聖水をめぐる戦いが今始まる
ある男は悩んでいた。
なぜなら登山の途中、転倒し足をくじいたからだ。おまけに携帯を落とし、助けも呼べない状況だからだ。
男は腹を立てていた。
「くそっ!足は動かないしここが何処かもわからないし、最悪だ!神よ俺が一体何をしたって言うんだよ!!」男は叫んでいた。人が通るはずのない道に向かって。叫んでも叫んでも何も起こらず、ただ自分の声が反射して来るだけ。
「あぁ〜もう叫びすぎて喉が乾いた!水を探すしかねぇ!」男は這いつくばってその場を動き出した。
とにかく喉が乾いていたので五感を研ぎ澄まして水を探していた。
「ピチョ」何か音が聞こえた。さっきまで自分の声しか聞いてこなかった男にとってはそれを聞き取るのは難しいことではなかった。「なんだ?この音は水か?」男は這いつくばっているとは思えない程の速さで音の方へ向かった。
そこにはバケツのような桶に水が大量に入っていた。その水は透き通っており落ち葉一つも落ちていなかった。普通ならここで不自然に思うだろう。だが男は極限まで喉が乾いていた。そして男はバケツを持った。
「ついに見つけたぞ!これでなんとかしのげる!!生きれるんだ!」男はそう思い、浴びるように飲んだ。
?!????!??!???
男には電流が走ったような衝撃がきた。(なんだこれは?喉が限界まで乾いたときの水はこんな感じなのか?)その水は明らかに異様な感じを出していたが、飲み込むたびに何か快楽が脳から溢れ出していた。そのせいで飲むのを辞められない。味は何もうまくないなのに飲むのを辞められない。水は飲み込むたびに全身に快楽と電流のようなものを流し込まれていた。(あっ……がっ……うっ………)男はバケツ半分ほどの水を飲み終わると同時に倒れた。…………
ザクッザクッザクッと足音が聞こえ、その音と同時に男は起きた。
「おい、あんだ大丈夫が?」
何者かが訛りの効いた言葉で大体20メートル先から喋りかけてきた。
「あぁ…大丈夫だ。だが、今何がなんだかわかってない状況だ。もしかしたら新種のウイルスかも知れないから近づかないほうが得策だと思うぞ。」
「そういっだっであんた体中ぼごぼごだぁ。どれ、おらがなおじてやっからそこで待っでな。」
そう言い何者かが近づいてきた。
正直に言って顔もまだどんな顔かわからないやつに助けられらのは怖かったが、内心安心したのも事実だった。ザクザクザクとどんどん近づいてきた。ようやく顔が見える距離に来ると相手は少し薄汚れた60代くらいのオトコだった。
「今から傷があったら消毒するがらその部分は服脱いで待っどげよ〜」
オトコは背負っていたリュックサックを漁りながら近づいてきた。
5メートル、4メートル、3メートル
と少しずつ近くなって来るとともに男の心臓はバクバクと鼓動を激しく打っていた。
(何なんだ?この鼓動は?)
そう考えているうちにオトコは2メートル程の距離になっていた。それがこの男には前を見ずにわかった。
(まずい…これがなんだかわからないがとてつもなくまずいことはわかるぞぉっ!)
そう考えたときにはもう叫んでいた。
「今すぐ離れろっっ!すぐにだ!」
「あっ?なんで離れ…」
そうオトコが口にした頃にはもう遅かった。男から2メートル以内に入った瞬間オトコは跡形もなく蒸発した。本当にそこにオトコがいたのかそれすらも分からなかった。
「おいおい…なにがどうなってるんだよぉ!この水は一体何なんだよ!」
そう叫んだあと水がある場所を見た。しかしそこにはもう水はなかった。
「水が無い?ありえないぞ。俺は水を全部飲んでなんかいない!なのになんでこの水は消えさっているんだ?!」
情報が一向にまとまらない。
(とりあえずここは情報を整理しよう。まず俺は山を遭難した。それでその後水を見つけて飲んでみたら倒れて目が覚めると知らないおじさんが近づいてきて蒸発した。)改めて考えてみてわかったことがあるきっとあの゛水゛が悪い。ただ、それ以外のことはわからない。
「おめでとう。゛イハノ゛君」
誰かに自分の名前を呼ばれ振り向いた。だがそこには誰もいない。
「おっと、探す必要はないよ。イハノ君。」
「僕は心の中が読めるんだ。今君がまとめてくれたおかげでよくわかったよ。」
イハノは山に遭難した時点で厄日だとは覚悟していたが、心を読まれるなんて厄災は覚悟していない。
「お前はよぉ〜勝手に人の心を読むし顔も見せずにしゃべるなんてちょっとは礼儀がなってないとは思わないのか?」
「イハノ君は、人を殺しておいて礼儀を語れるのかな?」
「くっそ、あれは事故だ。何が起こったかなんて俺すら分かってない。」
イハノは色々なことが起こりすぎて混乱していたが、人が死ねば泣けるし、人が怪我すれば心配するような心は持っている。もし混乱していなかったら目の前で親切にし用としてくれた人が蒸発すればきっと悲しむだろう。そんなイハノにその言葉をかけるのはあまりに命知らずだった。
「てめぇ。今どこにいるか分かんねぇけどよぉそんなこと言われちゃ俺も黙ってねぇぜ!」
イハノには何か炎がオーラのように纏ってわれていた。
「おぉー君興奮しているとはいえこの時間で能力を使えるようになるなんて、凄まじい才能だねぇ」
「黙れ」
その瞬間イハノは声の方向を的確に判断し、顔面に蹴りを入れられた。「グフッ!あがっ!お前なぜここが!!」
「なんだか肌が敏感になってよぉー声で震える空気の方向に蹴りを入れたらお前がいただけさ」
相手は上に生えていた木の枝の上だった。そこまでの距離は軽く10メートルはあるだろう。そのせいで相手は油断していた。
「だめだっ!こいつの飲んだ゛聖水゛の量は俺の比じゃない!早く!早く逃げなければ!!」
相手は這いつくばるように逆向きに逃げた。
しかし満身創痍ではスピードは出なかった。
「おいてめぇ?自分で売った喧嘩だろ?さっき言ってた聖水の正体はなんだ?教えろ。」
イハノは炎のオーラを纏いながら半分拷問のような聞き出しをした。
「ぐっ…答えるしかないようだな…
聖水の正体は…」
「この世界を創った神だ。」
本編読んでいただきありがとうございます。初投稿なもので文章が何かおかしい!と感じた方はぜひコメント?の方よろしくお願いします!