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第4話「夜の王城と消えた処方箋」

王城の夜は、昼よりも長く、静かに恐怖を孕む。

私は夜の見回りに呼ばれた。小さな薬局の扉を開けると、すぐに異変に気づく。書棚の一角、処方箋が一枚、消えていたのだ。


「誰か……触れた形跡は?」

宮廷医官が慌てずに訊く。私はゆっくりと棚を見渡し、微細な痕跡を追った。


紙の端に残った指紋の微妙な濃淡、筆圧の乱れ、そして棚板のわずかな粉の付着……これは偶然ではない。意図的に持ち出された痕跡が、全てを物語っていた。

「この処方箋は、特定の薬材の配合を示しています。輸入薬の消失事件と関係があるかもしれません」

王子の表情が少し硬くなる。普段は冷静で無表情な彼だが、眉間に僅かな皺が寄った。


私は薬箱を開き、揃った小瓶と残留物を確認する。液の色の変化、結晶の形、微小な沈殿……この一連の変化は、誰かが薬の配合を妨害した可能性を示唆している。

「誰が手を加えたか……痕跡は複数。つまり、この事件は内部の協力者が絡んでいる」と私は分析した。


そのとき、城の奥から微かな足音が響く。振り返ると、薄暗い廊下に一人の影。

「紬……」王子の低い声。

「王子、どうしてこんな夜に?」

「君の手助けが必要だと思った」

その短い言葉に、胸の奥で何かが跳ねる。王子は私を信頼しているのだ。


処方箋の行方を追い、城内の倉庫を調べると、隠された小箱の中に見つけた。そこには輸入薬の微細な結晶が少しだけ残っていた。

「痕跡をたどれば、真相に近づける……」

私は心の中で呟く。薬は嘘をつかない。人の意図だけが、痕跡に刻まれるのだ。


夜風が窓を揺らし、月明かりが城壁に影を落とす。消えた処方箋と微細な結晶は、次の事件の布石となる――宮廷に潜む陰謀は、まだ序章に過ぎない。

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