婚約破棄されて泣いていたら。~意外な出会い!? まさかの展開で運命の人と巡り会いました!!~
婚約破棄されて泣いていたら。
「大丈夫か? きみ」
背後から誰かが声をかけてきた。
振り返れば、そこには一人のもっちりした三十代くらいの男性が立っていた。
「泣いているのかね? 自分でよければ話を聞くよ?」
「え……」
「どうだろうか」
本当は話すべきではないと思った。
だって相手は知らない人だから。
初対面の何も知らない相手に話を聞いてもらうなんてそんなことあり得ないことだと思っていた。
――でもこの時は話を聞いてほしかったから。
「……聞いて、くださいますか?」
そう言ってしまった。
考えるより先に言葉が出ていたのだ。
「ああ! もちろんだよ!」
その男性は嬉しそうに返してきた。
もっちりした頬に浮かぶ笑みはまるで天使のそれのようだ。
それから私は一連の流れについて彼に聞いてもらった。
「――そう、か」
彼はずっときちんと話を聞いてくれていた。
「面白い話でなくてすみません……」
「それは大変だったなぁ」
「もっと何か楽しい話があれば良かったのですけど……」
「いやいやいいよ。むしろ、辛いのに話してくれてありがとう。感謝しているよ」
誠実な人だとは思ったけれど、この時はまだ彼との未来なんて少しも考えてはいなかった。
◆
結論から言えば、私は彼と結婚した。
あの絶望の日に出会った彼と結ばれた私は、今、とても幸せに暮らせている。
彼は石油王だった。
そのため経済的には非常に裕福である。
おかげで彼の妻となった私もゆったりと暮らせている。
「きみと一緒にいられて幸せだよ」
「そう言っていただけるととても嬉しいです」
ちなみに元婚約者の彼はというと、あの後一人で山を散歩していた時に野犬の群れに襲われてしまい取り囲まれ噛まれて殺められてしまったそうだ。
◆終わり◆




