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幻影文庫  作者: ささがき
1/3

海に還る日☆

「お盆を過ぎたら海に入ってはいけないよ」

 昔から言われる言葉だ。

 とはいえ、お盆の帰省で訪れる田舎町では、娯楽も知り合いも、同世代の子供もいない。

 少年はいつも海のそばで遊んでいた。

 ある時波打ち際でしゃがんでいると、ふと影がさした。

 白い日傘を差した少女が立っていた。

 少女は言葉を話さなかった。

 話し相手が誰もいない少年はそれを気にせず、いろんなことを喋った。

 両親のこと、1人で預けられている田舎の遠い親戚の家のこと、昨日裏山で見つけた綺麗な昆虫のこと。


 次の年も、その次の年も、少女はいた。

 昨年と変わらない姿だった。

 少女の変わらない姿に疑問を持つほど世の中を知らない頃だった。


 少年は綺麗なシーグラスを見つけた。

 珍しい赤色の磨りガラス。

 真っ白なあの子に似合うと思って手渡した。

 少女は曖昧な表情で手の中のガラスを見つめていた。

 その年、少年は引っ越して田舎町を訪れなくなった。

 両親が離婚した。


 数年後、大きくなった少年は再び海を訪れていた。

 あの頃の自分と同じ年頃の弟と一緒に。

 父に引き取られた少年と入れ替わりに、弟は母方の故郷である海沿いの田舎町に引っ越していた。

 その年の夏、弟はお盆過ぎの波に流されたが、数時間後波打ち際で発見され一命を取り留めた。

 弟は手に、赤いシーグラスを握っていた。


 少年は赤いシーグラスに穴を開け、紐を通して弟に渡した。

 波打ち際に白い日傘の少女が立っている。

 弟より少し幼い姿だった。

 差し出されたシーグラスのペンダントを、嬉しそうにかけてもらう少女。

 夕暮れの日差しに、少女の姿が溶けていった。


 翌年以後、しばらく少女の姿は見えなくなった。

 少年は今年も海を訪れている。



* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *


あの子は海月

【ベニクラゲ】:成体がストレスや損傷によりポリプ期へ退行することがあり、「不老不死のクラゲ」として知られる。


挿絵(By みてみん)

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