とても天気が良かったその日、婚約破棄されてしまいました。問題のある行動はしていなかったと思うのですが……理不尽過ぎやしませんか?
その日、とても天気が良かったので、自宅の庭にてうさぎ跳びをして遊んでいたのだが。
「お前! なんてことしてるんだ! 恥ずかしい女!」
それをたまたま通りかかった婚約者ミッドヴェに見られてしまって。
「まさかそんなみっともないやつだったとは……裏切り者め。……ま、もういいさ。お前との婚約なんぞ、破棄だ! 婚約は破棄とする!!」
急に激怒されたうえ、関係の解消を告げられてしまった。
「うさぎ跳びしていたからですか?」
「あったりまえだろ! それ以外に何があるってんだ!」
「でも……うさぎ跳びは違法行為ではありません」
「女のくせにそんなことしてやがるなんてあり得ねぇんだよ!」
露出していたわけではない。
下着が見えるようなことをしていたわけでもない。
だから問題行動ではないと思うのだが。
「普通の運動です」
こちらがそう言っても。
「知るか! 今さらあれこれ言ってももうおせぇよ! ……言い訳はもういい、聞く気はない。だからさっさと俺の視界から消え失せろ!」
彼はより一層怒るばかりであった。
理不尽に怒りを爆発させる彼を見ていたら、段々「もうこの人とは無理だな」なんて思ってきてしまって――だから私は彼との未来は諦めて手放すことにした。
「分かりました。では、さようなら」
◆
あの後ミッドヴェは酒場で出会った一人の女性に惚れ込み、大量に高級品のプレゼントを贈ってアプローチ、婚約に持ち込もうとする、が――ちょうどそのタイミングで彼女に多額の借金があることが発覚し、親に大反対され婚約できないどころか関わることすら許されないこととなってしまったそうだ。
で、絶望したミッドヴェは自らこの世を去った。
最期の日、彼は、特に親しかった同性の友人に「彼女に会えないなら生きている意味がない」と言っていたそうだ。
彼の女性へと愛はきっと偽りのものではなかったのだろう。
けれどもそれは周囲に受け入れてもらえるようなものではなかった――相手が相手であったから。
◆
ミッドヴェに婚約破棄された日から四年が経った。
「これからもよろしくね、アーロン」
「こちらこそ」
「愛しているわ」
「僕もだよ。君のことを愛している、何度でもそう言うよ」
私はもうすぐ最愛の人アーロンと結婚式を挙げる――そして正式に夫婦となるのだ。
過去は振り返らない。否、きっと時に思い出すことはあるだろう。でもすべてはもう思い出だ。過去は所詮過去でしかない、だからそれはそれで過去に置いておく。
何もかもすべてを糧として、私は前へ進む。
――幸せな未来を掴むために。
◆終わり◆




