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羊の三題噺。

【三題噺】誰かが言った。

作者: シュレディンガーの羊
掲載日:2011/08/08


似ている。

と言われたことがある。

誰に言われたかは、もう覚えていないけれど。




「火野ー」

「うるさい。黙れ。そのまま窒息しろ」


補習のプリントから顔を上げずに、火野がいつもの毒舌で言い放つ。

今は放課後。

小テストをサボった火野と、小テストに不合格だった俺の補習中。


「てか、火野もこりないよねー」


火野は不良だ。

授業はサボるわ、喧嘩はするわ。

校則違反なんて数え出したらキリがない。

小テストをサボるのも、こうして俺と補習をするのも、もうお約束。

そのくせ頭はいいから嫌になる。


「お前もよくこりないな。今回も不合格はお前だけだろ」

「あと5点足りなかっただけだって」

「10点満点、7点合格のテストに何言ってやがる。馬鹿か、お前」


そんなやり取りの間でさえ、火野は手を休めずにプリントを解答で埋めていく。

その癖のあるかくばった字に目を落として、知らず知らずに呟く。


「なぁ、俺らって似てる?」

「はぁ?」


不意な発言に驚いたのか、火野が手を止め顔を上げる。

茶色の瞳に戸惑いが浮かぶ。


「いきなり何だよ」

「誰かに言われた気するんだよね」


へらりと笑って見せれば、火野は目を細めた。

思わず息を呑むような、冷めた色が過ぎる。

でも、それは一瞬で火野はまたプリントに目を戻す。


「俺は不良でお前はクラスの中心人物だろ。全然、似てねぇよ」

「ま、そだね。俺は馬鹿で火野は頭よいし」

「まったく誰だよ。似てるって言った奴。こんな奴と似てるとか勘弁してほしい」


火野がらしくない笑い方で言う。

自嘲にも嘲笑にもとれるそれに、何故か淋しさが見えた気がして。

気づけば手を伸ばしていた。


「何だよ?」


怪訝な表情をされてはっとする。

そのまま手を引っ込めることもできず、火野の頬を引っ張ってみる。


「痛っ。何すんのだ、てめぇ」

「水谷」

「は?」

「俺、水谷だから」


お前じゃないから――――そう手を離す。

火野は何かを言いかけて止め、代わりに大きく息を吐いた。

その反応に満足して、俺はプリントを火野の目の前に掲げる。


「ね、火野。帰りにアイス奢るから、俺のプリントの白紙どうにかして」

「……馬鹿以外の何者でもねぇな」


水谷は――――呆れたような声音に、俺がけらけら笑って、火野もつられて少しだけ口元を緩めた。




その後、コンビニにて。


「ほら、火野ー。この3つから好きなの選んでいいよ」

「全然、ガリガリ君じゃねぇか」

「だって、安……うまいから」

「そうか。安いからか」

「俺、ソーダにしよ」

「いや、俺ソーダにするから、お前は別のにしろよ」

「えー。やだ」

「あのさ。お前、誰がプリントやったと思ってんの?」


結局、二人してソーダにした。


「こーゆうとこ似てんのかな?」

「なんか言ったか?」

「いや、べっつにー」


三題噺として書きました。

アイス、不良、馬鹿。

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