新たな出会い
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「ん…」
背中が痛い。何なら、全身痛い。
目を開けると自室じゃなくて、知らない森の中。こんな森、家の近くになんて無かった…はず。
何とか立ち上がって、辺りを見渡す。木が沢山生えてて、森のイメージピッタリな感じ。
「ここ…どこだろ」
ぼーっとしてる訳にもいかないし、取り敢えずこの森から出て、街か何かに行って、ここはどこなのか聞こう。それがいい。
とは言っても、どの道に行けば出られるのか分からないし…
進める道が東西南北の四方向…よし、東でいいか。まさか森で行き止まりなんてオチは流石に無い、と思いたい。
──────────
結構歩いたけど、景色が全く変わらない。変わらない事もないけど、進展が無い。
でも、今更戻る訳にはいかないしなあ…うーん…
その時、私のすぐ後ろの茂みでガサガサッと音がした。思わず立ち止まってしまう。
茂みから飛び出してきたのは、私の視界を覆い尽くす程大きな動物だった。…巨大な爪というオプション付きの。
「わあああああああああああああああああああ!?」
思いっ切り叫んで、慌てて走り出す。私の後を追って、ドタドタと足音を鳴らしながら走ってくる動物から、必死に逃げる。
いくら私が走る事が得意とは言っても、体力が無限にある訳じゃない。
前しか見てなかったせいで、川に足を踏み入れてしまった。
服が水を吸って重くなる。このままだと、走る事が出来ない。
移動スピードが下がった私に、少しずつ近付いて来る。
食べられちゃう─
そう思って、大人しく目を閉じる。
来世ではいい事があります様に。
「アオーーーーーーン!」
急に動物が鳴き出した事に驚いて、目を開ける。
「え…?」
動物が赤々とした炎に包まれていた。
「大丈夫だったかな?お嬢さん。安心して」
未だ燃え盛る動物を背に、手を伸ばして微笑みかける人がいた。
赤いロングコートを羽織って、髪の先も少しだけ赤い。それでも、ちゃんと人だ。
この森に、人がいた。
「あれ、まだ怖い?」
優しい笑顔を浮かべながら、その人も川に入ってきて、私を抱き抱えて川から出してくれる。
…いや、何で知らない人にこんな事されてるの!?
「あ、あのっ…大丈夫です、歩けます!」
「分かったよ」
ゆっくり私を地面に下ろしてくれる。きっと重かったよね、ごめんなさい。色々な意味を込めて、頭を下げる。
「ありがとうございました」
「どう致しまして。それより、お嬢さんが無事で良かったよ。この森の生き物は凶暴だからさ」
優しい…というかかっこいい…
けど、気になる事がある。
あの炎の事だ。
振り返ってみると、もう炎は収まっていて、動物だったはずの燃え殻があるだけ。
「あの…失礼ですが、先程の炎は?」
一瞬、ん?という表情になったものの、私の首元を見て何かが分かったのか
「ああ、あれ?マジックって言うんだけど…」
…マジック?魔法じゃなくて、マジック?
「マジック、というのは?」
「その話は、行きながらしようか。取り敢えず、僕らの家に案内するからさ。それに、その格好だと風邪引いちゃうよ?」
確かにそうだ。ずぶ濡れのままここで長々と話を聞く訳にもいかない。
「そうですね。ありがとうございます」
「お礼なんかいいよ。それより、名前って聞いてもいいかな?」
私の名前か…さっきの動物で分かった事は、この世界は私がいた世界じゃない。という事は、何かしらの理由で私はここに転生した事になる。はず。多分。
私の名前はレイラ。このまま使う事が出来る。苗字が必要なら…桐生院です、と付け足せばいいか。
「レイラと言います」
「レイラさんか。レイラちゃんかな?どっちがいい?」
「呼びやすい方で構いません」
まあ、助けてもらったからね。それに、名前位どんな風に呼んでも、減る様なものじゃないし。
「それじゃあ、レイラさん、でいいかな?」
「はい。貴方のお名前は…」
「あ、そうだね。言ってなかったよ。僕はフライアって言うんだ。宜しくね」
良かった。名前が片仮名で本当に良かった。もしこの世界で漢字の名前だったら、麗羅とか玲羅とかにしないといけなかったし。
「それと、敬語じゃなくていいし、フライアさんって呼ばなくて良いからね。友達と話す感覚で良いよ」
「わかり…分かった、フライア」
敬語じゃなくて良い、か…いつも通り話すって事だよね。
「緊張しなくていいよ。それじゃあ行こうか」
私の手を引いて、森の出口だと思う方へ向かうフライアに、少しだけドキリとしたのは秘密。