表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
さくっと読める? 異世界恋愛系短編集 4 (2024.1~12)  作者: 四季


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

13/598

他に好きな人ができたからと私との婚約を破棄した彼は惚れた女性からは相手にしてもらえなかったようです。

「君との婚約だが、破棄とすることとしたよ」


 かっこつけ婚約者ミレニーユは変ないきったポーズでそんなことを告げてきた。


 ある春の日のことである。

 穏やかな日射しに沈み込むような彼の怪しい格好が見ていて恥ずかしくなる。


 ミレニーユとしてはかっこいいつもりなのだろうか……。


 いやはや、イタい。


「婚約破棄、ですか?」

「そうなのだよ。実はね、真実の愛を見つけてしまったんだ」

「……と、言いますと?」

「好きな人ができたんだよ。君ではない女性で。その女性は本当に美しい人でね、僕の心は今彼女に燃えているんだ」


 つまり、心変わりしたということか。


 それはまた大変かっこ悪いではないか。


「僕の心をこれほどまでに燃やすのは彼女が初めてだ」

「そうですか」

「なので、君とは終わりにするのだよ」

「……分かりました」


 他に愛している女性がいる男をいつまでも持っていたいとは思わない。だって、そんなことをしても、結局形だけの持っているになることは目に見えているから。縛りたくない、なんていうきれいごとではない。ただ、心がこちらに向いていないと知りながら縛りつけていたいほど彼への執着はないのだ。


「はは! 分かってくれるなら助かるよ! じゃあな、ばいばい」


 彼は笑顔でそう言って、一度両手を頭の上で交差させるようなポーズをとってから、害虫のような速さで去っていった。



 ◆



 あの後ミレニーユは言っていた女性に嫌われてしまったそうだ。


 何でも、婚約破棄した日からアプローチを始めたのだそうだが、まったくもって相手にされなかったそう。女性は特にミレニーユのナルシスト的部分を嫌っていたらしい。それでもミレニーユは何度も接触し愛をもぎ取ろうとしていたようだが、ある時女性に我慢の限界が来たらしくて。ボロクソに言われ「二度と近寄らないでください」とまで言われてしまったそうだ。


 彼の想いは実らなかった。


 また、ミレニーユはその後も女性につきまとい、やがてストーカーとして治安維持組織に突き出され牢屋送りにされてしまったそう。


 ……馬鹿だなぁ、なんて思いながら。


 でも、女性からすれば、拒否したにもかかわらずいつまでもつきまとわれたら怖かっただろう。


 その気持ちは想像できる。

 だから彼女がミレニーユを治安維持組織に突き出すという選択をしたのも理解はできた。


 ミレニーユはもう罪人だ。

 この先きっと穏やかには生きてゆけないだろう。


 でも自業自得。


 すべては彼の行動が招いたことなのだから。



 ◆



 ミレニーユが牢屋送りになったと聞いた頃から数ヶ月が経った頃、私は、一人の青年と知り合った。


 これまで異性の知り合いはあまりいなかった。

 でも彼とはすぐに仲良くなれた。


 出会いは、とある釣り大会。


 私は昔からたまに釣りをしていたのでたまたま思い立って大会に参加してみたのだが、そこで彼と出会ったのだ。


 そんな彼と私は結ばれた。


 出会いとはどこに落ちているか分からないものだ。今も強くそう思う。そして、人生とは分からないものだ、とも。人生の不思議、というものを、彼との出会いからは強く感じた。


 ただ、何にしても、彼と出会えたことは本当に良かったと思うしそれが幸運な出来事であったことは確かだ。



◆終わり◆

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ