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不思議な神社

作者: 東雲枯葉

 昔から不思議に思っていた神社がある。

 神社の敷地がフェンスで囲まれ、その入り口は常に鍵によって施錠されている稲荷神社だ。

 つまり、誰もその神社にお参りすることができない。フェンスが仰々しいため、中を覗き込むのも一苦労だが、その境内は常に掃き清められ、ゴミひとつ見当たらない。誰も入らないから、ゴミの入りようもないのだろうが、それでもその綺麗さは一種の異様さすら感じられる。


 とはいっても、本当に幼いころからその神社は存在していたものだから、不思議と思いつつも日常の一部であり、毎年春になると、フェンスに囲まれた境内に立ち並ぶ桜が咲き誇るさまを眺めていた、というわけだ。


 恐らくはどこぞかの企業の私有地に祀られている神社なのだろう。よくあるではないか、ビルの屋上にお社が建っている光景などが。それと同じようなものではないだろうか。単に土地があったから、ビルの屋上に建てずに地面の上に建てた、というわけで。

 調べてもその神社の情報が全く入手できなかったこともあり、私はとりあえずは、そんな推測を密かに立ててみたのである。


 そして、今年も春がやってきた。

 なかなか気候が安定しなかったせいか、桜の開花は例年よりも遅れていたが、徐々に咲き始め今年も景色を鮮やかに彩る。


 某稲荷神社も例外ではなく、道行く人々の目を楽しませるかのように、桜が満開になっていた。

 私も、それらを楽しみに外出をし……そして、その光景を目にした。



 桜が綺麗に咲き誇っている稲荷神社の境内に、たくさんの背広姿の人間がいるではないか。

 地面の上に直接パイプ椅子を並べ、かしこまって座っている。結構の人数だ。フェンスに覆われ、入り口がしっかりと施錠されているのはいつものことなので、様子をうかがうのは一苦労だが、どうやら何らかのお祭り……もしくはお祓いか、とにかく何らかの儀式を行っているようである。

 特に何らかの祝詞や何かが聴こえるわけではないが、そうとしか考えられない様子だ。



 やはり、そうか。この稲荷神社はどこぞかの企業の持ち物なのだ。でなければ、境内があのように背広姿の人々であふれかえるわけがない。

 自分の推測が当たったことに至極満足した私は、その場を後にして……そして、かなり後になってふと思い返した。




 入口の鍵はいつも通り施錠されていた。

 そう、いつも通り……外から。

 では、あの境内に溢れていた背広姿の人々は、いったいどのようにして中から鍵を閉めたのか? それとも、どのようにして中に入ったのか?


 ……不思議と思いつつも、やっぱりその神社はいつものように日常に溶け込んで存在している。


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