになれるわけがありませんよね~(3)
◆
関わりが始まってから数ヶ月が経ったある日のことだ。
姉が「フィジップに会ってみたい」と言ってきて、ほぼ強制的に三人で会うこととなってしまった。
絶対に嫌だったけれど避けられなかった……。
一応フィジップに姉について話しておいたので大丈夫だとは思うのだが、それでもなお不安はある。
「メリはねぇ、昔から余計なことばっかりするのよ。頭はあまり良くないし、がさつですぐにうっかりやらかすし、駄目駄目なのよ~」
姉は相変わらず悪いことを吹き込もうとしてくる。
しかし。
「お姉さん、貴女、メリさんの何をご存知なのですか」
フィジップは乗せられはしなかった。
彼は自分で見たものだけを信じていた。
吹き込もうとされた偽りの話を信じたりはしなかったのだ。
「メリさんはそのような方ではありません」
きっぱりと言ってくれて、泣きそうになる。
目の周りが熱い。
涙がこぼれてしまいそう。
「あらぁ、貴方の方こそ知らないんじゃないのぉ? だって出会ってまだそれほど経っていないのでしょう? だから良いところしか見えていないのよ、けどぉ、本当のメリは残念女なのよ~?」
するとフィジップは姉を鋭く睨む。
「これ以上、貴女とお話しすることはありません」
彼は椅子から立ち上がる。
「メリさん行きましょう」
「え……」
差し伸べられた手に戸惑う。
「こんな話をしていても時間の無駄です」
「……フィジップさん?」
「お姉さん、それでは僕はこれで。行きましょうメリさん、どこかへこれから遊びにでも行ってしまいましょう?」
「あ……は、はい」
私は彼の手を取った。
姉に睨まれてももう気にしない。
「それでは失礼します」
彼はさらりとそう言うと私を連れてその場から離れてくれた。
――その日私は彼よりプロポーズされ、私はその場で結婚を決めた。
一般的に考えると早すぎるかもしれない。急なことだったし。でも私にとっては早すぎることはなかった。一刻も早く家から出たい、そんな心情だった私にとって、彼からの提案は非常に魅力的なものだったのだ。そこには早すぎるも何もありはしない。
◆
あれから数年、私は今もフィジップと夫婦として穏やかに幸せに暮らしている。
どんなに忙しくとも一ヶ月に一回は薔薇園へ行く――結婚の際、そう約束したのだけれど――その誓いはお互い一度も破ったことはない。
むしろ二週間に一度くらいは絶対行っている気がする。
私も彼も薔薇を深く愛している。
だから薔薇園へ行くことをやめようという話には絶対にならないのだ。
何度だって、いつまでも、彼と一緒に薔薇園の風景を眺めていたい。
それが本心だ。
一方姉ベイルはというと。
家に私がいなくなってから近所の人に迷惑行為を繰り返すようになっていったそうで、やがて地域で問題視されるようになっていったそうだ。
で、ある時、放火未遂を起こしたところを捕らえられて。
そうして彼女は犯罪者としての生という道を歩んでゆくこととなってしまったようだ。
彼女の悪質さはようやく皆の知るところとなったようである。
今や彼女を良き人間と信じる者はいない。
彼女は社会的に終わった。
きっともう二度と一般人には戻れないだろう。
これからは一生牢暮らし。
冷えた不味い物を食べつつ強制労働させられるのである。
噂によれば強制労働の内容が上手くいかないと鞭で打たれることもあるらしいが――ある意味それは彼女が生きるに適した環境だと思う。
ずっと他人を傷つけてきたのだ。
ずっと他人の心をないがしろにしてきたのだ。
長きにわたり悪い行いを重ねてきたのだから、末永く苦しめばいい。
◆終わり◆




