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ブレイバーズ・メモリー(2)  作者: 橘 シン


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17-2


 窓から差し込む光。


「朝か…ふあぁ…」

 僕は起きて背伸びをする。

「あー…はっ!。しまった!」

 のんびりしてちゃいけない。


「タイガ、朝だよ!」 

「ああ…そう…」

「換金に行かないと!」

「柑橘ならオレンジがいいな…」

 これはダメだ…。


 一人で行こう。


 支度を済ませ、部屋を飛び出る。


「おはようございます!」

「お、おう。おはよう」

 受付のテオさんに挨拶し外へ。


 ギルドへと走る。


「ギルドは…そんなに混んでない」


 良かった…。

 並んでいるのは、十数人くらいか?。


 最後列に並ぶ。


「はあ…はあ…」

「おはようさん」

「はい…おはようございます…」

 前の並んでいた人に声をかけらられた。

「若いそうだけど、あんたも商売やってるの?」

「いえ、商売はやっていません」

「そうかい」

「ちょっとギルドに用事がありまして…」

「そう」


 ギルドはまだ開いていないが、続々と人が並んでいく。


「今日も混むなぁ」

「みたいですね」

「ここのギルドは混むわりに小さくてな。大きくすりゃいいのに」

「そうですね」


 少し不便らしい。

 確かに昨日と今日の込み具合を解消するにはもう少し規模を大きくしてもいいかもしれない。


「おっと開いたな」


 ギルドが開き、並んでいた人達が吸い込まこれていく。


 僕も中に入ったが、どこに行っていいのかわからず左右をキョロキョロと視線を泳がす。

 とりあえず、受付と書かれた窓口に行く。


「いらっしゃいませ。ギルドにようこそ」

「あの、金券を換金したいのですが…」

「はい、それでしたら四番の窓口へどうぞ」

「四番ですね。ありがとうございます」


 四番窓口へ向かう。


「いらっしゃいませ」

「金券の換金をお願いします」

「はい」


 竹筒から金券と証明書を提出する。


「うーん…」

 窓口の人、女性は金券と証明書、そして僕の順番に何度も見比べる。

「あの、何か?」

「これ、本物ですか?」

「はい、もちろん本物です。シュナイツの領主、ウィル・イシュタル様のサインが入った証明書もそこに」

「ええ、ありますねぇ…」

 と言いつつ訝しげに僕を睨む。

「最近、多いんですよね、偽造金券が…」


 僕は偽造金券を持ち込んだと疑われているようだ。


「ちょっと、お待ちいただけますか?」

「はい」

 窓口の女性は奥へと行って、目上らしき男性と話し込んいる。


 参ったなぁ。

 疑われるなんて思いもしなかった。

 

 換金出来ません、なって拒否されたらどうしよう…。

 買い物も宿の支払いもできない。


「お待たせいたしました」

「はい」

 窓口に来たのは男性。


「申し訳ありませんが、あなた自身の身分を証明するものはありますか?」

「あ、はい。あります」

 僕は、シュナイツの南にある警備隊に見せた書類を取り出す。

「えっと…。これです」

「拝見します…」

 男性は書類を読み始めた。

 さっきの女性も後ろから読んでいる。


「なるほど…わかりました。書類はお返します」

「はい。あのこれで信用してもらえますか?」

 書類を鞄にしまった。

「良いでしょう。換金いたします」

「ありがとうございます」

  

 良かった…。

 これでダメなら、ウィル様本人が来ないといけないんじゃないか。


「公的文書の偽造は重罪となります。その事を十分のご理解ください」

「はい」

 偽造なんて事はしないし、できない。


 いくつかの書類にサインし換金は無事に済んだ。


 すべて銅貨中心に換金した。

 量は多くなるし、重い。

 でも、シュナイツ周辺で銀貨は使う事は滅多にないだろう。

 

「こちらになります。お確かめください」

 

 窓口にお金が入った麻袋が、ドンと置かれる。


 中身を確かめた。

 大丈夫。五千ルグある。


「ありがとうございます」

 窓口の男性と女性に頭を下げた。


 お金が入った麻袋を鞄に入れたが、結構重い…。

 ベルトが切れないか心配。

 

 鞄を下げずに抱きかかえて宿へと帰る。

 

 こんなに大金を持った事がないから緊張して居心地が悪い。


 宿へ帰ると、僕達以外のお客さんが受付で支払いをしていた。

 そして食事処へと向かう。


「ありがとうございまたぁ!」


 たぶん僕が最後だろう。


「お、支払いか?」

「はい」

「いくら換金して来たんだよ」

「五千ルグです…」

 僕はテオさんに顔を寄せ、小声で答えた。

「おお…中々の大金だな」

 テオさんはさほど驚かない。

 まあ、宿屋の主人だしね。


「確かにお代はもらった。ここに名前を書いてくれ」

「はい。…タイガは起きて来ましたか?」

「ああ、朝食食べてるんじゃないか」

「え?…なんだよ、もう…」

「お前も食べに行け」

「はい」


 寝坊したくせに、朝食は僕より早いなんて…。


 食堂へ行く。


 タイガはテーブル席にいた。


「タイガ…」

「よお、ご苦労さん」

「ご苦労さんじゃないよ…大変だった…」

「何かあったのか?」


 ギルドで信用されずに、偽造の嫌疑をかけらられた事を話した。


「マジかよ。ひっでえな。証明書見せたんだろ?」

「うん、もちろん。警備隊に見せた身分書類も見せたよ」

「そこまで?どんだけ信用ねえんだ、俺達…」


 僕達はまだ若かったってことがあるんだと思う。


「とりあえず換金は出来たし、宿代も払ったから…」

「そうか。お疲れ」

 タイガと拳を合わせる。


「おはようございます。朝食です」

 ジーナが朝食を持って来た。

「おはよう」

「あんがとさん」


 朝食は細長い円筒形のパン。こんがりきつね色。

 それを縦に背割りして、ソーセージと野菜を挟んであった。


「いただきます」

「うまい!」

「いいね」

 

 昨日のシチューをパンに塗ってるみたいだ。

 それちょっと辛い。辛子かな。いいアクセントなっていて美味しい。


「美味しかった…」

「だね」

「そろそろ行くか」

「ああ」


 僕達は立ち上がる。

 

「お兄ちゃん達、もう行くの?」

「うん、仕事があるから」

「ちょっと待って」

 ジーナはそう言うと厨房に入って行った。

「なんだろ」

「さあ」


 ジーナはフレデリカさんとともに戻ってきた。


「もう行くのかい?」

「はい。朝食美味しかったです」

「そう、ありがと。ウィルさんに手紙を届けてもらえる?」

「もちろん、いいですよ」

 手紙を受け取った。

「それとこれ」

「これ?」


 フレデリカさんから受け取ったものは、麻紙に包まれた物が二つ。

 大きさとと重さに覚えがある…。


「昼食だよ」

「え?昼食?お代は?」

「いらないよ」

「でも…」

「大したものじゃないから。さっき食べた物と同じだよ」

「さっきのもう一回食えるかよ?あざっす!」

 タイガの勢いよく頭を下げる。

「ありがとうございます」

 僕も頭を下げた。


「それじゃこれで」

「がんばりなよ」

「はい」

「じゃねぇ」

 ジーナが手を降ってくれた。


 宿屋コールマンを後にする。


「買い物行くか?」

「いや、まずは手紙を出す」


 集配所に行き、手紙とその分の料金を支払った。


「次は薬類を買おう」

「おう」


 薬類は市場ではなく、店舗で売ってるらしい。

 場所は買い物一覧の書類に書かれたいる。


「この辺らしいんだけど…」

「あれじゃね?」

 タイガが指差す方に店があった。


「失礼します…」


 店内は開店直後なのか、誰もいない。

 お店の人も。


「おーい。客だぜ!」

「言い方…」


「はーい!今降りてくよ!」

 二階から人が降りて来る。

 声からして男性のようだ。


「すみませんねぇ」

「いえ」

「いらっしゃいませ。ご用は、何をお求めですか?」

「これを」

 品目が書かれた書類を見せる。

「ほお…なるほど」

「ありますか?」

「全部ありますよ」

「そうですか」

 

 それは良かった。

 今すぐ必要じゃないけど、ないと困るものばかりだったから。


「じゃあ、それをください」

「わかりました。少々お待ち下さい」


男性は店の棚を巡り、品目を揃えていく。


「あとはこれっと…お待たせしました」

「いくらになりますか?」

「千二百ルグです」

「え?」

「はあ?高すぎね?」

「総額で千いかないと聞いて来たですが…」


 価格交渉できると言われたけど…どうすれば…。


「原料の価格変動があるからね。今はこれくらいだよ」

「変動があるのか…」

「おっさん!俺達が素人だからって、ぼったくってんじゃねえよ」

「そんなつもりは…こっちも商売だから」

 男性は困ったように肩を竦める。


「うちで買わなくても他で買ってもいいですよ」

「他か…」

「あんのかよ?」

「さあ、ご自分で探してください」

 男性は笑みを浮かべつつそう言う。

「くっそ…」

 タイガは殴りかかりそうな表情だ。


 男性は他で買ってもいいと、焦りもぜずに言ったいうことは近くにここ以外にはないんだ。

 

「千ちょうどではダメですか?」

「うーん、無理だね」

「まけろよ」

「こっちも商売だからさ」

 損したくないだろうし、利益を求めるのが商売。

 悪いことではない。


「ユウジ、やめようぜ。ウィル様には高すぎたからやめたって報告しよう」

「でも、必要なものなんだよ」

「ぼったくりから買う必要ないって」


 お金がないわけじゃない。

 買えるには買える。でも、予算を超えている。


「戻ってさ、クァンさんに聞いてみようぜ。安いとこ知ってるかもしれない」

「うーん…」

 クァンさんに聞いてもどこまで行くのかわからないしな。


「ちょっと君達、クァンさんの知り合いなのか!?」

 男性は驚きつつ訊いて来た。



Copyright(C)2020-橘 シン

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