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ブレイバーズ・メモリー(2)  作者: 橘 シン


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20-19


 俺は、バリケードを超えて左のゴーレムへ突撃する。


 走りながら剣を抜く。


 仲間がやられた仇は必ず取る!。


 ゴーレムの頭は自分と同じ高さくらいになっている。


 ここまでの戦闘じゃ、竜騎士の俺は大した事は出来ていない。

 武勲を立てたいとか、戦果ほしいとかじゃないんだ。


 あの時は向こうの魔法士に翻弄されてた。それが不甲斐ない思ってたんだ。

 あんな魔法を使われちゃ仕方がないが、それを倒す機会が巡ってくる。


 ヴァネッサ隊長にゴーレムをやらせてくれと頼んだのも、そういう気持ちがったからだ。


「お前なんか、一振りで十分だ!」


 ゴーレムの首めがけ、剣を横一線に薙ぎ払った。


「だりゃあ!」


 俺の剣がゴーレムの首を切り落とすと、体か砂塵となり崩れていく。


「ふん!」


 造作もねえな。


 エレナ隊長の魔法もあったが、手応えなさすぎだ。

 こんなものに仲間がやられたとは…。


 帰ろうと振り向いた時だった。


「馬鹿ぁ!」

「へ?」


 ヴァネッサ隊長が激怒している。


「頭を落とすじゃない!破壊するんだよ!」

「ガルド、早くしろ!」

「頭がうご、動いてますって!」


 あ…。


 後ろでガタガタと音がし始めた。


 振り向くと、さっき切り落としたゴーレムの首が震えている。

 そして、切り口から何かどす黒い煙ような触手が出て来て、砂塵となった体へと伸びていった。


「うあああ!」


 俺は慌てて剣をゴーレムの頭に何度も突き立てる。


「ふざけんな!くそっ!くそっ!」


 粉々になるまで何度も踏んづけてやった。


「はあ、はあ…何なんだってよ…全く」

 

 と、とりあえずゴーレムは破壊した。冷や汗かいたがな…。




 わたくしは、ヴァネッサ様の合図でバリケードを飛び越えへゴーレムへと向かいました。


 両手にはアリス様のナイフ。


 走りながらそのナイフを何度か振って具合を確かめました。

 何故か違和感はなく、比較的馴染んでいるように感じます。


 わたくしが、このナイフを使いこなせるほどに成長したという事でしょうか?。


 まさか。


 ゲオルグを倒して以降も、アリス様が訓練のお相手をしてくださってくれましたが、未だに足元にも及びません。


 そばにいる目標が大きい分、自分が成長しているのか分からなくなる事あります。

 

 お前は上を見すぎだ。アリス(あれ)は、桁が違う。雲の上だぜ?。

 そうゲイルさんに言われ事がありました。


 わかっています。わかって上で目標としているのです。


 地道な努力が功を奏してきたのでしたら、嬉しく思います。

 その成果をここで見せるのが、アリス様に対する恩返しを言えるでしょう。


 ゴーレムは目の前。


 わたしくと同じように、ガルドさんとミャン隊長がゴーレムへと向かっていました。


ゴーレムは胸程度のまで埋まっており、身動きが出来ない状態。

 あれでは、練習用の人形と変わりません。肩幅は異様にありますが。


 全力で行かせていただきます!。


六花旋風迅(りっかせんぷうじん)!」


 ゲオルグに使ったあの技です。


 彼には効きませんでしたが、泥人形には効くでしょう。

 効いてもらわねば困ります。


 体を回転させながらのナイフによる突きを斬撃に加え、蹴りや肘打ちを、ゴーレムの頭部に叩き込んでいきました。

 

前面と打ち砕くとほんのりと光る魔法陣が現れます。


「これか!」


 この魔法陣を崩せば終わりです。


 六花旋風迅の最後、左手のナイフをゴーレムの頭部

に突き立て、ねじ込みました。


 ゴーレムはゆっくりと土へと帰っていきます。


「ふう…」

「ジル、ナイスだよ!」


 ヴァネッサ様がかけてくれた声に片手を胸にあて答えまします。

 後ろの兵士も手や声を上げ喜んでいました。


 アリス様。役目は、確かに果たしました。

 



 やっとやれる!。倒せる!。


 ライアの翼を奪ったゴーレムめがけ全力で走った。


 大事な翼を失ったライアの痛み思い知れ!。


 

 ライアとの出会いは衝撃的だった。


 兵舎の屋根で昼寝をしていたアタシは、シュナイツ上空に漂う何かに目を見張った。


「翼人族だ!」


 兵士の誰かが叫ぶ。


「翼人族?あれガ…」


 読んで字のごとく、翼を持った人。

 はためく真っ白な翼。


 優雅に飛ぶその姿。まさに天国から降りてきた天使のようだった。 

 

 話しには聞いていたけど、実際に見たのは初めて。

 

 兵士だけなく使用人、シュナイダー様達も館から出てき来て空を見上げる。


「ヴァネッサ!どうすんノォ?」

「どうもこうも、向こう次第だよ。降りて来るのか、見てるだけのか…」


 ヴァネッサは腕を組み、見上げたまま。


「翼人族は剣に長けてると聞く。出来る事はなら、冥土の土産にこの目で拝みたいんだがなぁ」

「何言ってるんですか…」


 そう言って空を見上げるシュナイダー様に、ヴァネッサが呆れ返っている。


 強いのか…イヒヒ。

 強いと聞くと気になるんだよね。


 あたしは訓練用の短槍を準備した。


「降りて来るわ」

「敵意がないことを祈るよ」


 アタシには敵意があるようには見えないけどね。


 翼をはためかせ静かにゆっくりと降りてくる。


 敷地の真ん中。兵士達が場所を空け、そこに降り立った。


 銀髪のキレイなショートカットの髪。

 袖なしの服に更に布を巻いている。


 腰には割と細身の剣。


 遠巻きに見る兵士達を見回す。


「突然、申し訳ない。ここの長は、どなたか?」


 シュナイダー様が前に出た。


 そっち気を取られた瞬間を狙って、アタシは短槍の石突を前に出し、翼人族へ走り込む。

 背後から石突を突き出した。


「アレ?…」


 本気の突きじゃなかったんだけど、あっさり避けちゃった。


「ミャン!何やってんの、あんた!」

「まあ、待て。このままでいい」

「シュナイダー様?…」


 翼人族は、シュナイダー様とあたしを交互に見る。


「なるほど…これがここの流儀というわけか…」

「ちょっと、怪しいからネ」

「こちらに敵意はないんだが…言っても無駄のようだな」

「そゆ事、んじゃ行くヨ!」


 アタシは短槍を振り回し、どこぞの翼人族に仕掛ける。

 アタシの攻撃は全っ然当たらず、全部避けられちゃった。


「なんで避けるだけなのサ!」

「ぼくは、敵意はないと言ったし、君と戦う理由もない」

「空気読んでさあ、ちょっとは付き合ってヨ」

「空気?」

「そうだよ。剣術うまいんでショ?違うノ?」


 アタシの言葉にため息を吐く。


「剣を抜く時は、それ相応の状況の場合と決めている」

「それ相応?」

「そうだ。剣を抜く、それは覚悟を決めた時だ。自分に対して、そして相手に対して」

「どゆこト?」

 

 ?…。


「ミャン」

「ハイ?」

 

 シュナイダー様がアタシを呼ぶ。


「向こうは遊び程度で、剣を抜くことないと言っている」

「遊び…ニャルほど…」


 そういう事ネ。


 回りくどいナァ。


 真剣勝負じゃなけりゃやらないと

 そう言えばいいジャン。


「リックス!アタシの槍持ってきて!」

「は?」

「は?じゃないヨ。早く持ってきてヨ」


 リックスはアタシの槍を、小走りで持ってくる。


 訓練用の槍と交換し、自分の槍から鞘を抜き彼に渡す。


「待ってください。本当に真剣でやるんですか?」

「そうだヨ」

「いいんですか?」

「だめならシュナイダー様が、とっくに止めてるっテ」

「いや、でも…」

「はいはい。離れテ」

「…」


 彼はそれ以上反論せず離れていく。


 自分の槍を軽く振り回す。

 やっぱりこの槍がしっくり来る。訓練用はちょっと軽いんだよね。


「さあ、始めようヨ」


 アタシは穂先を翼人族に向けた。





Copyright(C)2020-橘 シン

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