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エルフが通る!  作者: 唐辛子塗る系うさぎ
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エルフ!エルフ!エルフ!

俺は前世30で死んだ。

お布施はガッポガッポだったから、生きていたら毎日楽しく贅沢三昧できたし、ゲームにも課金できたのに。本当に惜しい。まったくもって運が悪い。楽しくなるのはこれからだったのに。

10年ぐらいわけの分からない自首しに来る犯罪者の面倒を見たり、孤児院からお金をたかられたり、さんざんだったから、お金使っている余裕なかったし。もう最悪だよ。


転生した時も女神さまにも神様にも会ってない。水色の髪をした残念な女神様とか、会ってみたかったなあ。


まあいい。エルフの王族に生まれ変わったんだ。日がな一日ごろごろ過ごしてやるさ。


*****

この国に現在いる王子は3人だ。

現王は快楽が大好きで、そこかしこに種を蒔いている。

それなのに子供が3人しかいないのは、現王がハイエルフだからである。

王族と認められるには、ハイエルフであることが絶対条件だ。

そしてハイエルフは長寿なため、子供はできにくい。

逆に短命であったり、周りの状況が過酷であったりすれば、子供の数は増える。


現王はそこかしこでヤリまくっているが、子供が出来ることは少ないし、出来たとしてもハイエルフではないことがほとんどなので、認知されないのだ。


さてそんな中、初めて正妃に子供が出来た。

生まれてきたときから美しいその姿に、皆魅了され、そして気付いた。


――性がない。


無性。

それは非常に神聖視されるものである。

子孫もなさないので、無性の寿命はながい。

ハイエルフというだけでも長命なのに、さらに無性だ。

エルフたち全てが、神だと祀った。


美しい我が子を腕に抱きながら正妃は思った。


(なんとして、あの愚王から守らなくては)


愚王の、子を見る目は獲物を見る目そのものであった。

生まれたばかりの子に発情するなど、どこのサルだろうか。


正妃は、子を城の一室に閉じ込め、外に出ることを禁じた。

*****

15歳になった。

語るべきことは特にない。

外に出たら働かされそうなので、このまま一生外に出ずに生きていきたいと考えていたら、その考えが読まれたのか、外に出ろと言われたことは一度もない。

最高のニート生活である。

もしや俺は天国に転生したのだろうか。

人が来ること滅多にない。

たまに、母親と兄が2人、部屋の掃除をする女性が1人来るくらいだ。

掃除をする女性の目には布がまかれており、生まれつき目が見えないということを教えられた。

どうやら、目が見えない分、魔力を張り巡らせって空間を把握しているらしい。

すごいね。

だがしかし、このままではダメ人間ならぬダメエルフになってしまう。

なにせ、学校はおろか、家庭教師すらいないのだ。

勉強といえば、兄が持ってきてくれた魔導書を読んだり、チェスをしたり(前世のチェストは違い、軍隊を動かす戦闘ゲーム)するくらいだ。

チェスは勉強ではない?馬鹿野郎。頭使ってんだから立派な勉強だよ。

他にしていることといえば睡眠ぐらいだ。

24時間寝ていることもある。

暇じゃないのかって?

暇だよ。

暇すぎて窓の横に座って、外を見てる。

外にも出ないから、太陽の光を浴びられるのここしかないしね。

日光に当たらないと、ビタミンDが不足するってテレビで言ってたよ。

ほどほどに浴びて骨を強くしないとね!


そんな中、部屋に入ってきたエルフが1人。

誰だ。俺の日光浴を邪魔するやつわ。

目を向けると、眼鏡をかけたイケメンエルフがそこにいる。

…なんだ、お兄ちゃんか。


入ってきたのは俺の兄の1人で第2王子だ。

眼鏡をかけており、賢そうな顔をしている。

チェスをくれたり、魔導書をくれたりしたのはこの人である。もっとください。次は将棋っぽいものがいいな。チェスの駒は積み上げにくいからさ。

髪は金髪で長く、きりっとした目が厳しさを感じさせるが、俺に色々プレゼントをくれるのでいいエルフである。


椅子から立ち上がるのはだるいので、顔だけ上げてどうしたのか聞く。


「いや。知っていると思うが、これから戦地へ向かうんだ。なにか知っていることがあれば教えて欲しい」


…めん玉飛び出るかと思った。

いや。戦地に向かうなんて初耳ですが??

え?なに、戦争が始まるの??

俺、この部屋から一歩も外に出てないのに知るわけなくない?

何か知ってることって何?何も知らないよ、俺。


兄の目が細くなる。

何も知らない後ろめたさから、俺は目をそらす。

土下座?土下座したほうがいい?

だがしかし、俺も王族だ。(責務を果たしたことはないけど)

王族である限り、はったりでもいいから余裕を見せろというのは母の教えだ。


「何も知らないよ」


「何か気を付けた方がいいこととかはあるか?」


だから知らないて。

兄はじっと俺を見ている。


…待てよ?戦で気を付けた方がいいことなんて、兄の方がよく知っているし、もし教えを求めるならば、王太子(長兄)とか歴戦の将とかに聞くんじゃないか?王太子とか、よく戦場で活躍してるって聞くよ?本人からだから本当かどうか知らんけど。

しょうがないのだ。引きこもっている俺に外の情報は入ってこない。

 じゃあ、そんな俺に求めていることはなんだ?日がな一日寝たり、日向ぼっこしたりしている俺に求めるものなんてあるのか??


悩んでいると、兄がじっと机上のチェス駒を見ていた。

一人でやることにも飽きて、1軍を積み重ねて遊んでいたのだが、ふとした拍子に崩れてしまい、そのままになっている駒たちだ。…あんま見ないでくんないかな、恥ずかしいよ。

兄は、それを見てなにやら考え込んでいる。


…もしかして俺がこのまま何も言わないと、チェス没収されるのかな??

まずいな。ただでさえ少ない娯楽が減る。

何とかしなければ。ひねり出すんだ、頑張れ!


 そういえば、窓から黒い雲が見えたな。

ワンチャン、雨降る?雲が黒いってことは雷も来るんじゃね??

まあこれの何が大変って、雨の水で土がぬかるんだり、雷が急に落ちたりすることだよね。

雨で体温が奪われるとか聞いたことあるし。

素人考えですが何か??


「ないなら」


眼鏡の兄がないならいいと言おうとしている所に俺は待ったをかけた。

娯楽を奪わせるわけにはいかない。


「水と雷に気をつけて」


どうだ?娯楽を奪うのは勘弁してくれ。

外には出たくないけど、暇なのもつかれる。


「わかった」


そう言うと、兄は去っていった。

チェスは没収されなかった。

ミッションは成功した?


俺は肩から力が抜けるのを感じ、そのまま窓によりかかった。

太陽はまだ俺を照らしている。


だがしかし、俺は疲れたので寝ることにする。

日が出ていても寝れるのはニートの特権である。

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