理不尽に婚約破棄してきた婚約者に罰を下してくれたのは、二つ年下の可愛い可愛い妹でした。
私には可愛い妹がいる。
二つ年下の彼女は魔法使いであり、また、姉である私を心の底から愛してくれる素晴らしい女性でもあるのだ。
そんな妹は、私が理不尽に婚約破棄されたことに激怒した。
「お前なんてさぁ、ぱっとしねぇ、ただの平凡の極み女だろ? カスだよ。お前みたいなやつ、もうどーでもいーわ。てことで、婚約は破棄な!」
妹と一緒に参加していた晩餐会の最中、私の婚約者であるウェッヂは突然そんなことを言ってきたのだった。
その時妹も私の傍にいて。
即座に殴りかかるようなことはしなかったものの、かなり腹を立ててくれていたようだった。
それでウェッヂからの婚約破棄宣言の直後に。
「お姉さま、わたし、あの人絶対に許せませんわ」
「……と、言うと?
「このわたしが罰を与えます。今ここで。あの愚かとしか言いようのない男に罰を下すのです」
妹は真っ直ぐな瞳でこちらを見つめながらそんなことを言ってくる。
でも私には躊躇いがあった。
今ここで何か仕返しのようなことをしてしまったら変な目で見られてしまうのではないか、と心配していたのだ。
「お姉さまは嫌なんですの?」
「いいえ、けど……」
「何か?」
「躊躇いがあって」
「それは一体どういうことですの」
「だって、仕返しなんてしたら、変な目で見られてしまうんじゃないかって思って……」
すると妹は花のように笑みを浮かべた。
「そういうことなら、心配は必要ありませんわ」
彼女は既に晴れやかな顔をしている。
「誰にもばれませんわよ」
堂々としている彼女がそこまで言ってくれたので、私は、罰を下すこと――ある意味での復讐、を、彼女に頼むことにした。
「貴女、とても美しいね」
「あ、いえ、そんな。ウェッヂ様ったら、もう」
「惚れてしまったよ」
「ええー? そんな、照れますよ」
「いやいや照れる必要なんてない。悪いことをしているわけではないのだから。……でも意外だな、貴女ほどの女性でも照れたりするのだなと初めて知っ――」
刹那、ウェッヂのまとっていた衣服が完全に剥げる。
「きゃあああああああああああ!!」
ウェッヂに口説かれていた女性は高い悲鳴をあげた。
突如目の前に現れた全裸に心が耐えられなかったようだ。
「いや! いや! あっち行って! 無理無理無理無理……ぅ、キモ、気持ち悪すぎて……いやあああああ! あっち行って! お願い、離れてちょうだい!」
女性に悲鳴をあげられたうえ拒否されたウェッヂは絶望。その場から走り去った。そしてその駆けている勢いのままにバルコニーへと飛び出し、柵を乗り越え、宙へと身を投げた。
「え……ちょ、嘘、でしょ……」
そうしてウェッヂはこの世を去ったのだった。
◆
あれから五年。
私と妹は今も同じ屋根の下で幸せに暮らしている。
恋をしたことはある。
でも結婚までは考えてはいない。
だって私は妹だけを愛しているから。
結婚するとなれば恐らく妹とは一緒には住めない。どんな形で暮らすにせよ、妹とは恐らく離れることとなってしまう。妹も同居で、なんていうのは、さすがに結婚相手が許さないだろうし。
だから私は妹と二人でいる道を選んだのだ。
◆終わり◆




