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殺人世界  作者: 一ノ瀬樹一
紫闇の魔人 編
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ナーサとダスラ

 双子の女はナーサとダスラと名乗った。

 かわいい姉妹に、僕は少しばかり緊張をしていた。

 でもこの異世界に送られた人間は、死刑囚が終身刑の犯罪者しかいない。

 つまりは彼女達も犯罪者だったことを意味している。

 さてここで、ちょっとした疑問が生じた。

 僕みたいな未成年が死刑囚になることは極まれなことで、このナーサとダスラが犯罪者には見えなかった。

 まあ、そんな疑問はここでは忘れよう……。

 

 それ程までに彼女達はかわいかった。

 

 「ご主人様、またいやらしいことを考えていますね」

 「い、いやらしいことなんて考えていないよ」

 「嘘です!心拍数が上がり呼吸が荒くなって、変態特有の特徴が表れています!!」

 

 本当、この嘘発見機能は要らない機能だ。

 僕の知れたくないことばかりに、敏感に反応する。

 ミネバの言葉に先に反応したのか、ダスラが口を開いた。


 「大変なことをしてくれたな、この変態!」

 「へ、変態!?……おいおい、それが命の恩人に対する言葉か??」

 

 ダスラは辛辣に僕を罵った。

 思わず声を荒げてしまった僕に、ナーサは頭を下げて取り繕う。

 

 「ごめんなさい。ダスラが失礼なことを申しまして、私がお詫びいたします!」

 「…ま、まあ、そこまで謝るなら……僕も声を荒げてしまってごめん」

 「……………ふん……………」


 ナーサの後ろで、プクっと頬を膨らましてダスラをそっぽを向いた。

 その態度にこっちがイジケたいぐらいだったが、ナーサに言った手前、僕は我慢した。

 見栄っ張り――と、ミネバが小声でツッコミを入れた。

 

 この姉妹は双子で見た目に違いはないが、正確はまるで正反対だった。

 ナーサはお姉さんで、優しく社交的でお嫁さんにしたい感じの女性で、その上巨乳だ。

 一方のダスラは、プライドが高く負けず嫌いな性格で、はっきり言って苦手なタイプだ。

 この凸凹の二人が姉妹だとは信じがたいが、ある意味その方がバランスが取れているのかもしれない。

 現にこの姉妹の仲は、とても良さ雰囲気だった。


 「しかし…ダスラの言うことも一理あります。空様、今すぐこの都からお逃げ下さい!」

 「へ!?」

 

 確かに大変なことをしてしまったかもしれないが、この異世界は殺人ゲームを公認している世界だ。

 あの男が復讐に来たら、むしろ返り討ちにしてやろうと思っていた。

 まあ、僕に腕を切り落とされるくらいだから、殺人ランクもたかが知れているだろうしな。

 だが、ナーサの話を聞いて、そんな単純な話ではないことを知った。


 「空様が斬り付けたあのお方は、ガル・ジュレイスと申します獣人族セリアンスロープの貴族です。ガル様は殺人ゲームに参加していますが、殺人ランクはそれ程高くはありません。しかし…ガル様には王族のフィアンセがいまして、その方が仇を打ちに来るはずです……。

 セシリア・ゴルセイル第六皇女、殺人ランク八五0位の『百獣ひゃくじゅう皇女こうじょセシリア』です」

 「……………………」

 

 殺人ランク八五0位!!!!

 殺人ランクが三ケタを下回る者は、その実力が極端に変わってくる。

 サーベイトがパーティーを組んでいた理由もこれに当たる。

 集団で対抗しても勝てない、それが三ケタの者との実力の差なのだ。

 冷や汗が額から流れるのを感じた。

 

 「だから空様、お逃げ下さい。セシリアに見つかる前に、このゼノールからお逃げ下さい!!」

 「しかしナーサ、僕にはこの都に用があって来たんだ。占い師のコパに会うまでは、この都から離れる訳にはいかないんだ」

 「……コパ?……コパ様ですか!?」

 「そうだ、知っているのかナーサ!!」


 思わず熱が入り、僕はナーサの肩を掴み顔を近づけた。

 ナーサは顔を赤く染め、目線を逸らす。

 コパの居場所を知りたい僕は、仕切りに居場所を聞き出そうと嫌がるナーサを離すことはなかった。

 その時、後頭部に痛みを感じた。


 ゴンっ!!!!


 鈍器で殴られたような痛みに、頭を抑え蹲る。

 振り返ると、ミネバとダスラが冷やかな視線を送りこう言った。


 「変態……」


 どうやら誤解をさせてしまったようだ。

 反省して心を落ち着かせる為、深呼吸をする。

 

 スっーーー、ハーーー。

 スっーーー、ハーーー。


 「こ、こいつ、ナーサの匂いを嗅いでる。この変態!!!!」

 「そんなことするかー!!!!!!」

 「でも、いい匂いだったでしょ」

 「…ま、まあ、確かに………」

 「やっぱり!!!この変態!!!!!!!!」


 僕の変態説は誤解を解くどころか、増々加速してしまった。

 こういうのを『募穴を掘る』と言うのだろうか。

 どちらかと言えば、『穴があったら入りたい』気分だが……。

 

 「わ、私は構いませんよ!…でも、お風呂……お風呂に入ってからでよろしいですか?」

 

 ナーサがフォローに入ったが、それが返って惨めにさせた。

 僕はコホンと咳をして、逸れてしまった話を戻した。


 「それでナーサ、コパの居場所を知っているのか?」

 「…はい。しかしコパ様は……もうこの都にはいませんよ」

 「え!?」


 ナーサは言う、この都に占い師コパはいない。

 

 それじゃあ、コパは一体どこに行ってしまったのだそうか?

 

 

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