表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
52/74

楽しいクリスマスを過ごしました。

 俺は明日香と琴美、それと猫の小雪と一緒に小雪を飼い始めてから初めて行ったペットショップへと訪れていた。このペットショップには初めて来てからずっとご贔屓ひいきにさせてもらっている。

 今日はクリスマスだから小雪にもなにかプレゼントをしたい――と言う明日香の提案でこうしてペットショップへと来ているわけだ。


「これなんてどうかな?」

「それも可愛い!」


 目の前では小雪に猫用の服をあてがう琴美と明日香の姿があり、かれこれもう20分以上はこんな調子でどの服が良いとか言いながら選びあっている。別に悪いとは言わないけど、本当に女の子ってのは買物が長いんだな。

 ネットの情報なんかで女性の買物の長さについての話を見たことはあったが、それはどれも俺にとっては都市伝説級に信じられない内容だった。

 例えば洋服屋で服を選ぶのに2時間くらいかかるとか、靴屋さんでも1時間くらいの時間を使うとか、俺にとってはどれも驚愕きょうがくの内容だ。

 しかしこうして目の前で女の子2人が猫の服一つを選ぶのに時間を費やしている様を見ていると、あながちネットで見た話も嘘ではないんだなと思えてくる。


「琴美お姉ちゃん、これも可愛くないかな?」

「いいね、可愛い!」


 再び別の場所から取り出した服を小雪にあてがいながら、大いに盛り上がる2人。どうやらもうしばらくは2人を見守らないといけないみたいだ。

 それから更に30分ほどが経った頃、ようやく小雪にプレゼントする洋服は決まった――。




「2人とも満足したか?」

「ごめんね、涼くん」

「ごめんなさい、お兄ちゃん」


 疲れた溜息混じりの言葉に、琴美と明日香がすまなそうに謝ってくる。

 あのあと小雪の服を選び終わった2人は、更にあれやこれやと他のコーナーを回ってはたっぷりと時間を使ってショッピングを楽しんでいた。

 その時の俺がなにをしていたのかと言えば、2人が各コーナーで楽しそうに商品を選んでいる様を見ながら、動物触れ合いコーナーで仔猫や仔犬と1人戯たわむれていた。まあ可愛くて癒されたけどな。


「まあいいさ、2人のおかげで小雪へのプレゼントもしっかりできたわけだし。良かったな、小雪」

「うにゃん」


 明日香が手に持つリードに繋がれた小雪が、足をちょこちょこと前に動かして歩きながら返事をする。

 今回の目的の主役である小雪は満足そうにしているんだし、俺に2人の行為をとがめる気持ちはさらさらない。


「ねえお兄ちゃん、せっかくだからスーパーで夕飯の買い物をして帰ろうよ」

「そうだな。外に出たついでだし、それがいいかもな」

「琴美お姉ちゃんもうちで一緒に夕飯を食べようよ」

「えっ? いいの?」

「もちろん、一緒に食べようぜ」

「うん!」


 琴美は嬉しそうに顔をほころばせながら大きく頷く。

 最近は俺も琴美が側に居ることに慣れたからか、前ほど緊張することはなくなってきた。

 明日香を中心に俺と琴美が左右を歩き、俺と琴美はその中心に居る明日香の手を握ってスーパーへと歩いて行く。

 それから約15分ほど歩き、俺たちは行きつけのスーパーへと辿り着いた。


「夕飯のおかずはどうしよっか?」

「う~ん……お兄ちゃんはなにがいい?」


 毎日の食事のおかずを決めるのは難しい。料理がまったくできない頃は有無を言わさずカップ麺やインスタント物だったが、料理を覚えてからはインスタント物を食べる機会はめっきり減った。

 これはこれで良いことだと思うけど、しかし自分で料理をするようになってからは、毎日のおかずのことで悩むことも多くなった。

 そういえば幼い頃に母さんが『毎日のおかずを考えるのが大変』――と、口癖のように言っていたのを思い出す。


「ん~、今日は麺って気分じゃないし……そうだ! 炊き込みご飯とハンバーグなんてどうだ?」

「いいね!」


 俺の提案に琴美が即座に賛成の意を表す。


「うん。じゃあさ、3人で料理対決してみようよ!」


 琴美が俺の提案に頷いたあと、続けざまに明日香がそんな提案をしてきた。


「料理対決?」

「うん。この前お兄ちゃんと見た料理対決番組みたいに、3人それぞれにハンバーグを作って品評するの」

「へえー、ちょっと楽しそうだね」


 その提案に琴美は既に乗り気のようで、ワクワクしている感じの表情をしている。


「確かに面白そうだとは思うけど、明日香、琴美が相手だってのを忘れてないか?」


 琴美は昔から料理をしていたから、その腕は俺たちよりも遥かに優れている。はっきり言って、料理歴1年も経っていない俺たちにかなすべはないと思う。


「そ、それは…………」


 重要な部分を失念していたのか、明日香はあからさまに焦りを見せ始めた。


「それじゃあ明日香ちゃんと涼くんがコンビを組んで、私と対決っていう風にしたらどうかな?」


 戸惑いを見せた明日香に対し、琴美が名案だと言わんばかりにそう言ってきた。

 確かに料理初級者の俺と明日香が組むのは方法として悪くはない。個別にアイディアをるよりは、琴美に勝利できる確立が上がるだろうからな。


「お、お兄ちゃん、どう?」


 琴美がこのような提案を持ち出したのは、自分の勝利を信じて疑っていないということ。それはつまり、自信の表れのようなものだと思う。

 本来ならどうしようもなく埋められない差が俺たちと琴美にはある。だからそれが分かっている以上、この勝負を受けるのは無謀としか言いようがない。

 しかしこういった相手を負かして勝利を得るというのは、誰もが憧れることではないだろうか。


「いいぜ、その勝負受けようじゃないか! 明日香、琴美に勝つぞ!」

「う、うん!」

「気合十分だね、私も負けないから!」


 こうして琴美VS桐生きりゅう兄妹の料理対決が繰り広げられることになった。

 家に帰ってからそれぞれに工夫をらしたハンバーグを作りはしたが、この料理対決の結果は見事にやられました――とだけ言っておこう。


× × × ×


「長居してごめんね」

「ううん、今日はありがとう。琴美」


 食事を終えて片づけも終わったあと、明日香がお風呂へと入ったところで琴美が自宅へ帰ることになった。


「こちらこそありがとう、私も楽しかった」

「そっか、良かったよ」

「じゃあ、私は帰るね」

「あっ!? 琴美、ちょっとだけ待っててくれないか?」

「えっ?」


 そう言って琴美が玄関を出ようとした時、俺は大事なことを思い出して帰ろうとしていた琴美を呼び止めてから自分の部屋へと戻った。

 自室へと戻った俺は机の引き出しから一つの綺麗な包装をされた縦長の箱を取り出し、それを持って玄関に居る琴美のところへと急いで戻る。


「――待たせちゃってごめんな」

「ううん。別に大丈夫だけど、どうしたの? そんなに慌てて」

「これを琴美に渡したくてさ」


 そう言って先ほど机の引き出しから取り出した縦長の箱を差し出す。


「これは?」


 琴美はそう言いながら、俺が差し出した物を両手で優しく受け取った。


「これはその……俺から琴美へのクリスマスプレゼントだよ」

「えっ? 私に?」

「ああ、琴美に渡そうと思って用意しておいたんだ」

「ありがとう、開けてもいいかな?」

「あ、ああ、どうぞ」


 琴美は少し震える手で包装紙を丁寧に開き、その中にあったアクセサリー用の箱を開いて中身を取り出した。


「わあー、きれーい!」


 琴美が箱から取り出したのは、三日月型のネックレス。

 その三日月の中には、キラキラと光るイエローのビーズがたくさん埋め込まれている。


「気に入ってくれた?」

「うん、とっても嬉しい。ありがとう涼くん」


 天体や星が好きな琴美にはピッタリだと思って買ったんだが、喜んでくれたみたいでほっとした。

 琴美は嬉しそうに取り出したネックレスを身につけ、再びお礼を言いながら自宅へと戻って行った。

 それから1時間ほどでお風呂から上がって来た明日香にも、同じように用意していた専用のプレゼントを手渡した。内容は琴美と同じくネックレスだが、もちろんデザインは明日香好みの物にしてある。

 プレゼントを受け取った明日香は非常に喜び、そのネックレスを身につけてからしばらくの間、鏡に自分の姿を映しては嬉しそうに近くに居た小雪に『どう? 似合うかな?』などと話しかけていた。

 そんな微笑ましい様子の妹を見ながら、楽しいクリスマスの夜は過ぎて行った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ