12-11
「なめやがって…楽しむのはやめだ!」
「だな。後悔させてやるよ」
賊達は少しづつ距離を詰めて来る。
わたしは賊達を観察する。
一番近くにいるのは、北側にいる男。
わたしは、その男に向かって一気に駆け出す。
その勢いそのままに、体当たりをする。
男は倒し、そのまま走って賊達から距離を取る。
「このやろう!」
賊達が追いかけ来た。
わたしは肩がけした鞄を捨て、身を軽くする。
捨てた鞄に賊達は見向きもしない。
「はあ…はあ…」
後ろを確認しながら、走り続ける。
足が早いのが、一人。
どんどん距離が詰められいる。
これは好都合。
四人相手は無理。一人なら対処はできる。
一番先頭を走ってる男を倒せば、一人減る。
わたしはタイミングを図って、振り向く。
男が手斧を振り上げ、迫る。
振り下ろそうとする手斧を見て、わたしは身を屈め男とすれ違う。
すれ違いざまに、ショートソードで男の太腿を切りつけた。
男は転んで悪態をつく。
「くっそ!てめえ」
起き上がろうとする男の顔を、思いっきり蹴り上げた。男は気絶する。
「さあ次!」
次の男は、最初にわたしが体当たりで倒した奴。
その男はわたしの数歩手前でピタリと立ち止まった。
「同じ手は喰らわないぜ」
でしょうね。
そんな事は織り込み済みよ!。
わたしは男に向かって距離を詰める。
先手を打つ。
ショートソードを素早く突き出し横に薙ぐ。
「おっと…」
男は体を反らし避ける。
避けられた!。
「おらぁ!」
手斧が頭に振り下ろれる!。
手斧を持ってる右腕を下から掴み抑え、ショートソードを男に向かって突き刺す。が、右腕を取られ抑えられてしまう。
「くっ!…」
「やっぱ女だな。力ねえぜ」
右腕は抑えれたまま、左手が押し込まれ、手斧が近づいて来る。
「いつまで持つかな?へへっ」
男の肩越しに、後ろから男二人が近づいてくるのが見えた。
「あっ…!」
わたしは片膝をつき、なんとか耐える。
「言ったろ?抵抗するなって」
男の嫌な舌なめずりをする。
左腕が痛くなってきた…。
ダメか…ここまでか…。
手斧の刃が首筋に当たる。
意外とあっさり終わるものなのね…。
リアン…ごめん。お父さん…お母さん…ごめんなさ…。.
「多勢に無勢とは、下劣な!」
突然、空に影が差した。
「なんだぁ?」
男の後ろに何かが降り立った。
後ろ向きで顔は分かないが、その背中には真っ白な翼。
翼人族!?。
一瞬、ライア隊長かと思ったが、彼女よりも背が高い。
翼人族はわたしを追ってきた男二人をあっさりと倒してしまう。
「他にはいないみたいだよ、兄さん」
女性の声がする。翼人族は二人か。
「後は君だけだが?」
「へっ?…」
男が振り返る。
その隙をついて、わたしは立ち上がり、男の股間を蹴り上げた。
「ふぉがぁ!」
男が苦悶の表情で、手斧を落とし後ろに下がろうとする。
「まだよ!」
わたしはショートソードを手放し、逃げようとする男の腕を掴んで、もう一回股間と蹴り上げる。
「あうぅ…」
男は白目を抜いて前屈みに倒れこんだ。
「はあ…はあ…」
わたしは荒い息で、ショートソードを拾い、倒した男にとどめを刺そうとした。が…。
翼人族の男性に肩を掴まれ止められる。
「あなたの剣を汚す事はない」
男性は男の足を持ち、林の中へ引きずり運び出す。
「て、手伝います」
わたしも片方の足を持つ。
「ありがとう」
「礼の言うのはこちらです。ありがとうございます」
翼人族特有の銀色の美しい髪。それを額に細い革紐を縛って止めている。
「礼なら妹に。最初に気づいたの彼女だ」
そう笑顔で話す。
その妹さんは姿が見えない。
「この辺でいいだろう」
男性はナイフを取り出し、男の喉から首筋まで切り裂いた。
男はもがきながら、息絶える。
わたしが蹴り上げ倒した男も同じように林の中で葬った。
他の二人は翼人族の男性によりすでに死んでいた。
その二人も林へ。
「おーい!」
峠の南側から声が聞こえる。
そちらに目を向けた。
「妹です」
妹さんが馬を引いてくれていた。
わたしは自分の鞄を拾いながら近づく。
「ありがとう」
「いえいえ」
妹さんは笑顔で手綱を渡してくれた。
妹さんは薄いピンクがかった銀色の髪。それを後ろで三編みにしている。
馬は無事だった。
「とても落ち着いている子ね。私を見ても驚かない。普通、びっくりするのよ、翼人族を見ると」
そうなんだ…。
落ち着いているのは、今回の様に族に襲われた事があるからだと思う。
「ありがとうございます、本当に」
わたしは改めて礼を言った。
「大事にならなくてよかった」
「この辺、賊は滅多に見ないのに」
「わたしもそう聞いていたんですけどね…」
「これからどちらへ?」
「南へ。峠を下りると村があるはずなんです」
わたしは簡易地図を出す。
「ありますね」
「一緒に行って上げる」
「もう、すぐそこですし…」
それに二人は、小さいながらも鞄を肩に斜めがけしている。
これからどこかへ行くのか、帰るのか…。
「賊の残りがいるかもしれない。村までは同行しよう」
「何か用事があるのでは?…」
「ないよ。さあ、行きましょう」
妹さんが歩きだしてしまった…ならついていく行くしかない。
「はい…」
「すみませんね。オリヴィアは多少強引過ぎるところがありまして」
「いえ、別に構いません」
妹さんはオリヴィアと言う名前みたい。
「自己紹介が遅れました。兄のライファーです」
「ソニアです」
二人と握手を交わす。
峠を下り始める。遠くの麓には村が見えた。
「このあたりに住んでいるんですか?」
「いいえ、もっと西の方です」
「定住されているんですね」
「定住し始めたのは数年ほど前からで、それまでは妹と一緒にあちこち行ってました」
定住し始めきっかけは、落ち着く場所がほしいからと話す。
「飛び渡る生活もいいんですが、行く場所で必ず騒ぎになってしまって…」
「ああ…なるほど」
翼人族の人工はすごく少ない。
会えるのは滅多にない。
翼人族は幸運を招くという人もいる。
「私は飛び渡るの好きよ。今まで会った人達はいい人ばかりだもの。さっきみたいのもいるけど」
「ああいうのは頻繁に会うわけでないのですが、いい気分ではない。心配なのでオリヴィアを一人にさせた事はないです」
「兄さんは過保護すぎよ。ライア様は女性なのに、一人で旅してる」
ライア!?。
「お前とライアさんを比べるな…剣の腕前は雲泥の差が…」
「ちょ、ちょっと待って!ライアって、ライア・ライエさんの事?」
「そう!ソニアさん、知ってるの?」
「知ってるも何も…」
ライア隊長がシュナイツにいて、剣術を教えている事を話す。
何故、そんな事になった事も。
「わたしがライア隊長と、あなた方が言ってるライア隊長とが同じかどうかはわからないけど」
「いや、間違いないでしょう。王国の英雄が頼むくらいだ」
「やっぱりスゴイ人なんだ」
シュナイツにいるのはシュナイダー様の趣味嗜好による所があるんだけど…。
この場では言わなかった。
「ライア隊長って有名なんですか?」
「相当な剣の使い手と、聞き及んています。手合わせした事はなく、会った事すらないんですが…」
「みんな、一度は剣を交えたいって言うよね」
「翼人族は剣に自信を持っているからな。上がいるなら、やってみたいと思うのが習性なのさ」
ライファーさんは笑顔で話す。
そんな事を話しながら山を下る。
下り終えた頃には夕方だった。
「あれが言っていた集落ね」
小さな谷間ある小さい集落。
東から西に小川が流れている。
「ここまで大丈夫です。ありがとうございました」
「はい、それでは。道中、お気をつけて」
「帰ったらライア様に私の事話してね」
「ええ。必ず話すわ」
「ありがとう。じゃあね」
二人はふわりと飛び上がり、西へと飛んでいく。
わたしは村へと急いだ。
Copyright(C)2020-橘 シン




