プロローグ
どこか分からない場所に僕はいる。
回りの景色は沢山の色が混合した建物や川、人がいた。見えるものは原型はあるが外装はただの壁で人は顔が無い状態だった。
『本当にあなたは過去にもどる覚悟はあるのですか?』
どこからかその声が聞こえた。声の主は僕をここに連れてきた人だと分かっているが、辺りを見回してもその人はいなかった。
「覚悟はなければここにはいません。確かに恐怖は少しあります。でも、そんなことで逃げていればいつまでたっても埒が明きません」
『あなたは勇敢な人ですね。この場で自分に負けてやめた人は沢山いると言うのに。その勇気を讃え今から儀を行いたいと思います』
その声がした後に目の前の景色が変化し始めた。
色とりどりだった世界は形を変え丸くなっていった。そして、いつか写真で見たことのある地球へと変わっていった。
『さあ、完成しました。お行きなさい』
上から眺めた過去の地球に少し怖じ気付いてしまっていた。
さっきは威勢のいいことを話していたが実際それを目の当たりにしたら漫画のように上手くはいかない。
『あら、行かないのですか?』
「いえ、行きます」
そう答えるも自分の足が重い鉄球をつけられたように上手く動かない。やはり自分は弱いんだ、そう思ったときふと、彼女の顔が思い浮かんだ。
いつも、自分の隣にいてくれて、どんな話も、愚痴も、つまらないことも聞いてくれた彼女を思い出した。そんな彼女にまた会いたい、その思いが自分を突き動かす。
「では、行ってきます」
そういって僕は過去の世界に飛び込んだ。