人から見た自分の印象は自分じゃ分からない件について
「…きて、起きて!」
「ん…?」
いつの間に寝ていたのか、少年は薄らと目を開ける。と、そこにはドアップの女の子。
「っ…!?」
声にならない悲鳴に似た声を上げる。女の子の顔が近くにあってビックリしたのか、人が近くにいたからビックリしたのかは分からないが少年が頭を上げてしまい、女の子の頭と当たってしまう。
2人共が額を押さえると、ケモミミ少女の呆れた声が上から降ってくる。
「だっせぇ。」
「もう!居たなら、この子の事ちゃんと起こしといてよ!」
寝起きの頭の中でも段々と状況が把握出来てくる。
ケモミミ少女と話している女の子は、ビビットピンクの髪の毛を腰の当たりまで伸ばしてあり、フワフワとした毛並みをしている。瞳はまるで炎のように赤い。
よく見ると服はメイド服のようで、この場所の使用人か何かなのだという想像がついたが、
それよりも、いつ入ってきたのかという事と人が目の前にいる恐怖の方が勝っていた。
少年が、少女達のやり取りを少し目を逸らしながらもチラッと見ると、それに気づいた女の子がこちらに向き直り、「コホンッ」と一つ、咳払いをする。
「私はここの使用人の、ローズよ。一時的に貴方の世話役に任されたの。」
「…。」
まだ、何も分からずちんぷんかんぷんな少年は首を傾げつつも、コクリと頷く。目を合わせないだけでも少し恐怖を抑えることが出来た。
ローズと名乗った少女は、少年にここに連れてきた経緯を伝えた。
「貴方には、この世界を救って貰わないといけない。だからここに連れてきたの。
ここの元当主であった人の遺言でね。」
「世界…?救う…?」
(なんでそんな大層なことを押し付けられそうになってるんだ、僕は…。というか、元当主だかなんだか知らないけど、僕を巻き込むのやめてよ…。)
そんな事を考えながら少年は思考を張り巡らせた。
(第一、これが現実である可能性の方が低い。
寧ろ、アニメや漫画でよくある「夢オチでした(笑)」なんて可能性の方が高いじゃないか。)
そう考えては見るもののそれよりも死後の世界の方が可能性が高い気がしてくるのである。
しかし、死後の世界だと推測すれば「この世界を救う」という言葉が当てはまる気がしないのだ。
少年が考え込んでいると、それに気づいたローズが一言いう。
「貴方、何考えているのかは知らないけどこの世界救うまで帰れないわよ。」
「え。」
一瞬、少年が動きを止める。
しかし、元の世界に帰れないのは少年にとっては悪い事ではない。寧ろいい事である。
そう思うと、少年は1人で考えをまとめ、うんうんと頷く。
ローズとケモミミ少女に、怪訝そうな目で見て頭の変な子、というレッテルを貼られている事は少年は気づいてはいないようだった。
結局のところ、ここが何処なのかは分からずじまいのままである。
取り敢えず、少年が変なことに巻き込まれているというのが現時点で分かっている少年の置かれている状況である。
人と対話した事で疲れたのかハァッと溜息をつくと、部屋の扉のノックがなる。少年は、他に人が来たのか、と少し身体を跳ねさせるが自分自身に大丈夫だ、と暗示をかけ、扉の向こうにいる誰かに声をかける。
「は、い…。どうぞ…。」