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ブレイバーズ・メモリー(2)  作者: 橘 シン


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66/142

16-7


「おはようございます」


 多目的室にはウィル様達の他にアリス様とジルさんもいた。


「おはよう。早速だが、これがリカシィで買って来てもらいたい一覧だ」

 ウィル様から品目が書かれた書類をユウジが受け取る。

 書類は二枚。


 品目ごとにどういう物なのか、買わなければいけない量など詳しく書かれていた。


 それと品目については総額の予想と、言い値で買わずに価格交渉できる事を言われた。

 

「君達に渡した鞄に入る思うけど、一応この麻袋を渡しておく」

「はい」

 麻袋は俺が預かった。


「で、お金なんだけど…」

 ウィル様がくれたのは銅貨や銀貨じゃなかった。

「この紙は何ですか?」

「王国が発行した金券だよ」

「きんけん?」

「うん。これで五千ルグ分の価値がある」

「ええ!?」

「マジで!?」


 金券にはよく分からない模様がビッシリと描かれている。

 偽造を防止するための物らしい。

 

「これで買い物をするんですか?いや、出来るんですか?」

 

 こんなので買い物してる人見たことない。


「出来るよ。あまり一般的じゃないけどね。今回はギルドで換金してもらうんだ」

「はい」

「ギルドの窓口に行って換金したいと言えばしてもらえる。僕のサインが書かれた証明書もいっしょに出してくれ。偽造されたものでないと証明するものだから」

「わかりました」


 金券は竹筒に入れてもらってしっかりと栓をした。

 濡らしたりしたら、金券としての価値はなくなる。


 竹筒には買い物一覧の書類も入れた。


「あ、あの。五千ルグも預かっていいんすかね…」

 変な汗が出てきたんだ。


「あんた達を信用してるから、預けるんだよ」

「はい…」

「自信をもっていい」

 ヴァネッサ隊長はそう言ってくれたけど、信用されている実感はまだない。


「アタシのばあちゃんに気に入られたなら、信用できるヨ」

 

 それは言えてるかもしれない。

 

 ウィル様はからは手紙の配達も頼まれた。


「リカシィで泊まるなら、宿屋コールマンって所に行って」

「コールマンですか?」

「ああ。僕がよく使っていた宿屋なんだ」


 常連ってやつ。 

 コールマンさんには色々お世話をしてあげたらしい。

 ウィル様本人は、大したことはしていないと話す。


「この手紙を渡しておく。これを見せれば、僕の知り合いでシュナイツの者だと信用されるはずだ。それに少し安く泊まれると思う」

「そいつはありがてえ」


 コールマンさんは食事処もやっててそっちも安くなるとウィル様は話す。


「ありがとうございます」

「よろしく頼むよ」

「はい」


「僕からは以上だ。みんなはどうかな?」

 ウィル様はそう呼びかけたけど、特に何もなかった。

 激励だけ。


「頑張って…」

 アリス様が眠たそうな表情のまま、そう言ってくれた。


 無理して起きていたわけじゃないんだろうけど、心苦しい。


「はい。行ってきます」


 シュナイツを出発。


 ワーニエによって食料を調達。

 お金は前回、ウィル様にもらったのが余っていたのでそれで支払った。


 そして、御神木へと向かう。


「いたいた」


 クァンさんは御神木のそばに座っていた。


「クァンさーん!来たぜ!」

「クァンさんを手伝う許可もらえましたよ」


 俺達の言葉に微動だにしないクァンさん。


「どうしたんだろ?」


 クァンさんに近づき、顔を覗きこむ。


「クァンさん?」


 クァンさんは少し息が荒く、顔色も良くない。


「はあ…はぁ…」

「クァンさん、大丈夫ですか!?」

「ああ…お前達か…」

 薄っすらと目を開け俺達を見る。

「大丈夫かよ」

「横になってください」

「大丈夫じゃ…」

 どう見てもそうは見えない。


「水を汲んできてくれ…」

「おう」

 俺は、クァンさんの竹製の水筒を掴み水辺に急ぐ。


「ほら、汲んできたぜ」

「すまんな…」

 そういうと鞄から丸薬を取り出し、水で流し飲む。


「横になったほうがいいですよ」

「大丈夫じゃて…すぐに良くなる」

 

 クァンさんの言う通り、息の荒さは良くなっていった。

 だけど、顔色は良くないまま。


「ばあちゃん、もしかして病気なのか?」

 初対面の時も咳をしていたっけ。

「まあな…」

「お医者さんに見てもらいましょう」

「俺達がシュナイツに連れてってやるよ。あそこにはすげえ先生がいるんだぜ。サウラーンから来たんだってよ」

「医者に診せてどうにかなる病気じゃないんじゃよ…」

「でも…」

「アタイの事はいいから」

 クァンさんは気強く断る。


「アタイを手伝う許可は得てきたんじゃろうな?」

「はい。ちゃんともらってきました」

「じゃあ、さっそく…」

 そう言って立ち上がろうするが、よろけて立てない。

「無理しちゃだめだって」

「この程度で…」

 クァンさんは自分を鼓舞するように、膝を叩く。


「クァンさん、無理しないでください」

「ちゃんと手伝うから。まずは休んだ方がいいって」

「ああ…わかった。なんとも情けないの…」

「そんな事ねえって」


 森の中を歩いて薬草を探す歳じゃない。

 引退してるのが普通だ。


「俺達、リカシィまでお使いを頼まれているんだ」

「お使い?」

「ああ。薬とか、その他諸々」

「それを先に済ませてきますから、クァンさんはそれまで休んでいてください」

「そうか…じゃあ…すまないが寝蔵まで連れてってくれ」


 クァンさんのいう寝蔵とは、御神木の西側にあり雨風をしのげる小さな掘っ立て小屋。

 そこまで俺がクァンさんを背負っていった。


「ここか…」

「タイガ、クァンさんを中に」

「おう」


 小屋の中は寝床と小さな囲炉裏だけ。

 最低限のもの。


 クァンさんを寝床の寝かせて壁にかけてあった上着をかけた。


「じゃあ、俺達行ってくる」

「できるだけ早く戻って来ますから」

「ああ…」

 力なく答えるクァンさん。


「行こう、タイガ」

「うん…」


 クァンさんが心配だったが、俺達にも仕事がある。

 クァンさん一人を残しリカシィへ向かった。

 

 ここでクァンさんを一人したことが、間違いだったと気づき、すごく後悔する事になるんだ…



「あそこで、あれを予想するのは難しかったし、予想できたとしても結果は変わらなかったと思う」

「そんな事ねえって!」

「だってこの時、もうクァンさんは…」

「そうだけど…ミャン隊長ともっと話はできただろ?」

「うん、そうだね…。ミャン隊長には本当に申し訳ないことをした」



 

エピソード16  終わり

Copyright(C)2020-橘 シン

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