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【決戦!天罰は誰が為に降る】

時間にして10秒程だった。徐々に開けてきた視界。勇者と魔王の娘を除く全員の目に最初に映ったのは仰向けに寝転がる勇者と、その腹部に跨るように座っている6歳程の幼女。先程の魔王の娘の面影がある。



ボブカットに整えられた黒髪にはキューティクルが輝き、その肌は剥きたてのゆで卵の如くぷにぷにすべすべで一切の穢れを許さない。大きな瞳はくりくりと輝くき見るものを魅了し。蕾のような桜色の小さな唇はみずみずしく愛らしく。保護されるためだけに生まれてきた、愛されるためだけに存在している、と言われても納得してしまう。その小さな身体にもし純白の翼が生えていたのなら誰もが天使と認めるだろう。




そんなゴールドエクストリーム幼女完全体みたいな存在が、困った様子の勇者を見下ろしキャッキャと笑っている。















「は?」


誰かが言った。いや誰もが言ったのかもしれない。勇者と幼女を除く全員が。


我関せずと寝転がったまま頭を抱えて勇者が呟く。


「あ~~俺の集大成をこんなところで披露することになるなんて………街中で炸裂させたかったのに!」


ちょっと待て。それは最早テロじゃなかろうか。


「ねぇ、勇者?それは何なのかしら」


そう尋ねる魔法使いの声は既に絶対零度だ。


「お?すげーだろ!回復魔法って要するに成長の促進だろ?そこに時空魔法組み込んでさ、肉体を活性化させつつも逆行化させるって訳よ。魔法同士の反発を抑えるのが難しかったわほんと。活性化の流れを加速させつつ、その芯に時空魔法を反回転させて肉体を逆行させるって寸法な?で、できたのが【アリス・イン・ワンダーランド】よ!どーよこれ!!もはや芸術っしょ!?本人への負荷は皆無!!もれなく女性はロリになります!!着ていた服はご都合主義とか因果律をなんやかんやして世界の修正力を衣服にだけ向けさせてジャストフィットでポロリもないよ!俺は愛でたいだけでエロス望んでるわけじゃねぇからな!紳士なんでね」


饒舌で早口な勇者を見る皆の目は冷たく、多分そういうことでは無い。





「相変わらず才能を無駄遣いというかゴミにするのが上手いわね」


魔法使いのキレッキレの罵倒に勇者はにししと笑い、それを真似して幼女も笑う。


「……で、貴女は魔王の娘……でいいのかしら」


「うん!あたしまおだよ!!まほちゃん(魔法使い)ひさしぶり!みんなもひさしぶり!」


「お?記憶はそのままのはずだけど精神が肉体に引っ張られてんのか。なるほどなー改良が必要かー。なんにせよ挨拶きちんと出来てまおは偉いなー?」


「んぅ?まおえらい?そっかーえらいのかー!ゆーくん(勇者)あたまなでてもいいよっ!」


「よーしよしよし」




何人かが頭を抱えるが、戦士は爆笑している。


「それにしても、あの魔力量込めると、咄嗟に無害な魔法がこれしか思い浮かばなくてさぁ…いやぁ成功して良かったわ」


「ロリコンはそこにいるだけで有害なのよ。自覚を持ちなさい」


魔法使いに容赦とか遠慮とかは存在しないらしい。





と、ゴゴゴゴゴコと地鳴りの様な擬音がしたかのように空気が一変した。魔王から発せられるプレッシャーである。

ゴクリ、と誰かの喉が鳴る。これが魔王の本当の圧だと言うのなら、さっきまでの戦闘は児戯にも等しい。



「――――――ゆ」


「「「「ゆ?」」」」




「―――勇者よ……良くぞやったと褒めて使わす。てかロリまおとか最高かよお前。もうこれ天使だわいや魔族だし堕天使だわお前ほんと最高だな感動して語彙力死ぬわこれ、でいつ解除されんの?」


「おうよ、最高の職人芸だろ?時間巻き戻しただけに近いから普通に成長するぞ。あとは本人が元に戻りたいって思えば解除される」


おい魔王口調口調。



「まじかよまじお前最高かよロリまおと思い出また作れるとかお前が神か」


「いやただの勇者だよ」


「儂ただの魔王だけど崇拝するわ」


サムズアップし合う勇者と魔王。2人の間には友情よりも熱い何かが結ばれているようだ。というかお前らのようなただの勇者とただの魔王がいてたまるか




「あー、とりあえず、まおちゃんはこっちに来るっすー」


「ふーちゃん?(盗賊=シーフ)はーい!」


何かを察知した盗賊が素早くまおを回収し


「さて私は結界を最高強度で貼りますね?戦士さんはフォローをお願いしますね」


「おぉ、何が飛んできても通さんぞ!!」


そそくさと僧侶は結界を貼り始め、戦士も僧侶の前に力強く陣取る。


「えっと僕は…って魔法使いさん!?それh「回れ空、廻る歯車、魔割るのは吾が手、魔は我にて我は魔。魔にして天の代行者なり」


魔法使いの詠唱は、先程の勇者の時とは違い魔法陣が手元や眼前には浮かばない。浮かんでいるのは遥か上空に、小さな街なら埋め尽くす程の大きさの魔法陣が幾つも張り巡らされていた。


のちにその空を見た人々は「跪きたくなるような光景だった」と語っている。



そろそろと皆が離れていくが、勇者と魔王は熱く語り合っていてその様子に気づかない。それを見て更に魔法使いの視線は冷たくなり、詠唱が続けられる。


「天の流れの輝きは星、星は流星になって天から地へ、大気渦巻いて光の矢と成れ。有象無象を塵へ帰し、森羅万象を命に還す。命は巡り巡って巡る空へ。空を切り裂く裁きの星。――――――――――天罰術式第942節【洛陽】」



がっちりと握手を交わすバカ2人(勇者と魔王)に、全力詠唱の魔法が、紅みを帯びた光の柱となって降り注いだ。


「性犯罪者は処理しないと。塵も残さないでね」


ぼそっと呟いた魔法使いの言葉に皆が苦笑いを浮かべた。










―――――――この日、魔王城は半壊した。


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