表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ブレイバーズ・メモリー(2)  作者: 橘 シン


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

25/142

13-5


 戦いの幕が切って落とされる。

 

 よく聞く表現です。仰々しい。


 実際は、仰々しいというよりも重々しいという表現が正しいです。


 わたくしは言うようのない重圧を感じていました。

 

 ゲオルグの殺気が体に突き刺さる。


「来ました!」


 手下達は真正面からこちらに横一列で走り込んで来ました。


 ヴァネッサ隊長の指笛の合図で、弓兵隊の視界遮らないよう前隊がしゃがみ込む。


「よし、放て!」


 そして、弓兵隊の全体射撃。


「狙いを定めなくていい。とにかく射ちまくれ!」

 ゲイルが叫びつつ、自分も矢を放っています。


 わたくしも弓を構え矢を放つ。


 これで手下達を倒せすわけではありません。

 足止めにすらならないでしょう。


「当たれば、少しは技量を落とせる。そう期待したいね」

 ヴァネッサ隊長はさほど効果がない事は分かっているでしょう。


 予想通り、手下達は怯みもせず向かって来ました。

 

 矢をナイフで弾き、体に突き刺さっても引き抜く。平然として。


「エレナ、お願い」

「了解。時間的に一度が限界」

「ああ、分かってる」


 エレナ隊長の足もとに魔法陣が広がりました。


「形状選択…単発威力調整…射出範囲扇状…最大初速…準備完了」

「弓兵隊、しゃがめ!」

 弓兵隊は射撃を止め、姿勢を低くします。


「やっちゃって」

「了解」

 

 エレナ隊長は杖を真上に掲げる。

 すると頭上に無数のつららが出現。


「おお」

「わぁお」

 魔法士隊から驚嘆の声。


「アイシクルレイン」

 と、エレナ隊長が静かに言うと無数のつららが手下達に向かって矢よりも遥かに速い速度で一斉に飛んで行きました。


 手下達は最前衛からあまり距離がありません。


 エレナ隊長の魔法には手下達も驚き、足を止めました。

 その彼らに無数のつららが突き刺さる。


 咄嗟に腕を交差させ、身を守っていました。


 体の前面につららがいくつも突き刺さる。


「よし。前衛!出ろ!」

「了解!」

「うおおお!」

 

 ミャン隊長とガルドさん、レスターさんが中心の前衛が手下達に攻め込みました。

 しかし、手下達はすぐに立ち戻ります。

 

 体に突き刺さってつららを抜いたり砕いたり。


「アタシが相手だ!行っくよお!」

 ミャン隊長が先行して手下達に詰め寄る。

 ガルドさん、レスターさん達の班も続きます。

 

 流石、ミャン隊長。

 一般的は吸血族とはいえ、互角に渡り合っています。

 他の皆さんも、うまく連携を取り戦っています。


 ですが、実際に相手をしてるのは手下三名のみ。残りは左右から、攻め込ん出来ます。 

 

「前衛とはやらないか…。あくまでもあんた達が目的みたいだね」

「そのようです」


 左からは四名が、右からは三名が攻め込んで来ました。


「ライア!スチュアート!左へ!」

「了解だ!」

「了解!」

 ライア隊長が混成班半数とともに左から手下達を対応しました。

 


「俺は右に行きます」

「ああ、いいよ」

 ヴァネッサ隊長はそう言ってゲイルさんの背中を叩き送り出す。

 彼は右の手下達に対応しているサムさんがいる混成班に加わりました。

 

「弓兵隊はよく見て、高く飛び上がった所を狙い撃ちしな」

「了解!」

 

「ヴァネッサ…」

「魔法士隊はまだだよ。焦らずに準備して」

「了解」


 安易に紫色の光を使えば、こっちの意図がバレちゃうからね。

 もう少し体力を奪ってから。


 手下達とは刃を交えず、付かず離れずで取り囲んでいく。


 飛び越えようする者は矢で狙い撃つ…それから。


「おっと、そうはさせないぞ」

 ライアがふわりと飛び上がり手下の足首を掴んで封じる。


 あたしはゲオルグが直接乗り込んで来るんじゃないかと、ずっと奴を見ていた。

 奴は腕を組んだまま、ただ見てるだけ。


 手下達は囲まれ不利な状況。

 指示するわけでもなく、ただ傍観してるだけ。


 自分の手下だというのに…。


「手下を助ける気はないみたいだね」

「単なる手駒としか思っていないのでしょう」

「同じ同胞なのに?」

「ゲオルグに他者を気遣う感情はありません」

「ますます嫌な奴だねぇ」


 とりあえずゲオルグは無視して、手下を片付ける。


 手下側が不利だが、怪我人がどうしても出てしまう。


「怪我したやつは下がれ!」


 重傷者はいない。が、当然ながら戦力は落ちる。


 もう少し手下達の体力を奪いたいけど。このあたりが潮時かな。


「魔法士隊。出番だよ」

「了解」


 一斉に目を潰すのが理想だけど、吸血族は分散してる。

 動きが速い吸血族を誘導するのはちょっと難しいね。


 こっちも魔法士を分散するしかない。


「あんた達を前に出したくはないんだけど…」

「そんな事は言ってられない」

「俺は全然構いませんよ」

「あんただけでしょ…」

 ベッキーがエデルに呆れている。


「エレナは正面。エデル、ベッキー、ナミは左。リサ、ウェインは右。いいね」

「はい!」

「行って!」

 魔法士隊六名と班員が三方向へ散る。


 基本的に魔法士は前へ出さない。そうシュナイダー様から教わった。


 魔法は発動まで時間が必要。

 威力が低くければ時間はかからないが、それでもわずかに時間差が生じる。

 そこを敵に突かれる可能性がある。


 エレナぐらいの魔法士なら、瞬間的に発動させる事はできるだろうが、限界突破を一度もしていない隊員では、それはできない。


 今回は、仕方無い。

 紫色の魔法は距離が離れるとダメだってんだからね。

 

 連携訓練をしていなかったのが悔やまれる。

 見学は、させていたんだけどね。見てるだけじゃ身に付かない。


 いや、連携訓練は昨日まで突貫でしたんだよ。

 でも、付け焼刃だと思う。

 

「ぶっつけ本番か…」


 これは反省点だ。

 想定していませんでした、なんて言い訳にもならない。



 魔法士は前へ出てはならない。

 誰がそう決めた?。


「常識に囚われはいけない」

 シンシア先生の言葉。


 広い視野で、視点で探求する。それが魔法。

 前に出て戦う魔法士がいてもいいのはではないか。


「はあ…はあ…」

 

 正面、ミャン達がいる方に走る。

 

 普段、運動なんてしないからちょっとの距離しか走っていないのに息切れが…。

 これでは足手まといだ。


 やはり、魔法士は前へ出てはいけないのかもれない…。

 

「大丈夫ですか?」

 私についている兵士が声をかけてきた。その兵士は息切れなどしていない。

「問題、ない…」

 と、言っておく。


 ミャン、ガルド、レスターがいる正面の集団に到着。


「ミャン!」

「お?」

 彼女を呼び寄せる。

「どうしてきたのさ?」

「作戦通りでしょう?」

「そうだっけ?」

 とぼける彼女。 

 これだから、私は彼女が嫌い。


「魔法で目を潰す。私のそばに連れてきて」

「無理言わないでよ。こっちは戦うだけでいっぱいだよ。ガルド!レスター!」

 彼女は手下の交戦中。

「待ってください!なんとかとします!」

「ちょこまかと、うざい野郎だ!」

 

 こんなに動き回れてはタイミングが掴めない。

 動きを抑える魔法もあるが、あれも動き回れては難しい。


「じゃあ、一か八かやってみるか!」

 そう言ってミャンは戦いながら、器用に着ていた鎖かたびらを脱いでいく。


 何をする気なのか?。


 足払いで手下を転ばせ距離を取り、私の前に来る。


「エレナ、準備はいい?」

「え?ええ、いつでも」

「よぉし」

 彼女は鎖かたびらの下に着ていたシャツ前をはだける。


「ねえ!みんな、見て!どう?アタシのオッパイ」

 そう言って、シャツの前を開けて見せる。下着はつけてある。


 え?…。

 

 あなた、何をやっているの?。

 と、思ったが…。


 彼女の前にいる手下達が彼女見て、動きを止めていた。

 手下達だけじゃなく、味方もだけど。


 はっ!。


 今か!?。


 エレナの意図を瞬間的に理解した。

 手下達は全員が影にならず、こちらを見てる。


 私はすぐさま杖をエレナの後ろ、肩から突き出す。


「照射!」

 

 紫色の光を発動。

 手下達向かって照らす。

 光が顔に当たるよう調整。


「ぐあああああ!」

「痛ってえええ!」

「目がああ!」

 手下達は顔をおさえ叫ぶ。


「よっしゃ!」

「押え込め!」

 ガルド達が手下達に飛びかかり押え込む。

 そして心臓を貫いた。


「もらったああ!」

 ミャンも短槍で突撃する。

 そのまま手下の胸に短槍を刺し倒し込む。


「しっかり心臓を刺せよ」

「どうだ、やったか…」


 手下のマスクを剥ぎ取る。


「やったぜ。見てみろ」


 手下は砂に変わっていた。

 

 そう吸血族は死ぬと砂になり、土に還るのだ。


「やったね。作戦成功っト」

「成功?あなたの取った行動は危な過ぎる」

「そう?」

 彼女は歯牙にもかけない。


 あの様な無防備な状態で手下が突撃してきたらどうしていたのか。

 

「とりあえず、シャツのボタンを止めて」

「あい」

「これも」

 鎖かたびらを渡す。

「どうもでス」


「終わった…」

「まだ終わってません」

 レスターがヴァネッサにサインを送っていた。

 

 私達の後ろには集団が二つ。どちらもまだ交戦中。


「二手に分かれる。おれとエレナ隊長はサムの方へ」

「俺とミャン隊長はスチュアート方だな」

「ああ。まだ終わってない。気を抜くなよ」

 レスターが班員に呼びかける。

「了解!」



 正面の手下は制圧完了。

 レスターがサインを送ってきた。


「よし」

 あたしは二手に分かれて、まだ制圧できない集団へ行くよう指示する。


「はあ…」

 アリスがため息をはく。


 同胞が死んでしまった。

 やむを得ずとはいえ、辛いだろうね。

  

「しまった!ヴァネッサ!」

 

 何だ?。

 ライアの声。

 そちらを向くと、手下一人が囲い込みから抜け出してしまっていた。


 


Copyright(C)2020-橘 シン

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ