どうしてか愛されず、たびたび婚約破棄される私でしたが、最終的には良き人と巡り会えて穏やかな幸せを手に入れることができました!
――どうして私は愛されないのだろう。
「ミレーネア、お前との婚約だけど破棄するわ」
一人目の婚約者は幼馴染みである青年だった。
年齢は同じ。
昔から知っている親しい間柄の人物であった。
でも、長い付き合いがあったにもかかわらず、彼はある時私をさらりと切り捨てることを選んだ。
「ど、どうして……そんな急な……」
「だってお前といてもさほど楽しくないもん」
「ええっ」
「理由はそれだよ。……じゃあな」
それが我が人生における一度目の婚約破棄であった。
初めての婚約破棄。信じられない展開。まさか、としか思えず、ただただ辛かった。胸が痛くて、息が詰まりそうで。絶望を抱えることしかできなかった。
私をいきなり切り捨てた彼は、婚約破棄を告げてきた翌日、家の近くで不審者に襲われて刃物で刺され亡くなった――それはまた別の話、だが。
◆
「俺、彼女と一緒になるから。お前はもう要らないよ。婚約は破棄な」
二人目の婚約者は花屋で知り合った人だった。
私も彼もその店の常連客で、そこで時折話すようになっていって、婚約するに至った――しかし今はもう彼は私を愛してはいない。
「貴女が婚約者さんですかぁ~? 奪うみたいになっちゃってぇ、ごめんなさぁ~い。でもぉ、勘違いしないでくださいねぇ? あたし、奪ったわけじゃないですからぁ。彼があたしに惚れてしまっただけなんですよぉ」
彼が愛しているのは、今彼の隣のいる女性なのだろう。
「とにかく、お前の顔はもう見たくないし見る気も一切ない。関係はここまでだ。いいな? 二度と俺の前に現れるなよ」
こうして私はまた捨てられる。
だがその数日後彼の訃報が届いた。
あの女性には実は凄まじい額の借金があったそうで、彼女は隠していたものの実は借金取りに追われる身だったそう。で、二人でいる時に借金取りが現れたらしく。彼は女性を守ろうとしたそうなのだが、その際借金取りに殴られて転倒、頭を打ってその場で死亡したのだそうだ。
ちなみに女性はその後裏社会に売り飛ばされたらしい。
まぁそのあたりは私にはさほど関係のない話だが……。
◆
「君ィ、ださすぎて無理ィ。てことでェ、急なのは悪いけどォ、婚約は破棄とするゥ」
ファッション業界で活躍する彼は私の三人目の婚約者。しかし彼が私に興味を持ってくれていたのは最初だけだった。いつからか無視されるようになってしまい、そのうちに会ってくれる機会もなくなり、街で偶然出会っても目を逸らされるまでになってしまって。
そしてその果てに告げられた。
「聞こえたなァ? ちゃぁんと言ったからなァ? 後から聞いていないとか言うなよォ」
――そう、関係の終わりを。
「婚約は破棄だァ!!」
でももうかつてのように傷つきはしない。
だって慣れているから。
不思議なことだが以前のような絶望感の波は襲ってはこないのだ。
人とは不思議だ、どんなに辛いことでも回数を重ねていくうちに慣れてくるのだから。
一度目はショックだし混乱しているしで脳内が滅茶苦茶になる。けれどそれが二度三度と増えてゆくたびにショックは小さくなってゆくし混乱はしなくなる。ああそうかまたか、くらいにしか思わなくなって。それゆえ婚約破棄宣言をされてしまった瞬間ですら脳は静けさを保っているような状態だ。
「そうですか、分かりました」
ちなみに彼もまた婚約破棄後間もなく死亡した。
その日彼は酷く酔っ払っていたそうで、町の外れの百段ある階段を降りている途中で足を踏み外して転落――そのままこの世を去ったそうである。
◆
――と、色々あったが。
「今日はサンドイッチ作って持って行くわね」
「え、いいの!? やったぁ! 嬉しいな、ありがとう」
今は良き人と夫婦になることができている。
夫である彼は私の過去を知っている。
非はなくともなぜかいつも捨てられる、そんなことを繰り返していたことを知っていて、それでもなお彼は私を選んでくれた。
「君が作るサンドイッチは美味しいからなぁ」
「そう?」
「うん! そうだよ! すっごく美味しくて、神!」
「ありがとう」
だからこそ、私は彼のためにできることはしていきたい。
「褒めてくれるのは貴方が初めてよ」
この幸せを守りたい。
この穏やかな日々を大切に抱き締めていたい。
だから私は彼のために生きる。
◆終わり◆




