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第一話 秀路、神と出会う

こんばんは暁海洋介こと海軍士官です。予告通り、第一話を投下いたします。テンプレ通りと言えばそれまでですが、いわゆる準備回です。どうぞ。

「どこだ。ここは」

 橋から投げ出されて意識を手放した俺は気が付くと白い空間に居た。見渡す限り白い空間。

「気が付いたか」

「……あんたは?」

「ワシか? ……説明しにくいが、お前さんたちの世界の解釈で言えば神とでもいうべきものだ」

 振り返ると白髪の老人がいた。神を自称する老人らしい。まあ、こんな真っ白な空間にいるぐらいだし、それはたぶん本当なんだろう。それにあんな事故に巻き込まれたのだから、五体満足で生きているわけなかろう。

「……神様ねえ。ならば、ここは死後の世界ってか?」

「まあ、そういうこった」

「ふーん。それで? 神様が何の用で?」

「ちょっと頼みごとがあっての。聞いてくれるならばお主の望みをかなえてやろう」

「ふーん。それはどんなものでも?」

 中学時代に読んだ小説みたいな展開に、頭の中で一瞬、鉄道員になりたいという夢が再燃した。

 とはいえ、そんな王道的展開ならば死んだ人間が元の世界で生き帰れる保証はないだろう。どうせならば一鉄道員なんてちゃちな夢じゃなくて蒸気機関車の王国を作るぐらい大きい望みじゃなきゃダメだ。

「……ほう。元の世界に返せと言わんとは、お主は素直じゃな。お主の前に同じことを聞いた連中はうるさくてしょうがなかったのにのう。まあいい。頼みというのはある世界へ行って、文明を進歩させることじゃ。すでにお主が考えているその望みもワシの頼みにそぐうことじゃから、ある程度しか支援してやれんが叶えてやろう」

 言ってもないのに頭の中で鉄道を作ることを思い描いていたのがバレた。マジで神様なのか。これで元の世界に帰れないのが確定してしまった。まあ、今さら元の世界に帰っても鉄道員になれないのが分かりきってるし。それでもいいか。

「へえ。その世界はどれぐらいの文明レベルなんだ? 鉄道を自由に作って思うようにしてもいいと言うぐらいだから相当なんだろうけど」

「そうじゃな……。これからお主を送る先の世界はいわゆるお主たちの世界で言うところのふぁんたじー世界というやつじゃ。魔法と剣技は浸透しておるがあとは大砲くらいしか戦に関する技術は進んでおらん。もちろんモンスターの類もおる。移動手段も馬車が一般的での。産業は完全に人海戦術で鉱山を国か領主が経営する以外は機織りと鍛冶ぐらいしかないくらいじゃ。なまじ魔法の開発が進み過ぎておるからお主らの世界の大昔の状況とさして変わらん。昔送りこんだ者のおかげで少しは進歩したんじゃが、壮大な大ボケをかましてくれたおかげで発展の余地があるにもかかわらず閉塞状態が数百年以上続いておる。ゆえにお主のいる世界から本来の寿命よりも早くに死んでしまった力ある若者を送り、活力を与えてやらねばならん。だからその鉄道を導入することはこちらとしても望むところなのだよ」

 なるほどね。剣と魔法の世界ね。下手するとこりゃあ、蒸気機関を発明するところからやらにゃあならないから相当に時間がかかりそうだな。何年かかるのやら。まあ、自由にあれこれやって構わないのなら鉄道王になってやろうじゃないか。

「ふーん。話はわかった。俺でよければやらせてくれ」

「よろしく頼む。さしあたって、準備がいるじゃろうから何かいる物があるならば申してみよ」

 神様にそう言われて少し考える。まあ、まず蒸気機関を作るにもレールを作るにも素材がいる。たった一人でどうこうするのは無理がある。だが、まずその素材を手に入れるためには力を持って稼がねばならない。それに、鉄道を普及させるためには権力もいる。蒸気機関車の王国を維持するためには少なくとも最終的にやってくる無煙化への備えが必要である。あとは、やはり長生きをしたい。長く生きることができればそれだけ向こうの世界での生活の知恵もつくし、人脈も権力も獲得しやすい。もちろん、ただ長生きするだけじゃなくて老化が緩やかな方が望ましい。不老不死にまではなるつもりもないけど。そんなことを考えて必要なものをまとめ終え、伝える。

「……そうだな。まずは物作りに必要な知識だな。あいにく鉄道員になるための勉強しかしてないから他の事に疎いんだ。それに、一から道具まで作らないといけないのはきついからその辺を補助できる知識というか力というかそういったものがあると助かる。あとは、なるべく長生きできる種族に転生させてくれ。中世レベルの寿命じゃ満足に面倒が見れない可能性もあるからな。それくらいか」

「ふむ。匠としての力と長寿か。戦に関しての力や知識はいらんのかね?」

「それはそこまで要らないかな。最低限自分の身が守れればいい。力があり過ぎても戦いに関してはロクなことにならないからね。むやみに敵を呼び込むようなことになりかねない」

「あい分かった。では、種族はエルフとしよう。見た目にはさして人間の頃と変わらんがな。匠としての力に関しては送り先の世界にワシが工房を作っておくからそこに住んで知識を得ながら物を作るといいだろう。あとは、従者を得る能力を与えておく。戦ごとに関しては向こうで知己を得るか、与えた力を使って武器を作るなり、モンスターを従えるなりするといいじゃろう。これでいいかね?」

「ああ」

「それでは送るぞ。達者でな」

「おう。おっさんの望み通りになるかはわからないけど頑張ってみるよ」

 こうして、俺は白い空間から出されてまだ見ぬ異世界へと旅立った。蒸気機関車王国を作ることを夢見て。


 さて、いかがでしたでしょうか。まだ主人公の設定に自分が慣れていないのでしばらく言動にブレが生じると思います。まあ、いずれ話が進んできたら直しますが。

 次話投下は来週の土日を予定しています。若干前後するかもです。予めご了承ください。それでは、次話でお会いしましょう。

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