初夏川
この初夏の間に、
離れる人、遠のく町、
巡り合わせというのか、
川が分かれてゆく。
自分で選んでいる、
そのつもりでいても、
選ばれるだけのこと。
立っているだけのこと。
蟻の行列が始まり、
せっせと行き来して、
仲間のためか、
女王のためかよく働く。
しゃがみこんで眺めて、
どの蟻が自分のように、
選ばれる感覚や
行列の意味を思うかと。
この初夏の間に、
近づく人、訪れる日々、
巡り合わせがあるから、
川はまた出逢う。
自分に尋ねてみては
答えを決めるようで、
誰かの言葉に触れ、
見つけているだけのこと。
人の行列が続けば、
ぞろぞろと自粛なく、
欲望のためか、
欲求のためかよく騒ぐ。
座り込んで酔っ払って、
どの人が自分を失くし、
選ばれないまま、
土に戻ってゆくのかと。
この初夏のあとにも、
愛しき人、麗しき森、
巡り合わせに抱かれ、
川の流れがある。
自分を知らずして、
偉くなったときには、
発した言葉の多くは、
押しつけたいだけのこと。
蟻はせっせと行き来して、
人はぞろぞろ自粛なく、
意味は知らずに働いて、
酔っ払っては土に戻る。
黙り込んで考え込んで、
どの言葉が相応しいやら、
選ばれて来るまでは、
川には逆らわないとした。