つまらない世界に終止符を打った件について
ズダダダダッ
ズダダダダッ
部屋に響く銃の音。
この部屋にあるのは
とてつもない量のゲームカセット、ゲーム機
カップ麺や冷凍食品、
ケーキやシュークリーム。
それに、大量のゴミ。
パソコンが何台もあり、その画面にはWINの文字が浮かんでいる。
一人で操作していたと言えば嘘だろうと否定される数を一人の少年は淡々とこなしていた。
現実では出来すぎたが為にイジメという名の差別を受け、自分が悪かったと自暴自棄に走ったこの少年はその時にハマったゲームと言う二次世界に夢中である。
現実はつまらないがゲームは楽しいと思っていた少年だが、今はそんなことも無いらしい。
「つまんねー…」
そんな事を口に出す少年は、あんなにも偏った食事をしているに関わらず、細身な身体付きをしている。
筋肉は多少はあるようだが、今どきの男児にしては華奢である。
満18歳にも達していない、
言わば子供の年齢である少年にしては青春の一文字も感じさせない生活をしている。
少年は頭の回転が早く、脳から運動神経まで到達し筋肉を動かすというスピードは人類最高と言っていい程だ。
そして、少年はそれを生かしゲームに勝ち越している。
ネットゲームでは、今までで負けは無いだろう。
そんな最強な少年はキャラ名がゲームによってまちまちである。
時には少女のような可憐な名前。
時には熱血系のような情熱溢れる名前。
時にはお年寄りのような名前。
そんな少年のことを他者はこう呼ぶ。
『disguise』
どれが少年か、戦って見るまでわからない。
変装しているのと同様、名前を変えているならどれが少年でどれが少年では無いのか、見分けがつかないからこそ、この通称だ。
実際、少年はその二つ名を結構気に入っているらしいのだ。
少年が次の対戦相手と対戦する時だ。
何処かで爆発音が響く。
「っっ!?」
何事だと少年が窓を開ける。
外では火の手が上がっている
少年のいる部屋は二階。
まずい、そう感じた少年は出来るだけ多くのゲーム機やカセットを鞄に詰め込む。
タブレット端末とスマートフォンを手に取り、コンセントに差しっぱなしだったゲーム機やスマートフォンの充電器を外し
絡まるのを承知でそのまま突っ込む。
既に火は階段まで進行中だ。
少年は遠いもう一方の階段で降りようと思うが、この分ではもう、下はボロボロでも可笑しくない。
上に登り、ヘリか消防車が来るのを待つしかないと判断し、上へ向かう。
三階まであり、その上に屋上がある。
そこで助けを待つか、そう決断する。
しかし、少年は気づいた。
気づいてしまった。
何故誰も少年を助けに来ないのか。
少年を呼び掛ける声がしないのか。
消防車も警察も来るのが遅いのか。
『あぁ、そうか。僕は……』
少年の存在は、家族にも否定されたのだ。
ことごとく、否定され続けたのだ。
まぁ、少年はもう家族の顔すら、覚えてはいないのだが。
少年の部屋にも火の手がかかる。
煙があたりに充満している。
少年はあぁ、もういいやと。
つまらない現実とは最後だと。
つまらなくなったゲームももう最後だと。
煙を吸い込む。
バタンっと倒れ込んだ少年は、ゲーム機やカセットに囲まれて
「つ、まん、ね……」
息絶えた。