嫌がらせばかりしてくる最低姉は最終的に自滅したようです。~私は幸せになりますが、貴女が幸せになれるわけがありませんよね~(2)
「僕とですか?」
「はい。……すみません急にはしたなくて」
「いやいやそんなことを言おうとしたわけではないですよ!」
「では――」
「良いですよ、よければぜひ。僕もそうしたいです」
普通に喋っているだけなのに、自然と、楽しいという感情が湧き上がってくる。
「それは良かった……! ではそうしましょう。どこで会うことにします?」
「やはり薔薇園でしょう」
「名案ですね!」
「それで構いませんか? メリさん」
「はい」
また会いたい、強くそう思った。
――だが、改めて会うことになっていた日の朝、着ていく予定にしていたワインレッドのワンピースは姉に黒い汁で汚されてしまった。
「あんたみたいなのが浮かれてるから、現実を見させてあげただけよ」
姉は平然とそう言った。
どうしよう。
約束は取りやめにしようか。
迷った。
でも、真っ直ぐに笑ったフィジップの顔がどうしても忘れられなくて、仕方がないので汚されたワンピースを着てゆくことにした。
恥ずかしいしみっともない、でも仕方ない。他に着ていけそうな服なんてないし。なら裸で行くのかといえばそんなことは不可能だ、いずれにせよ何かを着ていかなくてはならないのである。
「酷い姉ね」
私は吐き捨てて、汚された服をまとった。
そして家を出た。
◆
「どうしたんです!? そのまだらなワンピースは!?」
会うなり大変驚かれてしまったけれど。
「――そうでしたか、そういうことだったのですね」
何がどうなったのかということを説明すると、彼はすべてを理解して受け入れてくれた。
「お姉さんに虐められているのですか?」
「昔からそんな感じなんです」
「なんと。これまでもずっと理不尽なことをされてきたのですか? 今に始まったことではない、ということですか」
「そうなんです……」
「それは――そうですか、だとしたらこれまで色々大変でしたね。苦労されてきたのですね」
姉の悪行について誰かに明かしたのはこれが初めてかもしれない。
「でも、そのワンピースも素敵ですよ!」
「えっ」
「まだらも素敵です」
「そう……でしょうか、ちょっと、恥ずかしくて」
「堂々としていれば良いのですよ。はじめからこういうデザイン、みたいな顔をしていれば良いのです。そうすればそういうものに見えますよ」
言われてハッとした。
「そ、それは、確かに……!」
そうか、何事も考え方次第なのだ。
「明るい顔の貴女が一番素敵です!」
「ありがとうございます……!」
彼に前向きな言葉をかけてもらえたことで思考が前向きになってきた。
今は嫌なことは忘れよう。
そしてできる限り光を探し求めて見つめていよう。
彼と一緒ならきっと大丈夫!
「では薔薇を見に行きましょうか!」
「はい……!」
そうして私たちは徐々に心の距離を近づけていったのだった。




