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第四話 秀路、動き出す

 大変失礼しました。ちがうシリーズにうっかり投稿してしまいました……。とりあえず、どうぞ改めてご覧くださいませ。

 二週間経ったら暑くなっていた。どうやら転生したのは春も終わりの頃だったらしい。オークとの生活に慣れた俺は手始めに空き地を一周する小さな庭園鉄道を計画する。空き地のサイズは一・五キロ×三キロという広さがあるのだが、池に橋をかけたり、わざと勾配を作ったりと運転の醍醐味が味わえるようにしたいと考えている。

とはいえ、いきなりもといた世界の営業運転をやっている鉄道サイズのものを作っては素材が尽きてしまう。だから、いずれこの世界の人々の目に触れるようになって協力者が出てくれば解決できるのでそれまではスケールダウンしてやっていくことにしたのだ。


「まずは線路を作ろう。オーソドックスに楕円形に工房への枝線をつけてやる形にすればいっか」

 まず、土魔法で線路の通る部分を固める。次に森から切り出した丸太を枕木サイズに整えてバラストの上に等間隔に置き、倉庫からバラスト用の砕石を持ってきてその上に敷く。最後にそれらを均したり、つき固めたりするなどして調整した後、レールを犬釘で枕木に固定してやれば完成だ。もちろん一人ではできないから一連の作業を一つ一つオークたちに教えていきながら進める。ちなみに今回敷いたレールの幅は三八一mmゲージというテーマパークや一部の博物館などで採りいれられている実用最小サイズのものだ。

実際に正式な鉄道として今後普及させようと思っているサイズには程遠いけど、素材の量の問題があるし、今回はあくまで自分の技術の再確認やあとで人が来たときの説明用として作るにとどめるからこれでいい。なお、分岐点と枝線のところだけは自分でやるのでその場所だけは空けておくように伝えた。

 一通り、やることをオークたちに教えた後、まず牽かせる車両を作る。車両が軽いからオークの力ですぐに復旧できるし、森の入口から工房までの短い距離とはいえ、木材やら狩ってきた獲物を運べるようになればだいぶ楽だ。まだ作るのに時間がかかるからしないけど、蒸気機関車ができれば燃料用に池から水を汲んでくることもできるようになる。

 そんなわけで手押し式のトロッコを数両作った。箱型の木製車体で足周りは車軸が二軸のとても簡単なものだ。車端部にはピンをつけておく。ここにはめ込むことで連結ができる棒連結器も用意した。これで機関車ができた時の準備も万全。あとは機関車を作るのみとなった。


 トロッコが出来上がると、ちょうどオークたちも線路を敷き終えたようだ。分岐点を一緒につくって、枝線を工房内まで引きこむ。これで今後の機関車開発に向けた準備は終わりだ。

 トロッコの試運転が終わって問題がないことが確認できるとオークたちに使い道を教えてから自宅兼工房に戻る。久しぶりに機関車を作るので神様に持ってきてもらった自分の記録用ノートを書斎から引っ張り出して図面を引く。

 今回設計したのは動軸2、軸配置〇―B―〇の機関車だ。見た目には樽みたいなボイラーが動輪の上に載っているちょっと不格好なスタイルだ。まあ、大昔に小学生向けの教材として作られた模型機関車をモデルにしているのでスタイルはともかく、簡単な構造かつ堅牢なつくりであるのがウリなので最初に作るにはもってこいだろう。注意しないといけないのは教材のそれよりもはるかに大きいサイズであることだが。

「やっぱりさすがに一人じゃ、作れないよなあ」

 いくら実用最小ゲージとは言っても機関車の大きさは軽自動車一台分相当はある。とりあえず図面を引き終えた秀路は倉庫から材料を運び出すため、三十頭いるオークたちを呼んだ。ちょうど半分は狩りに出かけていていないが、十分である。オークたちに資材をもってもらいながら機械を使って部品を作り上げる。

 さすがにすべての部品を一日で用意するのは不可能であるため、日が暮れる前にオークたちを解放し、図面に間違いがないかを確認してから寝るというルーチンでオークたちも狩をする班と機関車作りの手伝いをする班の二つにわけ、約三カ月かけて組み上げるスケジュールで進めていく。

 もちろん毎日進めるわけではなく、合間に休みの日を設けてオークと一緒に出かける。すっかりオークたちは手押しトロッコを使いこなしており、最近ではレールを欲しがるので与えると自分たちで森の東側に向かって枝線を作って延ばしていた。

 これのおかげで魚をもってくるようになったので近くに川があるのが分かった秀路はタンク車を作って水を汲ませたり、砕石が足りなくて直に土の上に敷いていた枝線のレールを革で採れる石を砕石の代わりに敷いてやったりした。

 それ以来、オークたちはこの枝線を使って森の東側で狩りをするようになった。また、現在風呂用に使っている池の水が枯れないように代わりにその魚を取ってきている川から水をくんでもらうようにした。ついでに斧が壊れる回数が増えたが。

 気がつくと季節が変わり秋になった。落ち葉が多いし、いい加減肉とか木の実や野草ではなく、ちゃんとした食べ物を食いたいところ。すっかり自宅の冷蔵庫は肉か洗った野草以外に保存している物がない。神様のおかげで最初はあった米も慎重に節約して食べてきたがもう残っていない。本当に猟師みたいな生活をしている。天

「そろそろ米と言わずパンとか食べたい。まあ、湯気や煙の出る家でけっこう長く過ごしているのに未だに人と接触しないあたり、僻地なんだなあ。ここ」

 そうはいうものの自分から接触しに行こうとしないあたり、この男は自由人である。オークたちとじっくり腰を据えて造っていたSLがようやく完成するというのにオークと秀路以外にそれを祝う者はいない。

「ま、いいか。それじゃ、試運転といきますか」

 工房の外にオークの力で押し出してもらった後、石炭をあらかじめ均一にくべておいた火室に魔法で火を付ける。火室の中がまんべんなく、燃えたらタンクに水を入れて水バルブを開けてボイラーに注水する。水位計を見て一定の量に調整したあとはしばらく石炭を追加で少しずつ投げ入れていく。

 圧力計の針が上がりだし、しばらくするとドレインコックを開けてシリンダーから蒸気を吐き出す。そうすることで配管を組み上げる際に出た金属のくずを一緒に吐き出してきれいにするのだ。

 それが収まると、今度はスパナをもたせたオークをボイラーの上に立たせ、秀路が圧力計を見ながら声をかけて安全弁を締めてもらう。こうして準備ができると、機関車についたブレーキを緩めたり、込めたりを繰り返してテストを行う。

 問題がないことを確認するとブレーキを緩めて加減弁を開けて発車させる。本線上に出たらいったん止めて分岐器を切り替えて本線を周回状態にして、連結器を付ける改造をしたトロッコを後ろに付ける。

 それが終わると再び発車させる。一周走らせて問題がないことを確認すると停車し、石炭をくべ直す。小さいから一人でもくべられる構造にしてある。もっともいずれは機関車が大きくなって石炭をくべたり、水を入れたりといったボイラーの管理を行う助士を含めた二人乗務でやっていくことになるが。

 ぐるぐる周回するのが楽しくなってしばらく走らせていたが、いつも狩りで手に入れた魔物や魚を運んでくれる東の枝線に途中で入れてびっくりした。しばらく蒸気機関車作りにかかりっきりで見ていないうちに、いつの間にか橋ができていた。

いったいどこで知識を得たんだよこれ。すげえな、こいつら。通れるのか分からないので引き返してオークたちを連れてくる。トロッコの一両を切り離して機関車の前に置いてもらい、押して通ってみる。

全く問題がない。満載状態ではどうか。周りの土を掘って山盛りにして積んでオークに押して通ってもらう。問題なく通れる。そういえばオーク自身の体重が俺なんかよりも重いのを思い出して、何頭乗れるのか試してもらったところ機関車が通っても問題がないレベルで乗ることができた。

なんてこった。こいつら、できるやつだ。丸太の橋だから将来掛け替えは必要だけど素晴らしい出来だ。機関車も通してみたが、びくともしない。というかこれほど頑丈な丸太、どうやって確保したのだろう。

「これ、どうやってつくった?」

 オークたちに聞くと斧をもったやつの一頭が丸太の一つに向かって伐りかかる。小野の大きさに合わないが、他の奴が切りかかったところを広げていく。道理で最近、斧が壊れて直す機会が多かったわけだ。より大きな斧を作ってやることにした。

 橋を越えた先も森は続いている。いったいどこまで続いているのやら。とりあえず、渡ってすぐの線路の行き止まりまでいく。小川は相変わらずきれいだ。そういや、この川もどこへ向かって流れているのだろう。北方向に向かって流れているから始点はおそらく工房からも見える南の山の方だろうが。

 川の調査はまたの機会としてそろそろ日が暮れるので工房へ引き返し、みんなで風呂に入って寝ることにした。工房についた時にはすっかり夜だった。車庫にする予定の引き込み線を作ってそこに停めて燃料を全部燃やしきってから機関車の火を落とす。その間に夕食を食べる。屋根と骨組みをを建てて機関庫づくりの準備を終えて寝た時にはクロックバードも寝てしまっていた。

 翌朝、簡単な手漕ぎボートを作って専用の貨車をつくって載せる。さすがに機関車を使っていって長時間停車させて放置するわけにもいかないので今日はオークたちと一緒に線路を歩く。ちょうど橋が近づいてきた時、になにやらレールと橋をじろじろ見ている人影が見えてきた。

「そこの君、これはいったい……」

この世界の住人との初めての出会いだった。


 この話のゴールがとりあえず決まったのでこれから一ヶ月以内に次話を投稿するという目標を立てて動いて行こうと思います。できるか怪しいけど()

 それでは、また次話でお会いしましょう。

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