夏の君
ジリジリと暑さを際立たせる蝉の声に
ああ、今年も夏が来たんだななんて
風に揺れる木々を見ながらかすかに頬を撫でていく風に身を委ねた
夏は嫌いだ、君に会いたくなるから
君はまるで夏みたいで眩しくて
俺にとって君は正反対で
近すぎるとダメになりそうだった
明るいのは嫌いなんだけどな…
真っ暗で冷たい世界に温かい温度をくれて
俺をいろんなところに連れ出してくれた君
1人でも平気だったのに、
1人がこんなに寂しいのは
1人がこんなに苦しいのは
独りじゃないことを知ってしまったから
君が優しくするから
君のせいでその熱をその温度を
知ってしまったせいで
俺はもう誰かの温度も温かくて心地いいその手も
手離せなくなってしまったのに
夏は汗をかくから近付かないでと言っても
なんで、いいでしょ?くっついていたいのって
くっついてくる君が、ほんとはとても好きだった
手を繋ぎたいからって駄々をこねる君が好きだった
いつまでも素直になれない俺と寂しがりの君に
距離が空くのは時間の問題で
今日も君みたいな太陽を身体が浴びている
あの日猫みたいだと君が笑って撫でたような
優しくてあたたかい風が吹いて
ねえ、俺だけここに残してどこに行ったの
俺だけここに残して君はどこに行ったんだよ
なにもかも君が教えたくせに
君の忘れ方だけは誰も教えてくれないんだ
こうやって、繰り返し
いつになってもいくつになっても
夏が来るたびに君を思い出すんだ