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そこの貴方、聞きたいですか?

作者: 座敷 紅音

こんにちは。私は今、病院で働いています!存在感が薄いのか、あんまりお仕事らしいお仕事は回してもらえてないですが…(苦笑)

そうそう。病院で勤務していると人に伝えると、恐怖体験ある?ってよく聞かれたりします。皆さんのご想像通り、沢山あるんです…。

え?なになに?気になるって?

うふふふふ。

もう、後悔しても知りませんよ!


これは、私がまだ学生だった頃のお話。

実習中のお話です。



私は椎名叶。名門私立大学の看護科に通う3年生。看護科は3年の後半から実習を行います。叶も3年生になったので絶賛実習中。普通はひとつの病院に1週間、5人くらいのグループで実習をさせてもらいます。

でも叶は今回1人なんです…病院に1人で実習なんて…しかも3年生になってから初めての実習なのに…。寂しい…。

怒られる時もレポート書く時も全部全部1人なんて!叶、耐えられない…。

いやいや!始まる前から弱音吐いてどうする!この1週間、頑張るぞー!


「今日から1週間お世話になる、看護科3年生椎名叶です!よろしくお願い致します」

「あー、実習の方ねー。私は看護師長の矢田楓です。よろしくね。担当はね…えっとぉ〜…立川さんだわ。ちょっと待ってねー」

「はい!」


え!看護師長めっちゃ優しいじゃん!

当時の叶は今回の実習は当たりだなーと思っていました。


「はじめまして、立川遥です。よろしくね」

「椎名叶です!よろしくお願い致します」

「うふふ、とっても元気ね」


遥さんめっちゃ美人!落ち着きある!大人の女性って感じで憧れちゃうな〜。


「じゃあ、叶さん、病院を案内するわ。器具の場所はちゃんと覚えておいてね?」

「わかりました!」


それから病院の中を案内してもらいました。病院の中はとっても明るくて活気のある素敵な場所でした。

医療器具や場所、ルールなどはしっかりメモ帳に書き込み、大体の場所を案内してもらったあとのことです。


「叶さん、あそこには近寄らないでね」

「あの、特別病棟って書いてあるところですか?なんでですか?」

「重病患者さんの病棟なの。まだ実習生が担当するような病棟じゃないから、入らないように。」

「分かりました!」

「じゃあ、早速患者さんに会って看護してもらおうかな!」

「やった!よろしくお願い致します!」


それから何事もなく実習期間が過ぎていきました。


ですが、叶は良からぬ噂を聞いてしまいました。ここの病院では、秘密裏に患者さんを使って何かの実験をしている怪しくて危険な病院なんだとか。

叶が見る限りそんな怪しいところもないし、ただの噂だ!と思って過ごしていました。


そして最終日。

最終日はとっても忙しそうでした。いつも余裕で大人な遥さんも慌てていました。


「叶さん、本当に悪いんだけど、ちょっとお願いしたいことがあるの。いいかな?」

「なんでも言ってください!今日は忙しそうですもんね。叶でよければ力になります!」

「うふふ、ありがとう。この注射を特別病棟の604号室に居る先生のところまで届けて欲しいの。」

「604号室ですか?そんなことろに先生いるんですか?病室なのに?」

「ちょっと変わった人なのよ。お願いしてもいいかしら?」


なんか今日の遥さんちょっと変…?


「任せてください!届けてきますね!」

「うふふ、お願いね」


ヒヤッ


…え…?

凍るような冷たさが指先から伝わってきた。


「冷たっ!」

「あらあら、この注射、いまさっきまで冷やしていたから冷たいのかも…」

「…あ、ああ、そうなんですね!冷たくてびっくりしちゃいましたよー!」

「伝え忘れててごめんなさいね、じゃあ、よろしくね?」

「了解です!」


叶は早足で遥さんから離れて604号室にむかいました。だって、怖かったんですもん。

叶が冷たいと思ったのは遥さんの『手』なんですから。

冷え性とか、そういうレベルの冷たさではなかったのです。まるで死人のような冷たさでした。

いや、叶の勘違いかもしれない。

そう叶は信じて604号室に向かいました。


特別病棟の前。叶は躊躇いもなく、扉を開けました。

特別病棟の中はとても重苦しい雰囲気で、いかにも幽霊がでそうな病棟でした。

叶は一刻も早く特別病棟から出たいと思い、走って604号室まで行きました。

途中で聞いたおどろおどろしい唸り声。叶は恐怖で震えていました。うふふ。

そして604号室の前に着きました。叶は早く役目を終わらしたかったので急いで扉を開けました。

すると中には頬に十字の傷跡のある女性研修医がいました。

それからのことは叶には分かりません。

ただ分かっていることはその後叶の姿をみた人はいなかったのだとか…。



どうです?怖かったでしょう?

え?どうしたんです?そんなに震えて。

叶なら目の前にいるじゃないって?もしかして私のことを言ってます?うふふ、冗談上手いですねー!


ん?私の顔をじっくり見つめてどうしたんですか?今さっきより震えてるじゃないですか。そんなに怖かったんですか?


え?この十字の傷跡ですか?

あー、昔ちょっと色々あって…。遥っていたでしょう?あの子に付けられたんですよ。


てか貴方気づいてます?貴方がいるの、特別病棟の604号室ですよ?うふふふふ。


叶はあの後どうなったか誰も知らないって言いましたよね?でも実は私、知ってるんです。

だってあの時の研修医なんですもん。

正確に言えば実習に行っていた医学部の学生ですが。


あら、そんなに震え上がらないでくださいな。

うふっうふふっうふふふふ。


ちょっと!何逃げようとしてるんですか?

逃がしませんよ?ようやく回ってきたお仕事なんですから。

うふふ、うふふふふふふ。

うふふふふふ。

うふっ、うふふ、あははっ。

あははははははははははは。

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