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始まりの質問。

 突然だがみんなに質問がある。みんなにとって、妹とはどういった存在だろうか。

 可愛い存在? 鬱陶しい存在? それとも、それ以外の何か? えっ? お前はどうなんだって? そりゃあ、妹ってのは可愛いもんだろう!

 ちょっとアホな感じの天然妹、普段はしっかりしてるけど、たまにドジをやらかすドジっ子妹、いつも明るく活動的な元気妹、定番のツンデレ妹と、例をあげれば切が無いじゃないか。まあ、全ては二次元限定の話だけどな。

 それじゃあ、三次元の妹はどうなのかって? 悪いけど、それについてはあまり語りたくない。

 だって、妹が居る友達に話を聞いても、ネットの掲示板を見ていても、現実に妹が居る奴の話にはろくなものが無いから、見てたら頭痛がしてくるくらいなんだ。

 だいたい俺には妹なんて居ないから、リアル妹についてコメントなどできない。

 もしも俺に妹が居たなら、いくらでも妹についてコメントできるんだけどな。

 あー、残念だ。みんなにコメントができなくて実に残念だ。俺に妹が居たらなあ。


『君は妹を可愛がってくれる?』

「はっ?」


 四月に入ってから二回目の土曜日。時刻は23時を過ぎたところ。

 部屋にあるパソコンで妹系ギャルゲーを満喫しながら、脳内友達とくだらない問答を繰り広げていた俺の耳に、突如として妙な声が聞こえてきた。

 慌てて部屋の中を見渡すけど、当然、ここに俺以外の誰かが居るはずもなく、気のせいかと思いながら首を傾げて再びパソコン画面へと視線を戻す。


「あれっ? どうした?」


 さっきまで遊んでいたゲーム画面がフリーズしていて、何をしてもまったく反応しなくなっていた。


「何だよ、いきなり壊れたのか?」


 仕方なく強制シャットダウンを試みるが、なぜかそれにも反応が無い。

 どうしたものかとしばらく色々いじっていると、突然画面が真っ白になり、その画面中央にピンク色の可愛らしいフォントで『以下の質問に答えて下さい』と文字が浮かび上がった。

 突然何だろうと思いつつも、とりあえずマウスを使って画面表示をスクロールさせる。するとそこには、いくつかの質問が書かれていた。


 ――ゲームの演出か?


 突然起こった出来事に違和感を覚えながらも、とりあえず表示されている項目を順に見る事にした。


「えーっと、『あなたは妹が好きですか?』か。まあ、実際に妹は居ないけど好きだな。次は、『あなたは妹を大事にできますか?』か。そりゃあ、妹が居るんだったら大事にするだろうな」


 画面を見ながらブツブツと声を出し、何のこっちゃと思いながらも、質問のはい・いいえの部分にマウスでチェックを入れていく。


「えーっと、何々? 『妹を大事にできない人間は、地獄に落ちてもいいと思う?』か。まあ、妹とかに限らず、そういう人間は地獄に行けばいいと思うな」


 とりあえず質問に答えてはいるものの、その意図がさっぱり分からず、俺は質問を読む度に首を傾げていた。

 この質問から分かる事を言うとすれば、妹についての考え方や思いなどを探ろうとしている――と言ったところだろうか。


「おっ、次が最後か。えーっと、『あなたは妹が欲しいですか?』か。うーん…………」


 その質問を前に、握っていたマウスから手を離して腕を組んだ。

 そりゃあ、数々の妹系ギャルゲーをしてきた俺にとって、妹が居る生活に憧れはあった。妹が居たらいいなと思った事はもちろん何度もある。

 しかし、理想と現実は違う。それは二次元と三次元の妹が決定的に違うからだ。

 そんな理性的な事を考えつつも、俺は悩んだ末に自分の気持ちに従って素直に答えた。


「俺は妹が欲しい!」


 誰が聞いているわけでもないのに、そう言いながら質問のはいにチェックを入れる。


『その願い、確かに聞き届けました』

「えっ!?」


 先程の妙な声が再び聞こえたかと思うと、目の前にあるパソコンが目も眩む様な光りを放ち始めた。


『彼女の事、大切にしてあげてね』


 そんな眩しい光に包まれる中、俺はどこの誰とも分からない誰かに、優しく願う様にそう言われた――。




「んんっ……」


 気が付くと机の上で突っ伏して寝ていたらしく、体中がとても痛かった。

 そんな状態から上半身を起こして何気なく窓の方へ視線をやると、カーテンの隙間からは明るい太陽の光が射し込んでいた。


「あれっ?」


 目の前にあるパソコン画面は、昨日フリーズする前の状態だった。どうやらゲームをしながら眠ってしまい、変な夢を見たらしい。


「うにゃっ!」


 寝ぼけまなこを擦りながらマウスへと手を伸ばしたその時、突然背後からゴンッという鈍い音が聞こえ、その後に女の子の声が聞こえてきた。

 ビックリして声がした方を振り向くと、そこにはフローリングの床に座り込み、痛そうに頭を押さえている女の子の姿があった。


「い、たっ……」

「だ、誰!?」

「あっ、ご、ごめん、なさい……こ、これから、よろ、しく、おねがい、します。お、おにい、ちゃん」


 小学校の高学年くらいに見える女の子は頭を押さえたまま正座をし、小声でたどたどしいながらも丁寧に挨拶をしてきた。

 ライトブラウンの綺麗なショートカットに、大きな瞳のとても可愛らしい女の子は、大人が着るような大きな白のTシャツを着て正座をしたまま、身体を縮こまらせてこちらを見ている。

 相手の事もさることながら、俺はこの唐突な出来事に頭がついていかず、状況をさっぱり飲み込めないでいた。

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