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ブレイバーズ・メモリー(2)  作者: 橘 シン


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19-5 初めての買い出し護衛任務1


「あたし、向こうで昼食たべるから」

「ああ」


 あたしは自分の分の食事を持って多目的室を出た。


 向こうっていうのは兵舎。

 

 たまにだけど、兵士達と食事をする事にしている。

 

 コミュニケーションは大事だと思うんだよね。

 シュナイダー様の受け売りだけどさ。


 館を出て竜騎士隊の兵舎へ。


 ドアを肘で叩く。


「隊長。どうぞ」

 戸口に出て来たのはミレイ。

「悪いね」


 あたしは兵舎へ入ると、誰が言うまでもなく席が設けられる。


「先に言ってくれれば…待っていたんですが」

「いいのいいの。思いつきだったから」

「思いつき?」

 ガルドは不思議そう顔をした。


 隊員達を雑談を交えつつ食事をする。


 よくしゃべるのがサム。

 それつられてライノやステイン、レスターがサムに合わせる。


 比較的寡黙なのがガルド。

 全くはなさないわけじゃない。

 こっちから話しかければ話すし、向こうから話してくる事もある。


「ウィル様とリアン様の喧嘩ってどうなったんです?」

 ガルドが話しかけてきた。

「もう仲直りしたよ」

「そうですか。長引かななくて良かったです」

「あの二人は、自分たちが領主と補佐官だって自覚あるし大丈夫だよ。あたしなら、手が出てめちゃくちゃになるけどね」

「で、懲罰房行きっと」

 レスターが続ける。

「それは昔の話だろ」

「なんの話ですか?」

 ミレイが話に加わる。

「隊長が懲罰房に入ったことがあるって話さ」

「懲罰房?隊長が?」

「懲罰房ってことは、何かやらかしたからですよね?何をしたんですか?」

 ライノとステインも興味を持ち始めた。


「やめとけって…」

「え?」

「聞いてはいけない事もある」

 サムとスチュアートが意味ありげに首をふる。

 それは見ていたレスターが吹き出した。ガルドはため息を吐く。


「何なんです?」

「若かったのさ。何も分かってなくて…自分が何故ここにいるのか、何故いることができたのか。そんな事に気づいたのが、あの時だった…」


 ライノ、ステイン、ミレイは何のことがわからずにお互いを見る。


「いいですよ、もう」

 ガルドは話を終わらそうとする。 

 こいつは事の顛末を知ってるからね。

 目の前で見てたし。


 何かって?それは今度話すよ。


「いつか話すよ。話は変わるけど、明日の買い出しの護衛なんだけど、五人で行って来て」

「五人?」

「下から、五人ね」

「お前らだけってことだ」

 

 レスターとガルドはサム達を見る。


「僕達だけで?」

「そう」

「五人もシュナイツを離れていいんすか?」

「そっちかよ…自分達だけだってことに不安はないのか?」

 レスターが五人に聞く。

「いやぁ、大丈夫でしょう」

 サムは笑いながら答えた。

「レスター、こいつに聞くのは間違いだぜ」

 ガイドはため息を吐く。


「まあ、いいんじゃないの。じゃあ、任せたよ」

 あたしは 空の食器を持って立ち上がった。

 サム達も立ち上がって敬礼する

「了解しました」


「あたしはこれで。午後はいつも通り。自主訓練ね」

 そう言って兵舎を出た。


 兵舎を出てすぐにガルドに呼び止められる。


「隊長」

「あー、何?」

 ガルドはドアを後ろ手で閉め、兵舎を離れる。


「いいんですか?あいつらに任せて」

「いいんだよ。いつまでもおんぶにだっこじゃダメでしょ」

「ですが…」

「ポロッサ程度なら、サクッとやってもらわないと。いつかは上に立つ。それを見越しての事だよ」

 あたしの言葉を聞いた彼は渋々といったかんじで頷く。


「ウィル様の許可は?」

「兵士全般の事は一任されてるから、いちいち取らないって」

「そうですか…」

「心配ならあんたがサポートしてやりな」

「俺は助言とか苦手だって知ってるでしょ。そういうのはヴァネッサ隊長のほうが…」

「そんなんだから、あんたは班長止まりだったんだよ。竜騎士のキャリアはあんたのほうが長いのに」

「…」

「ごめん、言い過ぎた…」

「構いません。言ってることは合ってます」

 ガルドはそれ以上何も言わず、敬礼して兵舎に帰っていった。

 

 ガルドは、いち竜騎士としては、あたしなんかより上なんだよ。

 だけど、竜騎士に限らず兵士は集団で動く。

 

 すべての兵士を一人で統率はできない。

 班長や小隊長なんか必要。


 新人が配属されたら、育てないといけない。

 それと苦手としてるのがガルド。


 ガルドはあたしより先輩だって聞いたでしょ。

 一番隊に配属されて最初に配属されたのがガルドの班だった。

 

 ガルドよりも他の先輩に教えてもらうほうが多かったよ。

 最初、あいつに嫌われてたのもあるだろうけど。

 

 

 ポロッサまでとはいえ、隊長達抜きで護衛するのは緊張する。


「任せたぜぇ、班長ぉ」

 と、サムは気楽に言う。

「次の時は君がやるんだぞ」

「わーってるよ」


 当日。

 薄曇りの中、準備を進める。


 竜に鞍を付け、革鎧を身付けた。


 隊長達からは何も助言はない。

 まあ、ポロッサまで行って帰って来るだけだからか。

 

 知ってる道だ。だからといって気を抜いてはいけない。


 護衛対象は、荷馬車二台。

 料理長のグレムさんのと、領民の荷馬車。


 荷馬車はすでに門の前に用意される。


「今日は若い連中だけなんだってな」

「はい。不安があるでしょうが、全力でやらせていただきます」

「不安なんてねえよ。五頭連れだしな」

 グレムさんはいたって平静。


「竜騎士五人とは、贅沢だなぁ」

 領民側の荷馬車にはベックさんが乗っている。

「賊の心配はいらないっすよ」

「賊もしっぽ巻いて逃げてくぜ」

 ベックさんも心配してはいないようだ。


「準備はいいか?」

「はい」

「いいぜ」

「サム。先頭を行け。ライノとステインはグレムさんの荷馬車の左右に」

「は~い」

「サム。気の抜けた返事はやめてくれ…。ベックさん続いてください。僕が横につきます。殿はミレイ」

「了解しました」

 

 僕達はポロッサへと出発した。


 早朝に出発し、途中でグレムさんが作ってくれた朝食をいただく。


 先頭のサムをミレイと入れかえる。


「周囲を警戒しろよ」

「はい」

「ミレイ。先行し過ぎだ。後ろにも気を配れ」

「はい、すみません!」

 

 ポロッサへ道は下りつつ左曲がりなっている。

 川のせせらぎを聞きながら、その道を進む。


「なあ、ミレイ」

「なんですか?」

 ステインがミレイに話しかけた。

「カリィさんとは、どこまで行ったんだよ」

「ステイン、お前…」

「どこまでって…どこにも行ってませんよ?」

「そういう事じゃないって…手を繋いだとか、抱きしめたとか」

「そ、そんな事できるわけないじゃないですか!。人目があるんですよ」

 ミレイは慌てて否定してる。


「付き合ってるんじゃなかったのかよ」

「そんな段階じゃ…ないです…そうなりたいですけど…」

「おお。白状したな」

「何言わせるんですか」

「自分で言っといてそれはないぜ」

 そう言ってステインは笑う。


「やめろ、ステイン」

 僕はステインに呼びかけた。

「あ、はい…。でも、スチュアートさんも気になりません?」

「なったとしても、任務中に女性の話はしない」

「賊なんて出て来ませんよ」

 ステインは余裕の態度。


「そうじゃない。竜騎士のジンクスがあるんだ。任務中、戦闘中に女性の話をすると、死神がよって来るってな」

「死神?…まさか…」

「そうなんですか?サムさん」

 ライノがサムに聞く。

「ホントだぜ。一番隊の先輩から聞いたし、教官からも聞いた」

「聞いた話でしょ?大丈夫ですよ」

 ステインは笑い飛ばす。

 

 信じる信じないは個人の自由だから、別にいいが。

 

 僕はどうかって?。

 僕は信じてるかな。

 

 確証がなければ信じない性格だが…。

 ブリッツ教官から戦時中の話を聞いてから信じるようになった。


 結婚間近や彼女と将来をどうのこうのと話をしてる者から死んでいったと。

  

 そんな事は自分も仲間にも起きてほしくない。


「女性の話に限らず私語は慎んでくれ」

「わかりました」

 それ以降ステインは余計なことは話さなかった。

 



Copyright(C)2020-橘 シン

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