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ブレイバーズ・メモリー(2)  作者: 橘 シン


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20-29


 咆哮を上げたのは、あたしの竜だけじゃない。

 レスターの竜も他の竜、シュナイツにいる竜全頭が咆哮していた。

 その咆哮に敵味方全員が動きを止める。


 この光景は初めてじゃない。

 あたしは何度かある。


 竜同士が呼び合っているんだ。


「来たか…」


 咆哮が周囲だけでなく、北西方向からも聞こえた。


 振り向くと竜騎士達が、全速力でこちらに駆けているのが見えた。

 先頭の竜騎士に見覚えがある。


 近衛隊の…誰だっけ?。え?あっそうそう、ジェネスね。

 なんで近衛隊が?思ったよ。あいつと他一名が近衛隊で、他は六番隊だった。


 ジェネスの後を三班が続き、北から東へと回り込んで行く。


 六番隊の到着を知った兵士達が歓喜の声を上げる。


「キター!」

「マジか!?」

「賊ども全員やっつけてくれ!」


 こういうの手のひら返しっていうの?。


 まあ気持ちはわかるけどさ。


「気の抜くんじゃないよ!まだ終わってないんだから!」

「勝負はついたと思いますけどね」


 レスターのいう通りななんだけど、あたしの中の嫌な予感が消えずに残っていた。



 六番隊が賊の周りを固め、賊の数を減らして行く。


 賊は右往左往。


 ジルとミャンが賊の真ん中で暴れまわる。


「一班、一人も逃すなよ!」

「了解」


 六番隊と率いている隊長らしき者が、あたしに近づく。


「失礼ですが、あなたがヴァネッサ・シェフィールド隊長ですか?」

「ああ、そうだよ」

「お初にお目にかかます。六番隊副長ミラーズです」

「シュナイツ竜騎士隊長ヴァネッサ・シェフィールド。よろしく」


 騎乗したまま握手を交わす。


「悪いね…本来なら正規の竜騎士隊に、直接要請はできないんだけど…」

「事が事ですので、構いません。こちらとしては実戦経験も兼ねて出撃としています」

「そう…。そういう事でも感謝するよ」


 確かに実戦経験としてはいい材料だね。


「ところでさ」

「はい」

「近衛隊がいるのはどういう事なの?」

「あー、それはですね…」


 ミラーズがいうには、近衛隊は六番隊で連携訓練だった。

 そこに救援要請。


 近衛隊は関係ないものの、竜騎士の矜持として要請に答えた。と。


「矜持ね…」

「最悪、近衛隊を更迭されるおそれがあるんですがね…。本人はそれでもいよいと」

「へえ」


 中々できる事じゃない。


「まあ、どうなろうと我々には関係ないんですが」

「まあね」


 六番隊が来てから、戦況はシュナイツ側に有利なり、そのまま賊を殲滅することになる。


 賊の中には武器を捨て投降する者が。そいつらは、状況がわかってる。

 そうじゃない奴らは全員死んだ。


 シュナイツの北側には屍累々。

 あたりには血の匂いが漂い始める。



「やっと終わったか…」


 戦闘が終わり投降者を縛り上げ、連行する。


「さっさと歩けよ!」

「ちっ…」

「わかってるよ…」


 賊には聞きたい事が山程あった。


「口聞けるようにしておいてよ」

「了解」

 

 ガルドに釘を刺しておく。


 ガルドに続いて、サムやスチュアート、ミャン、ジルが行く。


「ミラーズ、あんた達も中へ入って」

「はい。みんなご苦労!中に入ってくれ」


 六番隊と近衛隊が門へと向かう。


 シュナイツ隊は六番隊の後をついていく。


 あたしとレスターの後ろにはライノ ミレイ、ステインが続く。

 そばにはユウジとタイガがいる。

 

「一時はどうなるかと思いましたけど、なんとか乗り切りましたね」


 レスターが安堵した様子で話す。


「全くだよ…今回限りにしてほしいね」


 ちょっかい出す程度なら、まだいいけどこんなのがしょっちゅうあったら堪ったもんじゃないよ。


 ぞろぞろと門へ向かって竜を歩かせる。


 あたしは完全に気を抜いていた。

 戦闘が終わって気を抜いく事は誰でもあると思う。


 だけど、隊長として最後まで気を抜いてはいけない。


 敷地に入って、門が閉まるまでは。



「生きてる奴がいるぞ!」


 北側の警備通路から声が上がる。


「何!?」


 振り向き、後ろにいたライノ達を見た。


 ライノ達も振り向こうとしていた時だった。


「うっ!、ああ…」


 ステインが竜の上で前かがみになる。


 彼の右脇腹を矢が貫いていた。


「ステイン!」

 

 あたしの声でライノとミレイがステインに気づく。


「くっそ!ステイン、大丈夫か!」

「ああ…」

「早く下がるんだよ!」

「ステインさん、頑張ってください」


 ライノとミレイがステインを支え、門へ急ぐ。


「どこだよ!生きてる奴って!」

「タイガ、あそこだ!」


 ユウジが指を指す。


 死体が重なりあった所で弓を構えていた。

 負傷しつつも、手や腕を震わせながら弓を構えていた。


「タイガ!」


 ユウジが折れた剣を拾い、タイガに投げ渡す。


「喰らえ!」


 タイガが投げた剣は弓を構えていた賊の頭に当たり、賊は後ろへ倒れた。

 死に際、矢は放たれる。

 その矢は大きく弧を描き、敷地内へ飛んで行く。


「矢が行くぞ!」


 そうレスターが叫んだが、矢は敷地手前で防がれた。魔法による障壁が展開していた。


「エレナか…」


 エレナが通用口に立って杖を構えながら大きく手招きしてる。


「エレナ隊長が障壁を展開中です」

「了解…急いで戻るよ」


 あたし達は急いで敷地内へと戻った。



「ステインは?」

「あそこです」


 門からそう離れていない所に横向きに寝かされてる。


 その周りを竜騎士や兵士達が囲んでいた。


「どきなって!ステイン!」


 野次馬をかき分けステインの元へ。


「どけ!」


 フリッツ先生も同時に駆けつける。


「くっ!ああ!」


 ステインは苦悶の表情で痛みに耐えていた。


「先生!助けてくれ!」

「黙ってろ!」


 フリッツ先生は焦るライノを叱りつける。


「先生、どうなの?」


 矢の当たりどころから、あたしはもうダメだとすでに諦めていた。

 それでも、先生なら助けてくれんじゃないかと、淡い希望を持って訊く。 


 先生は矢とステインの体を観察する。


「…」


 あたしに向かって首を横に振った。


「…」

「当たりどころが悪すぎる…」

「どういう事だよ!先生」

「急所に矢が当たっている。何もできん…」

「嘘だろ…先生!冗談はやめてくれ!」


 ライノは先生の肩を揺さぶる。

 そうしてる間に矢と傷口の隙間から血が流れ出ている。


「できる事なら助けたいが…私にはどうすることもできん」

「ふざけんなよ!医者じゃなかったのかよ!」

「ライノ、やめな」


 あたしはフリッツ先生からライノの引きはがす。


 フリッツ先生が優秀な医者でもできない事がある。万能じゃない。


「ミラルド先生は」


 ミラルド先生も首を横に振る。


「なんで…隊長も先生に言ってくれ!助けてくれってさ!」

「ライノ…落ち着いて」

「落ち着いる場合じゃないでしょ!」

「どうやってもステインは助からない」

「やめてくれ!」

 

 ライノはあたしを腕を振りほどきステインに駆け寄った。


「ステイン!」

「よお…」

「すぐに助けるな!頑張ってくれ!」

「お前バカか?」

「は?」


 ステインは弱々しく笑う。


「話、全部聞こえてるって…」

「ステイン…」

「先生が言ってなら、ダメだって…」

「…くそぉ」


 ライノはステインの手を握り、涙を流す。


「先生…」

「なんだ?」

「矢を抜いてください…」

「抜かん方がいい。抜けば傷口からの出血が増える。死を早めるだけだぞ」


 先生はそう勧めるけど。


「こんな姿で死にたくないですよ…頼みます」


 本人の希望を叶えたいけど…。


「矢を抜けば、意識はすぐになくなる。言いたいことがあるなるなら、今言いな」

「はい…」


 先生達は矢を抜くための準備を始めた。





Copyright(C)2020-橘 シン

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