ある朝、目を覚ますと、目の前に婚約者と見知らぬ女が立っていました。~なんじゃこりゃあ!! な出来事でした~
ある朝、目を覚ますと、目の前に婚約者アベルと見知らぬ女が立っていた。
「今日は君に伝えたいことがあって来た」
アベルは直立したまま平然とそんなことを述べてくる。
いやいや、そもそもそれ以前の話なのだが!
知らない間に部屋に人が入っていることが怖いのだが!
……そんなことを思っていたら。
「僕は君との婚約を破棄することにした」
さらにそんなことを言われてしまう。
「え、いや、それ以前に勝手に室内に入り込んでいることが怖いのですけど……」
「はぁ!? うるさいな!! ……ったく、感じの悪い女だな」
「いやいやおかしいですよ! 私はただ寝ていただけです。それに非はないと思うのですが。それでも私がおかしいと言うのですか?」
一応言い返しておくけれど。
「うるさいうるさいうるさい!」
アベルはそれを掻き消すように同じ言葉ばかりを繰り返し。
「とにかく! 君とはもう付き合わない」
「そうですか……」
これは一体何なのだろう?
なぜこんなややこしい目に遭わされているのだろう?
「アベルさまぁ、本当にいいんですかぁ~?」
「ああもちろんだよ」
「ええ~? でもぉ、婚約者さんが可哀想なんじゃあ……」
「僕は真実の愛のために生きるんだ。だから大丈夫。君は何も心配しなくていい」
しかも婚約者であった彼が他の女性といちゃついているところを見せられるし……。
もう意味不明過ぎる。
何が何だか、である。
脳が受け入れ理解できる範囲の出来事では到底ない。
こうして私はあっという間に婚約破棄されてしまったのだった。
ただ、あの後、こちらからも一応反撃はした。
仕返し、と言うと悪質なようだが。先に無礼極まりないことをしてきたのは向こうなのだから容赦は不要、そう考えて、こちらは積極的な行動に出た。
つまり、勝手に家に入ったアベルらを犯罪者として治安維持組織に突き出したのである。
それによってアベルとあの女性は不法侵入の罪で拘束されたのだった。
彼らは私を押し退けた後で結婚しようと考えていたようだ。
しかし犯罪者となってしまったために結婚などできる状況ではなくなってしまった。
で、やがて二人は離ればなれにされてしまったようだ。
私さえいなければ二人で幸せになれる。アベルらはそう思っていたのかもしれない。でもそれは間違いで。他者を傷つけてまで結ばれようとして、そんな酷いことをして、幸福を手に入れることなんてできるはずもなかったのだ。
◆
あれから数年、私は今とても穏やかに暮らせている。
アベルに切り捨てられてから少しして出会った青年と愛し合うようになり、結婚。
そして夫婦での生活は順調に進み、現在に至っている。
今はとても幸せ。
だからこの道を選んだことは正解だったと思っている。
◆終わり◆




