第7話: 魔法の世界に
午後の眠たくなる時間帯に、アズ先生は教室に入っていく。
「基礎魔法の授業始めるぞー」
魔術学園と名が付いているが、魔法の授業ばかりではなく、数学やら社会などの授業があったのは驚きだ、基本的な中高生と生活は変わらないと説明されたが、間違いはないらしい。
「まずは、復習もかねて魔術師の基本属性からだ、火・水/氷・風・地・光・闇・無などに分かれている」
「生まれつきどの属性に適正があるか検査して、これまで魔法を使用してきたな。それに加えて、”固有能力“というのがある、これは個人が持っている能力だな、その能力を使って発動する魔法を、“固有魔法”というわけだ」
これは一般常識の話だ、一般生活においても魔法はそこら中にあるため、教育を受けていなくても分かる内容である。
「属性は色々あるが、無属性魔法は誰でもある程度は習得できるから、無属性が基本属性のやつは残念だな」
俺の方を見て言ってくる。無属性の風当たりは強い、歴史的にみれば、この国はいつも無属性の魔術師によって荒らされてきた。クーデターを起こされたのも、無属性の不遇な境遇からである。
そのため、国のトップたちに無属性はいない。ここは、黙って聞くことしかできなかった。
そんな重い空気の中
「アズ先生の固有魔法はなんですか?」
素朴な質問が飛び出した。
「まぁそれはあとで、ちょうど君たちに見せたいものがあってね。入ってきて3人の先輩たち」
そう言うと個性豊かな人たちが、教室に入ってきた。
まずは、天使のような輪っかが頭についており、神々しいオーラを発している人が話始める。
「2年生のフェルネス・アンテです。属性は光です、よろしくお願いします」
見た目通りである。
「では、固有魔法を見せてくれフェルネス」
そういうと大きな杖を持ち、詠唱し始めた。
『オンダ ディ ルーチェ!』
窓から見える運動場に異変が現れる。巨大な光の円が上空に浮かんでいる。
皆、口をぽっかりと開けて見ていると。
ズドドドォォォォォォン
上空の円から地上に向けて光の波動が打ち放たれた。いきなりラスボス級の技にクラスは唖然としていた。
そうすると次の上級生が話始める。
「2年生のヤヨイ・ヨカゼ。属性は風...よろしく」
早速何かの準備をしている。
するとバッグから分厚く2人がかりで持ち上げねばならないほど重い鉄柱を取り出した。
「今から...こいつを...斬る」
そう宣言すると、居合の構えに入った。
...
静寂が訪れる。一分ほどでその静寂は破れた。
「破ッ」
刀が鉄柱を捉える。スッと静かな音がなったと思えば、鉄柱にキレイな一筋の線が現れた。
これで終わりかと思えば、刀を納めた鞘が光始める。
「こいつの能力はわかりずらくてな、メルスちょっとこの鉄柱を持ち上げてみろ」
するとメルスはひどく驚いた。
「え、すごいなんで私で持ち上げれるの」
メルス1人で持ち上げることはできないはずの鉄柱がアルミのように軽くなっている。
「ヤヨイの能力は『虔斬』、物体から質量を奪ったり、奪った質量を分け与えることができる固有魔法だ」
「...」
ヤヨイは注目されて赤面する。
「よし、最後は俺だな 3年生のキャリオス・シェイタムだ よろしく!」
調子のよい先輩は着々と準備している。
「俺の固有魔法は........」
なんだろう言葉が聞き取れない。クラスの人々まどろみに堕ちてゆく。しばらくその状態が続き眠りについたようだった。
「ハッ!」
クラスの人たちが口をそろえて言った。目が覚めたようだ。
時計を見ても、あれから1分も経っていない。
「俺の固有魔法は『不在証明』人の意識を混雑させることができるんだ、強めにかけると幻影を見せることもできる。言い忘れていたが、こう見えて属性は水だ」
「相変わらずキャリオスの固有魔法は心臓に悪いな」
アズ先生は苦笑いしている。
「先輩たちヤベェ」
その圧倒的な魔法に驚くばかりだ。こう見れば“超能力”と言っても過言ではない、人それぞれに固有能力が備わっているのだ。
アズ先生は再び教卓の前に戻る。
「っということで3人にはありがとう、そういえば俺の固有魔法だが...」
キャリオスに向かって何かを唱える。
「が..ガハ ウワァァァァ」
突然キャリオスは呻きだす。
「俺の固有魔法は『狂気に導かれし者よ』だ。対象の知能を下げるかわりに狂気的な力を付与することができる。
このように属性に関わらず色々な能力があるぞー」
棒読みで言っているがかなりヤバめの能力である。
「ちなみに固有魔法といっても、それは魔法の”特性”だともいえるな、だから訓練によっては、たくさんの技を編み出すこともできるぞ。まぁこの話はまだ聞き流していてもいいかもな」
「ガルルルルル」
「じゃあキャリオスを直してくるから今日の授業はこの辺で」
やっと今日が終わった。
俺の知っている属性はまだ発見されていないらしい、なんせ過去の世界だ。正体がバレないように慎重に魔法を使わないといけない。だが、思っていたよりこの世界は愉快だな。