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殺人世界  作者: 一ノ瀬樹一
紫闇の魔人 編
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火山口と過去

 リザードマンについて、少し話をしようと思う。

 特性と言うのだろうか、僕のような人間とは生態系や習性が全く異なっている。

 特筆すべきは全身を覆われた固い鱗で、それ自体が天然の鎧となっていて、刃物に強いのが特徴だ。

 じっとりと湿った鱗の前には、僕の持っているなまくらな刀では効果を得なそうだ。

 そして、腕力についても相当な力を持っている。

 目の前のサーベイトの腕の太さと言ったら、僕のウエストよりも太く、まるで丸太のようだった。

 残忍で狂暴な性格と、戦闘向きな体を持つリザードマンだが、一つだけ弱点がある。

 それは知性だった。

 彼らリザードマンは極端に知性が低く、はきり言ってバカが多い。

 言語を話すことは出来るが、文字を書くことが出来ない。

 また、文化も著しく停滞していて、壁画のような絵を使ってコニュニケーションを取っているくらいだ。

 つけ入る隙があるとすれば、そこしかない。


 僕は大きな岩の上に立つ、サーベイトに話かけた。

 「や、やあ、星がとっても綺麗ですね?」

 本当に星が綺麗で、普段夜空の星を気にもしない僕でも、その美しさに魅了されてしまいそうなくらいだった。

 しかしサーベイトにはそんなことは気にも留めないらしく、僕の方を見つめたままだった。

 「オレカンケイナイ。オマエコロスダケダ」

 やはり知性は低いらしく、片言のような口調で僕を殺すと言ってきた。

 村のリザードマンでも、もう少し話が出来たが、サーベイトはどうやらそれ以上にバカなようだ。

 殺すと言うと同時に、サーベイトは左腕を僕に向けていたが、その左腕を見て驚愕した。

 サーベイトの左腕は義手と聞いていたが、実際には三又の鉤爪のような武器と化していた。

 切られた腕の部分に、無理やり刺し込んだような荒々しさが、恐怖を感じさせた。

 

 「今日は止めませんか?こんな夜中だし、明日にしましょうよ」

 僕は、何とかして殺し合いを回避しようとしたが、サーベイトには届かなかった。

 「ダメダ。オマエコロス!」

 サーベイトは身を屈めたと思った次の瞬間、空中へと飛び上がった。

 岩と僕の位置までには、十メートル以上の距離があったが、サーベイトには十分な距離だった。

 星や月の光を遮るように、サーベイトの体が僕に襲い掛かる。

 

 ドガッ!!

 

 間一髪、横に飛び込んで回避することが出来たが、その威力はすさまじく地面にサーベイトの左腕が突き刺さっていた。

 僕は刀を抜き構えたが、サーベイトのあまりの戦闘力に足が震えた。

 「ウッ…ヌケナイ」

 どうやら、サーベイトの力は、自分で思っていたよりも強すぎたらしく、地面から左腕が抜けなくなってしまった。

 おいおい、自分の力も制御出来ない程のバカなのか?

 僕はチャンスと思い、サーベイトに斬りかかった。


 バギュイーン。

 

 金属がぶつかるような音が辺りに響いた。

 サーベイトの鱗が固すぎて、刀の刃が通らない。

 ぶつかった時の衝撃が、僕の腕を走った。

 「ウオオ…イテエナ。オマエコロス」

 この攻撃に頭に血が上ったようで、僕の足を掴み力任せに投げ飛ばした。

 十メートルは投げ飛ばされただろう、僕の体は背中から壁に激突した。

 肺の中の空気が悲鳴を上げて、吐き出される。僕は呼吸が上手く出来なくなって、地面に突っ伏していた。

 その間にサーベイトは力任せに、左腕を引っ張り地面から抜け出していた。

 呼吸を整え、その場に立ち上がる。

 倒そうにも僕の刀ではあの固い鱗を断ち切ることは出来ないし、身体能力もサーベイトの方が上だ。

 やはりサーベイトと戦うのに、僕の力は未熟過ぎた…。

 逃げようにもサーベイトは山のくだりの立っているので、残された逃げ道は山の頂上しかない。

 僕は仕方なく、踵を返し山の頂上へと逃げ出した。

 幸いなことに、足の速さは僕と変わらないらしく、いつかのように恐怖の鬼ごっこが始まった。


 足が縺れそうなるが、捕まったら最後と必死で山の斜面を駆け上る。

 そして何とか山の頂上に着くことが出来たが、その光景に驚愕した。

 いや、絶望した。

 山の頂上には直径三十メートル程の大きな穴が開いていて、マグマがボコボコと煮えたぎっていた。

 その暑さもさることながら、落ちたら死んでしまうことを意味し、恐怖に体が硬直した。

 そしてさらに不幸なことに、これ以上逃げ道がないことも意味していた。

 

 僕はこの絶僕的な状況を打破する為、ある物を探した。

 そうピナが言っていた強力な武器、炎を纏った武器だ。

 辺りを見回したが見つからなかったので、火山口を覗き込んだ。

 マグマの温度は一般的に八00~一二00度と言われていて、離れているとは言えとても熱い。

 肺の中まで焼かれているようで、耐えがたいものだったが持っていた水を被り必死に探す。

 しかしどこを探しても、武器のようなものは見当たらず、僕は焦っていた。

 

 この状況にふと、昔のことが頭を過った。

 あの屈辱的ないじめを受けていた時のことが…。

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