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殺人世界  作者: 一ノ瀬樹一
紫闇の魔人 編
14/62

全ての真相

 やっとの思いでゾイニの街に着いた僕とミネバ。

 帰りの道中に、ミネバの好奇心に振り回せれて、正直疲労困憊だった。

 ミネバは過去の記憶の一切を忘れてしまって、見える物すべてが新鮮らしい。

 僕もこの異世界に来た時は、川の綺麗さに目を奪われたりもしたが、今となっては気にも留めなくなっていた。

 順応性が高いと言うか、慣れとは恐ろしいとつくづく思う。

 

 空には太陽が昇り、時刻は午前十時くらいだろうか、それにしても疲れた、早く宿屋に行って休もう。

 街の大通りを宿屋に向けて足を進めると、宿屋の前で立ている一人の女性が目に入った。

 次第に近づき顔を確認して驚いた。

 宿屋の前に立っていたのはエリーだった。

 正直エリーには会いたくなかったが、彼女もこちらを向いているところから、僕に気付いているようだ。

 ここで引き返す訳にもいかず、僕はエリーに声をかけた。


 「や、やあ…エリー。……こんなところで会うなんて奇遇だね……どうしたの?」

 「空君、ちょっと付き合って」

 もちろん恋人としてではなく、話があると言う意味であった。

 エリーに連れられ酒場に着き席に座る。

 こんな時間から酒場が開いているが客は一人もいない。

 まあ、こんな時間から酒を飲んでいる者がいるとも思えないが…。

 エリーが場所まで変えたのには、誰にも聞かれたくない話だろうから、このシチュエーションを想定していたのだろう。

 食欲もなかったので注文する気はなかったが、エリーが適当に飲み物を頼んだ。

 店員が飲み物を運び終わったところで、エリーが口を開いた。

 「サーベイトを殺したそうだね……その子が炎を纏う武器だったのかい。まさか、女の子だったとはね」

 エリーは、僕の横に座るミネバに視線を送った。

 ミネバはピクリともせず、無表情でエリーと目線を合わせる。

 「そ、そ、それよりエリー、話があるんじゃないのか?」

 エリーがいつになくシリアスな感じだったので、緊張のあまり声が裏返ってしまった。

 誰もそのことにツッコまないので、自爆した形になってしまった。


 ……はぁ、息苦しい……。


 「…空君、サーベイトがあの火山に来た理由を君は知っているの?」

 「いや、僕は知らないけど……エリーは、知っているんだよな」

 そう僕の推理ではサーベイトが火山にいた理由も、大島津がいたのも全てエリーが知っている。

 もしかしたら、知っているだけではなく関与しているかも知れない。

 エリーの答えが気になった。

 「ええ、私は知っている。……でもまさか、あなたがサーベイトを殺すなんて思っていなかったわ」

 「それは――」

 僕の言葉を遮るように、エリーは人差し指を僕の唇に当てた。

 エリーの指の感触に、思わずドキっとしてしまった。

 

 「マスター鼓動が早くなっています。何かの攻撃を受けたのでしょうか?」

 「な、な、な……なってないから!!!!」

 「それは嘘です。心拍数と発汗、それと言語からマスターが嘘を付いていることを証明します」

 おいおい、こいつは嘘発見器か?

 『空気を読める機能』とかはないのか!!

 取扱い説明書が一緒に埋っていれば良かったのにと、心から思った。

 

 エリーはコップをいじり、僕とミネバのやり取りが終わるのを待っていた。

 「…終わったようね。それじゃあ、私の話を聞いて」

 コップから手を離して、姿勢を正した。

 「先ずは謝らせて頂戴。…サーベイトが火山にいたのは私のせいなの……。大島津は強く、私では復讐をすることは出来なかった。そこで、偶然知り合ったサーベイトを騙して大島津を殺させた。

 あのトカゲは左手を奪った男を探していた、あいつには人間の区別があまりつかなかった。だから私はサーベイトに嘘を付いた。あなたの探している男は大島津だと……」

 

 エリーの嘘を信じたサーベイトは、ゾロリア火山で炎を纏う武器――つまり、ミネバを探している大島津に復讐を果たした。

 ところがサーベイトは気付いた、殺した相手が復讐の男ではないことを……。

 相当に頭に血が上ったことだろう、サーベイトはたまたま出会った僕に怒りをぶつけることにしたらしい。

 つまり八つ当たりによって、僕は殺されかけた。

 そしてサーベイトと殺し合いをしている間に、エリーは悠々と火山を後にしたらしい。

 相変らずしたたかな女だ。ここまでくると、むりしろ褒めたくなる。

 「それにしても、サーベイトは人間の区別もつかないくらいバカなのか?でも、外国人からすると日本人もみんな同じ顔に見えると言うし、その類なのかな?」

 僕の素朴な疑問に、ただのバカよ――と、エリーは喰い気味に答えた。

 

 「そんなことより空君、これから大変ね」

 「え?何がだ?」

 「これまで以上に命を狙われるから……」

 どういうことだ?エリーはその言葉の意味を口にした。

 「サーベイトは何人かのパーティーを組んでいたわ。仲間意識が強い連中だから、これまで以上に命を狙われることになってしまうってことよ」

 

 おいおい、殺人ゲームは個人戦じゃないのか?

 でも確かにパーティーを組んでいる連中もいると聞いたことがある。

 上位ランクの連中の強さに対応する為だったかな。

 そんな連中を相手しなければならないのか…。

 

 全部、エリーのせいじゃないか!!!!

 

 一言文句を言ってやろうと思ったが、先程座っていた席にエリーの姿はなかった。

 辺りを見回すと、すでに酒場の入り口に立っていた。


 「じゃあね空君。また会いましょう」

 背中を向け酒場を後にするエリーに、今度は声に出して叫んだ。

 「ただし、死ぬのはあんただけどな!!!!!!」


 ―― 阿千ヶ崎空、殺人ランク一五三二位 ――。

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