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エルフが通る!  作者: 唐辛子塗る系うさぎ
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はじめまして

兄2人が戦地へと向かって3か月。

どうやら決着はついたようである。

いつものように窓際で光合成をしていると、兄2人が乗り込んできた。


「「レイ!!」」


「いい加減にしてください!あなたはいつもいつも!!『水と雷』って!もっと他に言い方があったでしょう!!」


いつも静かにニコニコしているドゥーエ兄があらぶっている。

はて、水と雷とは何のことだろうか。


「レイ。可愛い弟だが、今回ばかりは言わせてもらう。もっと他に言い方はなかったのか?!」


王太子が涙目で俺に訴えてくる。だが俺は何のことかさっぱりわからない。

こんなにあらぶっているということは、ストレスが溜まっているのだろうか。

…つまりこの戦、負けた?

俺の快適ライフが崩れる…かもしれない?


「…負けたの?」


俺の鼓動が速くなる。

敗戦国が払うのはお金や領土だ。

俺を養っていられないってほっぽり出されたらどうしよう。

この国の事も世界の事も何も知らないのだが??

生きていける気がしない。


「勝った!!」

「勝ちましたよ!!」


2人の叫びはほぼ同時であった。

そしてその叫びにはどこか、やけくそぎみなものを感じる。


ええ…勝ったならいいじゃん。


俺の困り顔をみた2人は顔を真っ赤にして、勢いよく部屋を飛び出した。

怒らせたかもしれない。


そしてまた3か月後。

俺の父でありこの国の王(俺は一度も会ったことないけど)が死んだという知らせが届いた。

次の王位にはアインス兄が就くことになり、父の葬儀の後すぐに戴冠式が行われた。


流石に葬儀と戴冠式には出席しなければいけない。

母や兄もそう思ったいたのだろう。

今迄は見たことのなかった複数の侍女に着飾られた。

そして、周りからは珍獣を見るような目で見られながら葬儀と戴冠式を乗り切った。

もうやだ、おうちかえりたい。


ちなみに言っておくが、俺はこのイベントが終わったら引きこもり生活に戻るつもりであった。

しかし何ということであろう。

母と兄2人は俺を部屋から閉め出したのだ。

くそう…どうやら俺の快適な引きこもり生活を守ってくれていたのは父だったようだ。

なんで死んでしまったんだ…。

ハイエルフは寿命が長いからそう簡単に死なないって、本に書いてあったのに。

毒でも盛られたんじゃないだろうな!

*****

「愚王が死んで1か月だ。様子はどうだ?」

アインスは執務室にて、弟ドゥーエと書類を片づけていた。


「どう、とは?他国は静かなものですよ。前王がなくなる直前の戦がいい薬になったのでしょうね」

「ちがう。レイの様子だ」


ドゥーエはアインスを一瞥することもなく、答える。


「…急すぎましたからね。生まれてから数度しか外には出ていなかったですから。今は図書館の方に通っているようです。まあ、徐々に慣れているようですよ。」

「周りの様子は?」


一度も書類から目を離さないドゥーエに呆れながら、自身は頬杖をつきながら会話をする。


「あなたから近づくなと命令をだしたじゃありませんか。そのせいで図書館に入れないと苦情が来ていますよ」

「そうだが…心配なんだよ」


ドゥーエはため息をひとつ吐くと、初めてアインスの方へ目線を向けた。


「レイが外へ出るようになって1か月たちました。周りからはそろそろ身体検査と適性検査をしたいとせっつかれています」

「そっ、それはだめだ!あんなことやそんなことがあったらどうするんだ!!まだ早い!」


アインスは勢いよく立ち上がると、ドゥーエの方へ詰め寄った。

そんなアインスにドゥーエはまたため息を吐く。


「あなた、身体検査と適性検査を何だと思っているんですか。私たちも受けたでしょうに。あんなことやそんなことやこんなことはなかったでしょう?」

「こんなことは言ってない…」

「レイへの接触禁止令も徐々に解いていくべきです。研究者たちもレイのあの未来予知がどこから来るものなのか知りたがっています」


ドゥーエの最後の一言に、アインスは目の色を変える。


「レイを研究者どものモルモットにするつもりか?」

「そんなわけないでしょう。ですが、あの能力が謎なままではいずれ強行突破しようとする輩も出てくるでしょう。前王派の貴族もいつ暴走するかわかりません」


ドゥーエの言葉にアインスは大きなため息をつき、黙って自分の書類に目を通し始めた。

そんなアインスに、ドゥーエもまたため息を吐き、また書類とにらめっこを始める。

*****

起きたら部屋を追い出されるようになって、ついに1か月。

俺はなるべく人と関わらないであろう図書室へと足を運ぶ。

だが、おかしい。

この1か月あまりにも出会わなさすぎる。

図書館へ行く道も、図書館へ着いてからも、誰一人の影も見かけていない。

この1か月ずっとだ。流石におかしい。

1か月たってようやくそのことに気付いた俺は愚鈍なのだろう。

不思議に思った俺は、人を探すことにした。

よく考えたら自分が住んでいる場所の事もよくわかっていないので、子供っぽく城内の探検でもしてみよう。

窓を覗くと立派な庭園が広がっている。

まずは庭園に行ってみようと思い、窓を開けて身を乗り出す。

今いる場所は1階のため、衝撃は少ない。

そして俺は、地面ではない何かを足で踏んだ。


「痛ってえ!!」


声は俺の下から聞こえている。

どうやら人を踏んでしまったようだ。

視線を落とすと、そこには黒いエルフがいた。

俺とも兄とも母とも侍女たちとも違う、所謂ダークエルフがそこにいた。

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